殺しの美学

村上未来

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ペコ

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「…三年程前の写真です」

 影村の手の中にある二枚の写真は秀子が撮ったものだ。秀子はそれを記憶している。同じ日、順番に二人を撮影した。その時の情景が浮かんだ秀子は、どこか遠い目をした。

「…米山さんは、いつからこのお宅の家政婦をしているのですか?」

 影村が尋ねた。

「…えーと、奥さんがまだ生きている頃ですから、十年程前からです」

「水川さんの奥さんは、何年前に亡くなられたのですか?」

「…七年前です」

「よく覚えてますね?」

 影村は引っ掛かったようだ。

「七回忌を迎えたばかりですから」

 水川の妻に思い入れがあるのか、秀子の瞳が悲しみに包まれた。

「…そうですか…続きは署の方で聞かせて頂けますか?」

「…はい」

 秀子は身支度を済ませると、影村達と共にパトカーに乗り込んだ。

 昼食には少し遅いこの時間。美玲とペコはファミリーレストランにいた。全国チェーン展開をしている、誰もが知る店だ。

「私は昼食を食べたから、飲み物だけにしよう。ペコは何を食べるのだ?」

「…うーんとね…ペコはオムライスが食べたい!」

 キラキラした瞳でメニューを見ていたペコは、意気揚々と答えた。

「うむ、オムライスだな。ドリンクバーは頼むか?」

「うん。ペコ、喉もぺこぺこ」

 喉がからからと言いたかったのだろう。しかし、美玲はそれを汲み取れなかった。

「喉がぺこぺこ鳴るのか?変わった体内構造だな」

「ん?ペコ変わってるの?普通と違うの?」

 ペコの瞳は明るくなった。

「うむ、ペコは変わっているぞ」

「うふふ、ペコは変わってるんだ」

 ペコは口元に両手を可愛らしく当て、とても幸せそうな笑顔を浮かべた。
 記憶を失う前から、普通とは違う人間になりたい思いがあったのかもしれない。
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