殺しの美学

村上未来

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学び

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 それ程ワインを飲んではいないが、酔いが回ってきたようだ。パソコンの前から離れた伊織は、ベッドに寝そべった。その顔には笑顔が浮かんでいる。それは酔いのせいばかりではないだろう。伊織は期待に満ちたその瞳を閉じると、直ぐに静かな寝息を立てた。
 朝がきた。心地よく眠れた伊織は気分良く目覚めた。
 いつものように風呂に入り、部屋に戻ると、朝食の準備がされていた。
 食事を終えた伊織がソファーの上でまったりとしていると、部屋のドアがノックされた。
 いつもなら声を出さずとも、頃合いを見て真田がドアから顔を覗かせる。しかし、その真田は土の中だ。

「入れ」

 伊織のその指示に、ドアが開く気配はない。
 ソファーからドアまでは少し距離がある。声を張ればドアの向こうに聞こえただろう。
 伊織はゆっくりと立ち上がると、ドアへと向かった。ドアノブを掴んだ。人の為にドアを開けるのは久しぶりだ。伊織はドアを開けた。
 ドアの前には黒いスーツを着た、黒髪の若い女が立っていた。初めて見る顔だ。

「何の用だ?」

 普段の伊織なら、眉間に皺を寄せていただろう。しかし、今は機嫌が良い。伊織は睨む事無く、ドアの前に立つ女に尋ねた。

「わたくし、瀬野花蓮と申します。今日から伊織様の身の回りのお世話をさせていただきます。よろしくお願いいたします」

 花蓮は幼さの残る笑顔を残し、深々と頭を下げた。

「何か用事がある時は携帯に連絡するから、番号を教えてくれ」

「はい、こちらになります。伊織様の番号は既に聞いております。今は何かございますか?」

 予め用意していたようだ。花蓮は自分の番号を書いた紙を伊織に差し出し、にこりと微笑んだ。

「今は特に無い。下がってくれ」

「かしこまりました。失礼いたします」

 花蓮の深々と下げられた頭を瞳に写したまま、伊織はドアを閉めた。
 ふかふかの絨毯の上を歩き、伊織はパソコンの前に辿り着いた。笑顔を浮かべたまま椅子に腰掛けると、慣れた手付きでキーボードを弾いていく。モニター画面には、見慣れたエンプティルームのロゴが踊っている。
 日課と化した愚民の戯言を眺め、時には神からの助言を与える。そんな事をしていると、時刻は午後の二時を回った。
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