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神になりたい男
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長い廊下だ。壁には様々な絵画が飾られている。モネ、ゴッホ、シャガールといった名画家達の絵を前に、伊織は立ち止まる事なく、足取り軽やかに歩き続けている。その足が、とある部屋の前でぴたりと止まった。
ドアを開けた伊織は、その部屋に入った。
着ている物を全て脱ぎ捨てると、ガラス張りのドアを開け、奥へと進み、シャワーの蛇口を捻った。ここは風呂場である。
豪雨のように降りだす熱いお湯を頭から浴び、伊織は溜息を吐いた。そして湯気を身に纏いながら、真っ白なタイル張りの床を辿り、プールのような広い浴槽に身を沈めた。
この屋敷には、風呂場がいくつもある。先程までいた自室の隣にも、風呂場がある程だ。伊織はこの風呂場を好んで使っている。
三十畳程の広さに、真っ白なタイル。風呂場にしては広すぎる空間には、様々な彫刻が飾られている。普段なら十分程湯に浸かり、彫刻を眺めながら、寝起きの頭のモヤモヤを取り払うところだが、今日に限っては、目覚めた瞬間から脳が覚醒していた。
直ぐに浴槽から出た伊織は、風呂場を出ると、真っ白なガウンで身を包んだ。
ガウンのまま自分の部屋に戻ると、すでに朝食の用意がしてあった。
一人で使うには大きなダイイングテーブルの前に座ると、いつものように冷たい牛乳を飲み干した。
ナイフとフォークを使い、半熟に焼けたベーコンエッグを口に含んだ。それからパンを一口食べ、サラダを少し口にしただけで伊織は食事を終えた。
高校に入った頃から、伊織は家族と一緒に食卓を囲まず、こうやって自分の部屋で食事をしている。食事中の会話など望んでいないのだ。
食事を終えた伊織がソファーでまどろんでいると、部屋のドアがノックされた。
「…入れ」
聞き耳を立てても、この広い部屋の外には聞こえない程の声で伊織は答えた。
しかし、その返事を聞いていたかのようなタイミングで、ドアが開いた。
「…よろしいでしょうか?」
ドアを開けた真田は、部屋の前で笑みを浮かべたままじっと立っている。その様は、主人の合図を待ち続ける犬のようだ。
そんな主人思いとは対象的に、伊織は静かに頷いた。
部屋に足を踏み入れた真田は、会話ができる距離まで近付くと、穏やかな口調で問い掛けた。
「催眠術師を手配致しました…いつでもお越しになられますが、いかがいたしましょうか?」
「…直ぐに呼んでくれ」
伊織は視線を向ける事なく答えた。
ドアを開けた伊織は、その部屋に入った。
着ている物を全て脱ぎ捨てると、ガラス張りのドアを開け、奥へと進み、シャワーの蛇口を捻った。ここは風呂場である。
豪雨のように降りだす熱いお湯を頭から浴び、伊織は溜息を吐いた。そして湯気を身に纏いながら、真っ白なタイル張りの床を辿り、プールのような広い浴槽に身を沈めた。
この屋敷には、風呂場がいくつもある。先程までいた自室の隣にも、風呂場がある程だ。伊織はこの風呂場を好んで使っている。
三十畳程の広さに、真っ白なタイル。風呂場にしては広すぎる空間には、様々な彫刻が飾られている。普段なら十分程湯に浸かり、彫刻を眺めながら、寝起きの頭のモヤモヤを取り払うところだが、今日に限っては、目覚めた瞬間から脳が覚醒していた。
直ぐに浴槽から出た伊織は、風呂場を出ると、真っ白なガウンで身を包んだ。
ガウンのまま自分の部屋に戻ると、すでに朝食の用意がしてあった。
一人で使うには大きなダイイングテーブルの前に座ると、いつものように冷たい牛乳を飲み干した。
ナイフとフォークを使い、半熟に焼けたベーコンエッグを口に含んだ。それからパンを一口食べ、サラダを少し口にしただけで伊織は食事を終えた。
高校に入った頃から、伊織は家族と一緒に食卓を囲まず、こうやって自分の部屋で食事をしている。食事中の会話など望んでいないのだ。
食事を終えた伊織がソファーでまどろんでいると、部屋のドアがノックされた。
「…入れ」
聞き耳を立てても、この広い部屋の外には聞こえない程の声で伊織は答えた。
しかし、その返事を聞いていたかのようなタイミングで、ドアが開いた。
「…よろしいでしょうか?」
ドアを開けた真田は、部屋の前で笑みを浮かべたままじっと立っている。その様は、主人の合図を待ち続ける犬のようだ。
そんな主人思いとは対象的に、伊織は静かに頷いた。
部屋に足を踏み入れた真田は、会話ができる距離まで近付くと、穏やかな口調で問い掛けた。
「催眠術師を手配致しました…いつでもお越しになられますが、いかがいたしましょうか?」
「…直ぐに呼んでくれ」
伊織は視線を向ける事なく答えた。
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