殺しの美学

捜査

10

　小鳥のさえずりが泣き止んだ午前八時。ベッドから起き出した美玲と茜はリビングに居た。

「美玲、あいつの言う事は何一つ信じちゃだめだからね」

　茜は対面に座る美玲に優しく微笑み掛けている。

「うむ、平山竜二は詐欺師だったな。学習済みだ」

　美玲はこくんと何度も頷いた。

「そう、あいつは詐欺師。美玲は私だけを信じてればいいんだからね」

「うむ、学習済みだ」

「じゃあ、行こうか」

　茜はそう言うと立ち上がった。
　身支度を済ませた二人はマンションを出た。

「…尾行はないみたいだね」

　歩いて駅へと向かう道。度々振り返る茜はそう言うと、笑顔を浮かべた。

「尾行？誰が尾行するのだ？」

　美玲は訳が分からず尋ねた。

「警察だよ。でも尾行されてないから、一安心だね」

「警察が尾行するのか。しかし、今は尾行されていないから一安心。うむ、理解できた」

　美玲は何度も頷いた。
　それから数分歩いた二人は、駅に着いた。

「美玲、スマホの電源切っといて」

　辺りを警戒しながら電車に乗り込んだ茜は座席に座ると、隣に座った美玲の耳元で囁いた。

「何故、スマホの電源を切るのだ？」

　美玲は茜を真似て、耳元で囁いた。

「スマホにはGPSが付いてるから居場所がばれちゃうんだよ。警察が調べたら大変だから、念の為だよ」

「なる程、榊原茜は頭が良いな。うむ、理解した」

　美玲は頷くと、鞄からスマホを取り出し電源を切った。
　客を乗せた電車は、線路の上を走り続ける。そして間もなくすると、二人は電車を降りた。

「…ここから結構歩くけど、大丈夫？」

　駅を出た茜は、横を歩く美玲に視線を向けた。