殺しの美学

村上未来

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報い

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「…ヤクザが堅気に手を出したら終わりだな…しかし、若頭の命令だ…上の命令は絶対だ」

 御堂は心の中で葛藤する自分に言い聞かせるように呟いた。

「…間もなく着きます。準備をお願いします」

 柳田は目的地の案内看板を視野に捉えると、ハンドルを握りながら、器用に黒い覆面を被った。
 それに続いて、竜二以外の者達も覆面を被った。
 看板に従い、柳田はウィンカーを出し右に曲がった。間もなくして、温泉施設の敷地内に車を乗り上げた。
 夜の十時を過ぎているせいか、広い駐車場には十数台の車しか停まっておらず、閑散としている。いや、時間は関係なく、元から流行っていない施設なのかもしれない。
 フルスモークが施された白いバンは、建物から離れた駐車場の端まで来ると、静かに停止した。
 近くには黒い国産車が一台停まっている。白いバン同様、こちらもフロントガラスまでスモークフィルムが貼られている。

「…降りろ」

 黒川は、怯えきる竜二の縛られた腕を掴むとドアを開けた。

「…は、ははい」

 額に大粒の汗を掻く竜二は、ゆっくりとした動作で動き出した。その背中には、固い物が当てられている感触が伝わっている。御堂の握る銃だ。
 後部座席の三人が降りたのを見届けた夢山は車を降りた。
 最後に車を降りた柳田は、近くに停められている黒の国産車に駆けて行った。
 黒の国産車の後部の前で足を止めた柳田は、ズボンのポケットから鍵を取り出し、トランクを開けた。
 黒川に腕を掴まれた竜二は、御堂に銃の先端を背中に当てられたまま、その開かれたトランクの前まで連れて来られた。
 夢山は辺りを警戒している。
 幾つものライトが照らしてはいるが、駐車場は薄暗い。その薄暗い駐車場には、夢山達以外の姿はなかった。
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