王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第十七話 さらば八聖天魔軍

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「はっ、やっ、へぇっ、ほっ」

「──」

ラフォーレティーナは、打撃を受ける、受ける、受ける。
躱しながらも、全ては躱しきれず多少殴打を食らう。

そして、八聖天魔の内一人が、右手に白い光を帯びた、光球を出した。

そして、それをラフォーレティーナの腹部に、直接当てる。

「おおっ!?」

白い光球は爆発して、天に昇るような白い光の塔が立った。

「ッッ~!」

ラフォーレティーナは、上半身の服が無くなる。そこから露わになる上半身は、煙を上げてビリビリと震えていた。

「んの野郎…」

ラフォーレティーナは反撃しようと試みるが──


「そうはさせん」

「ふっ」

二人の天魔が目の前を塞ぐ。

「──あぁっ、鬱陶しいなぁ!」

ラフォーレティーナは、この時、森羅万象把握全てを知るを使おうと思ったが──


「──え?」

発動、しない。不発。

「──なん…」

「──右だぁ!」

「──ッ」

その隙に、ラフォーレティーナの右側から、猛突進してくる八聖天魔。

そして、ラフォーレティーナの体を吹き飛ばす。

「…何で…」

その程度の攻撃では大してダメージは通らないので、何でもないといった感じのラフォーレティーナだが、驚きは隠せない。

ラフォーレティーナは知らない。森羅万象把握全てを知るの制限を。

森羅万象把握はもともと神域者クラスのスキルである。故に、再利用までの時間が、いくらラフォーレティーナでも最低一時間程度かかってしまう。

スキルの発動時間は、術者の力量に左右される事が多い。

例えば、絶対気絶アブソリュートスタンはラフォーレティーナの場合再利用までの時間が数秒だが、田原の場合は数分かかる。もっと言えば、リリーやキティの場合、一週間や、一ヶ月はざらだろう。

ラフォーレティーナは、その原理をあまり理解していなかった。

この世界に魔物が蔓延ってから、大して研究を行ってきていない証拠。怠惰の証が、ここで表れた。

だが、ラフォーレティーナ、屈せず。

「────良いぜ」


だが、それでも圧倒的なレベルの差がある。

ラフォーレティーナは、多数対少数の構図はあまり好きでは無い。

だが。まぁ。

──それで、勝てないわけではないが。


ラフォーレティーナは、躱した。

上空から降ってきた、暗黒の光球を。

まるで、全て見てきたかのように。

ラフォーレティーナは、目の前に立ちはだかる八聖天魔をして、少し、思い出に浸っていた。


──────何のために戦うのか?








そうだ、いつのころだったか。

俺が、逃げ出すようになったのは。

他人を、守れなくなったのは。



───そんなんじゃ、ねぇだろ。


───力あるものが、その分力を振るうのは、至極当然。




妹、ラック…

昔は優しかった両親…

彼女らしいことは全くしてないキティ…

親友の田原…

俺らの仲間であり田原の彼女のリリー…

──みんなの、為だよ!!



この、世界のな…!




「ッッ!?何だ?」

八聖天魔は、驚く。

爆風が、八聖天魔を襲った。

闘化ファイティング

闘化という能力は、一時的にラフォーレティーナの戦闘能力を大幅に上昇させる。


ばっ、とラフォーレティーナは八聖天魔の懐に入った。

「─────ぇ?」

八聖天魔は、その超高速に対応しきれず──

ラフォーレティーナは、八聖天魔を殴り抜いた。

その威力は、先のラフォーレティーナとは桁違いであり、爆風と共に八聖天魔はなんと──上半身から上が、無くなっていた。


「───連携するぞッッ!」

「おお!」


八聖天魔は流石に焦りを隠せず、動き出す。

が、今のラフォーレティーナにとってみれば遅い。恐ろしく遅い。

「─────ま」

待って、と言いたかったのか。

ラフォーレティーナが近づき、その顔面ごと蹴りとばす直前、そう聞こえた気がした。


「…こ、降参だ…」

「…?何を言っている…」

「負けだっ、負け負け…」

「…だから、何だ?」

『威圧Lv10』

それは、ラフォーレティーナの持つスキルの中でも、異例なものだった。

「ひぃぃっ!?」

八聖天魔は、怯える。


「もう、悪さしません!そっちの見方になってもいい…だからお願いだ…殺さないで…」

「…本当に…か?」

「は、はいっ!何でもしますからッッ」

「…そうか、じゃあ、とりあえず気絶してくれ」

「え?」

遠隔型絶対気絶リモートアブソリュートスタン

ラフォーレティーナが手をかざすと、八聖天魔は気絶した。

「よし、これで良し」

そして、八聖天魔をラフォーレティーナの創り出したラフォーレティーナの知りうる中で最高硬度の縄でぐるぐる巻きにする。


「…まぁ、田原は大丈夫か…」





八聖天魔軍の構成は、以下のようである。

魔術師1
全体特化4

という構成であった。


田原の場合、その内の一人、魔術師に当たってしまった。
近接特化に魔術師とは、闘いづらいものがある。

だから、田原は今、不利だった。


「ゴハッ」

赤き炎の球が体にぶつかり、爆ぜる。

そして、田原の体からじゅぅううと肉の焼けるような音がした。

八聖天魔…の、魔術師。

様々な属性を司る。

基本、属性とは一人につき一種類だ。

ラフォーレティーナや田原だって、厳密には持っている属性は一つしか無い。

しかし、この魔術師の場合、今の今までだけでも六属性は持っていると分かった。


氷、炎、水、雷、無、強化。

である。

強化バフ弱体化デバフも一つの属性として数える。

雹雨天災

「っ…」

空から、巨大な氷の雨が降り注ぐ。

田原は、全て躱すことが出来ず、多少なりとも受けるのだが。

「うっ…」

そのダメージは尋常では無い。

基本、自分の持つ属性以外はそこまでダメージが追加される訳では無いのだが、こいつの場合、ほぼ全てに属性補正がかかる。

「──」

田原は、時間を、稼がねば…と考える。

このままいくと、体力をいたずらに消費していき、敗北する未来が軽く見える。

だから、自然治癒の時間を稼がないと。

「一つ!聞かせてくれ」

上空に浮かんでいる天魔に、田原は問うた。

「天魔って、何だ?」

「天魔…天魔は、天使と悪魔が合わさった姿だよ…」

「そうか」

もう少し話が弾むと思ったんだが。

と、田原。

「うーん、そろそろ飽きてきたな」

魔術師天魔は、そう言った。

「な、何を」

弱体化デバフ防御力低下リデュースディフェンス

「うおっ?」

田原は、謎の感覚に包まれる。
とにかく、嫌な感じだ。


「では、最後は私の持つ最高の技で決めてやろう…ハァァァァッァアアア!!」

「!」

魔術師天魔は、その両手に、様々な属性の光球を集める。

青、白、赤、黄色、etc…

最終的には、黒と白の二色となり、それが、ぐぐっ、ぐぐっと大きくなっていく。

いつしかそれは、空を覆うほどの大きさとなっていた。


「──『太陽の恩寵黒と白の絶望』」

それは、放たれ、田原に迫っていき。



「───戦闘化コンバット

「…」

田原の両腕が、黒く染まっていく。


そして、迫ってきた黒白の巨大光球を──



「んんっ、ゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


全力で受け止め──


「馬鹿め!受け止められる訳が!」


その時、天魔は異変に気付く。


光球が、大きくなっていると。


否、近づいてきてる。




「なっ」


「てめーもろとも吹っ飛べ」

そして、黒白の光球は──


────バァァァアァァァァアン、と爆ぜた。





「──ら、おい」

「…」

キィィィンと、耳鳴りがした。



「ら、おい田原…」

「んぁ…」

「やっと目が覚めたか…最上位治癒トップヒーリングを使ったかいがあったぜ」

「…あれ、ここは?」

「さっきの爆心地?かな…」

辺りを見渡すと、大きなクレーターの、中心であることが分かった。

「…さっきの、か…で、あいつは?」

「天魔か?やられてたぜ」

「そうか…」

俺は、やったのか。

達成感…

「まぁ、悦に浸るのは良いんだけどさ…」

「何だ?」

「服は着ろよ…」

俺は、全裸だった。

「あら、恥ずかしいっ」

後で服を貰った。




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