王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第十四話 六世少女軍

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エステル大陸に入って、何日かした。

車は途轍もない便利さを誇り、みんな大喜びだ。
尻はいたくならないし、(今までが悪すぎた…何か敷いても痛かった)動きやすい。
多少ガタガタなるが、そこまで酷くない。
強いて言うところも、特にない。
運転手が少し疲れるというところくらいか。

俺達はそんなエステル大陸によりつつ、とある情報を集めていった。

それは、とある男の話と、魔王の居場所の話である。

この二つは関連性があると思われるみたいだが。

そもそも、エステルを目指した理由は特にない。

当てのない旅路だったので、適当に来てみれば、驚いたことにだいぶピンポイントで当てているではないか。

それに、エステルに行くことを決めたときに誰も反対はしなかったから、来やすかった。

町の人に聞けば、大抵の住人は知っているようだ。

巷では勇者なんて呼ばれているらしい。

まぁ、そいつが人を救い続けたからだろう。

大抵、勇者の逸話は救出劇が多い。

そして、その勇者は魔王の居場所も知っているらしい。

なので、勇者の存在を確かめる&魔王の居場所を突き止めるため、俺はエステルへ来たところなのだ。

史上最大の大陸と言われているように、エステルは非常に栄えている。

どこもかしこも商売、商売、商売。そんなものが、そこら中に転がっている。

「…おーい、リリー、キティ、早く行くぞ」

「「ええーっ、もう少しみしてよー」」

「駄目、行くぞ」

全く子供のようなやつもいるが。

移動は基本車だが、町の狭いところや、繁華街は基本歩きで通っている。

その間、車は俺のスキル『空間収納』によって入っているが、超疲れるのであまりいれたくない。

──が、そんな俺達の旅もそろそろ終わりが近づいてきたようだ。


「ギガ…ですか?」

「あぁ、勇者はエステル大陸最大の国家、ギガにいるって話さ…本当かどうかは知らんがのう」

「…ありがとうございます」

──俺達は、エステル大陸最大の国家、ギガに向かうことになった。


──エステル大陸には、転移装置もまぁまぁあるので、そこまで移動が不便という訳では無い。

超長距離移動も覚悟していたが、大抵百から千キロ離れていると転移装置はあるものだ。

なので、車はそこまで出番が無かったりする。

俺達の故郷であるトゥラティン大陸は、文明の発達が著しかったので、こういうのをみると、少し羨ましく思う。


そんなこんなで、俺達はエステル大陸最大の国家、ギガを目指し、車で移動し始めた。

次の転移装置があるのは、ロクスケという町だ。

平野を車は走る。

ブゥゥゥゥゥン

「はぁ、暇だな」

「そうねー」

「何か…」


何か面白いこと、無いかなぁ。









その時だった。甲高い女の子の声が聞こえたのは。


「は?」


「キャハッ!」


ダンッ!


ダンッダンッダンッダンッ!


空から、降ってくる。

五つの、少女が。

「お、おま」

なんと、少女は破壊していた。

車を、粉々に。

上から降ってきて、車の上に乗ったからそれはそうなのだが。

「っ、とりあえずキティとリリーは避難しろ」

「分かったわ」

「分かりましたわ」

二人は緊急事態だと理解して、車から下りて走り出す。

「行かせねーですよ」

一人の少女が、赤い球を手のひらから生み出す。

「あぁ」

これは、ヤバイぞ。


「田原っ!!」

リリーとキティに最も近い田原にお願いをする。

田原も気づく。

「おう!」

その赤い球を、少女はキティとリリーに向かって投げた。

そして、それは加速していき──



「ッォオオォオオオ!!?」

田原に当たると、ぐぐぐと田原の体にめり込みながら田原はどんどんと動いていく。

後へ、後へ、ズズズと足が引きずられるように。

後退していく。

「ッォアァァァア!!?」

田原の筋力をもってして、やっと弾かれる赤の球は、ヒュンと奇怪な軌道を描き、俺の方へ向かってきた。

「む」

俺にぶつかった瞬間、音はしなかった。

ただ、赤い球が破裂し、爆発的なエネルギーが俺を包んだ。


「…ぷはっ、痛いわ…」

「えぇーっ!?今のに耐えるですか?」

「まぁ、堪えるのは得意なんでな…」

「ふふ、やはり貴方で間違いは無かったようですね…我々は六世少女軍…貴方は?」

「俺はラフォーレティーナ」

「俺は田原総一」

「そうですか、では皆さん──」


どうやら、二人は避難したらしい。


「──開戦と行きましょうか!」



六世少女軍は、それを見つけた。

部下にエステル大陸で捜査を頼まれていたのだが、正直それよりも、六世少女軍の先輩に当たる、七星少年軍を壊滅させた輩を見つけたかった。

そして、見つけた。

空中からそこら中を見渡していた内の一人が、発見したと言った。

転移で集まり、それを確認する。

「──っ!!」

身震いした。

あれは、人間か…と。

「ふふ」

恐らく、間違いでは無い。

部下のアストレアが消えたのも、七星少年軍が壊滅したのも、こいつらのせいだと。

だから、仇を討とうではないか。


(少年軍様…)

『朝食は何が良い?作れるぜ』

『はは、お前達はやんちゃだなぁ』

『さぁ、準備して』

『みんな、最高だ~』


少年軍様っ!

少年軍様は、戻ってこない!


そんな怒りを抱えたまま、空から落ちていく。

ヒュゥウウと風が体を縫う。

────ダンッ!


さぁ、開戦だ。


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