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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
21:森にきた盗賊団-3
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「……初めての敵には、魔力凝視を行い相手の強さを鑑定しろとも……」
「そうだよな?」
忘れてた、今回だけ、忙しかったなどの言い訳は全て無意味だ。いついかなる時でも、ある程度の緊張感を持っていなければ敵に出会って即殺される可能性すらある。
普段から意識しなくても魔力布衣を出来る様になれば、警戒し続ける緊張感は薄くすることができ、敵と相対してもすぐに戦闘態勢になることが出来る。
この森は非常に平和な森ではあるが、このようにイレギュラーな対応も求められることがあるのだ。
「だが、すぐに我に返って魔力凝視を行ったのは及第点だ。そして、エリィから見たこいつらの感想は?」
「……あまり強くなさそうに……見えます」
「うむ、それも正解だ」
B級賞金首と聞いて、エリィは今までの知識だけに引っ張られ恐怖してしまった。だが、実際に対峙して見ても、世間で言われるほどの強さを感じていないらしい。
最近ずっと戦っていたホブゴブリンよりは強そうに見えるが、模擬戦をしているブルーに慣れたせいか、自分がいつも出している力なら負けそうにもないと思ったそうだ。
それは間違いないだろう。エリィは修行のおかげでだいぶ強くなった。もちろん俺の100分の1以下ではあるが、もう少ししたらブルーと戦わせてもいい線行くぐらいになる。
だからこそ、冷静に周りを観察し最適な行動を取ることが重要なのだ。
「はい、師匠。すみませんでした」
「大丈夫だ。まずは飯を食おう。ブルー、出てきていいぞ」
待ってましたとばかりにブルーがやってきた。エリィが作ったスープを飲みつつ、今回の反省点と次回の修正点をコンコンと話していく。
ブルーが蔓で縛られている盗賊団を珍しそうに眺めていたので、せっかくだからブルーの意見も聞いてみることにする。
「ブルー、こいつらをどう思う?」
「んー……前にきた勇者とかに比べたらだいぶ弱そうだね」
「そうか。それならあの一番強いやつとエリィならどっちが強いと思う?」
その問いにエリィがハッとしながらこっちを見てくる。ブルーも真剣にディグドとエリィを交互に見続け、目を瞑って考えるような顔をし始めた。
そんなブルーの行動に、生唾を飲みながら緊張した面持ちのエリィ。絶対強者よりも第三者の意見の方が気になるのか?
目を瞑っていたブルーが、ため息混じりで答えを吐き出した。
「師匠も人が悪いよ。この一番強いやつとエリィを比べるまでもない。余裕でエリィだよ!」
「……ほんと!?」
「うん。僕も言われて、なんかこいつに隠れた才能でもあるのかとマジマジと見てみたけど、どう考えても弱いでしょ。今のエリィならこいつが100人いても負けないよ?」
「!!!」
「ふふふ。だから言ったろ? 修行は裏切らない」
予想通りの答えに俺も満足だ。
夕飯も片付けも終え、今度は盗賊達を起こしてやる。彼らにはエリィのトラウマを払拭すると言う大役がまだ残っているからな。ブルーには申し訳ないが、またアジトで待機をお願いすると、湖に入って明日の夕飯を取ってくるとの事だ。
食料を取ってくれるなら任せておくとしよう。湖で運動も出来るし、いい暇つぶしにもなってくれそうだな。
縛ったまま意識を戻らせエリィの目の前に置くと、案の定ディグドは悪態を吐き始めた。いやー、悪口のバリエーションだけは豊富なんだなこいつは。
さっきまで及び腰だったエリィなら言いまかせると思ったのか、心無い暴言が飛び出し続けている。
「エリィ、自分より弱い虫に心を動かす必要はないんだ。相手の目を見ればわかるけど、あいつはエリィが怖くて怖くて仕方ないから暴言を吐いているんだよ」
「……」
「今までもそうだ。エリィの事を知らないから、わからないからみんな怖くて仕方なかったんだ。だから心無い言葉や暴力でエリィを遠ざけようとした。でも今は力がある。もう、相手の暴力や暴言にいちいち傷つけられる事もないんだ」
「……はい」
「それじゃ、殺そうか」
「…………えっ?」
驚くような顔をしているエリィに、俺はにっこりと微笑んだ。
「そうだよな?」
忘れてた、今回だけ、忙しかったなどの言い訳は全て無意味だ。いついかなる時でも、ある程度の緊張感を持っていなければ敵に出会って即殺される可能性すらある。
普段から意識しなくても魔力布衣を出来る様になれば、警戒し続ける緊張感は薄くすることができ、敵と相対してもすぐに戦闘態勢になることが出来る。
この森は非常に平和な森ではあるが、このようにイレギュラーな対応も求められることがあるのだ。
「だが、すぐに我に返って魔力凝視を行ったのは及第点だ。そして、エリィから見たこいつらの感想は?」
「……あまり強くなさそうに……見えます」
「うむ、それも正解だ」
B級賞金首と聞いて、エリィは今までの知識だけに引っ張られ恐怖してしまった。だが、実際に対峙して見ても、世間で言われるほどの強さを感じていないらしい。
最近ずっと戦っていたホブゴブリンよりは強そうに見えるが、模擬戦をしているブルーに慣れたせいか、自分がいつも出している力なら負けそうにもないと思ったそうだ。
それは間違いないだろう。エリィは修行のおかげでだいぶ強くなった。もちろん俺の100分の1以下ではあるが、もう少ししたらブルーと戦わせてもいい線行くぐらいになる。
だからこそ、冷静に周りを観察し最適な行動を取ることが重要なのだ。
「はい、師匠。すみませんでした」
「大丈夫だ。まずは飯を食おう。ブルー、出てきていいぞ」
待ってましたとばかりにブルーがやってきた。エリィが作ったスープを飲みつつ、今回の反省点と次回の修正点をコンコンと話していく。
ブルーが蔓で縛られている盗賊団を珍しそうに眺めていたので、せっかくだからブルーの意見も聞いてみることにする。
「ブルー、こいつらをどう思う?」
「んー……前にきた勇者とかに比べたらだいぶ弱そうだね」
「そうか。それならあの一番強いやつとエリィならどっちが強いと思う?」
その問いにエリィがハッとしながらこっちを見てくる。ブルーも真剣にディグドとエリィを交互に見続け、目を瞑って考えるような顔をし始めた。
そんなブルーの行動に、生唾を飲みながら緊張した面持ちのエリィ。絶対強者よりも第三者の意見の方が気になるのか?
目を瞑っていたブルーが、ため息混じりで答えを吐き出した。
「師匠も人が悪いよ。この一番強いやつとエリィを比べるまでもない。余裕でエリィだよ!」
「……ほんと!?」
「うん。僕も言われて、なんかこいつに隠れた才能でもあるのかとマジマジと見てみたけど、どう考えても弱いでしょ。今のエリィならこいつが100人いても負けないよ?」
「!!!」
「ふふふ。だから言ったろ? 修行は裏切らない」
予想通りの答えに俺も満足だ。
夕飯も片付けも終え、今度は盗賊達を起こしてやる。彼らにはエリィのトラウマを払拭すると言う大役がまだ残っているからな。ブルーには申し訳ないが、またアジトで待機をお願いすると、湖に入って明日の夕飯を取ってくるとの事だ。
食料を取ってくれるなら任せておくとしよう。湖で運動も出来るし、いい暇つぶしにもなってくれそうだな。
縛ったまま意識を戻らせエリィの目の前に置くと、案の定ディグドは悪態を吐き始めた。いやー、悪口のバリエーションだけは豊富なんだなこいつは。
さっきまで及び腰だったエリィなら言いまかせると思ったのか、心無い暴言が飛び出し続けている。
「エリィ、自分より弱い虫に心を動かす必要はないんだ。相手の目を見ればわかるけど、あいつはエリィが怖くて怖くて仕方ないから暴言を吐いているんだよ」
「……」
「今までもそうだ。エリィの事を知らないから、わからないからみんな怖くて仕方なかったんだ。だから心無い言葉や暴力でエリィを遠ざけようとした。でも今は力がある。もう、相手の暴力や暴言にいちいち傷つけられる事もないんだ」
「……はい」
「それじゃ、殺そうか」
「…………えっ?」
驚くような顔をしているエリィに、俺はにっこりと微笑んだ。
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