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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
17:魔素-3
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「師匠!」
「!? 何してるんだエリィ!」
ちょっと目を話した隙に、魔素をこれでもかと取り込んだウィンドボールが大きく膨らんで今にも弾けそうな状態になっていた。あんなに魔力と魔素を取り込んだ魔法が暴発すれば、術者本人も近くのアジトも無傷では済まないだろう。
俺はすぐに消滅させる魔法を放つ。
「レジスト!」
だが、取り込んだ魔素の量が大きすぎたのかレジストさせたのは魔法の一部だ。エリィは魔力を増幅させる際に魔素を体に取り込んで増幅させようと考えたのだろう。
その結果、身体は魔素を取り込み続け、魔力として変換されウィンドボールに注がれ続ける。レジストで消した分はすぐに補填されてしまった。
「くそっ!」
俺は魔導法鎧を発動させて、暴発しそうなウィンドボールとエリィの間に立つ。さらにウィンドボールとエリィの結び付きを切断するために結界魔法でウィンドボールを覆う。魔力の流れが立ち切れたエリィがその場に倒れ込んだが、まずはこっちを処理だ。
これだけ膨れたウィンドボールの暴走は俺の結界だけでも抑えきれないかもしれない。さらに俺ごとウィンドボールをアースウォールで囲み、上にだけ逃げ道を残す。
その間にもウィンドボールが膨らみ今にも弾け飛びそうな状態になっていく。あと一手だ、持ち堪えてくれよ。
俺はウィンドボールの下へ潜ると、魔導法鎧で強化した拳にさらに魔力を乗せて撃ち抜く。いつ破裂するかわからないなら、逆に魔力の出口を作ってやるのだ。
圧縮されていた風は出口から勢いよく噴き出すと、俺の魔導法鎧をも切り裂く力と噴射によって真っ直ぐ上へと登っていく。そして雲の中にめり込むと同時に弾け飛んだ。
その力は、弾け飛んだ所を中心に大きな縁を描きながら雲を消しとばし、見えなかった太陽が顔を出したぐらいだ。
「エリィ!」
「今ハイヒールをかけてます!」
ブルーが体を大きくしてエリィを囲うようにしながらハイヒールを唱えている。万が一あのウィンドボールが弾け飛んだ時に、身を挺して守るためだろう。こいつは食い意地だけじゃないことにちょっと見直した。
ハイヒールをかけられたエリィの表情が少し柔らかくなる。それでも体調が悪そうなのは変わらずで、間違いなく魔素中毒が原因だろう。俺はエリィのお腹に手を乗せ、溜まってる魔素を吸引しようと試みた。よく見ると、ウィンドボールに突っ込んだ腕には無数の切り傷がある。暴走とはいえ、俺の魔導法鎧を突き破るほどの威力を持っていたと言う事だ。
魔素は取り込みすぎると毒にもなる。むしろ先にこの状態を体験できてよかったのかもしれない。俺が観察してた魔素量と、自身で感じた魔素量の擦り合わせを行なって、今の魔力量でどこまで魔素を取り込めるかの線引きをしていくのがいいだろう。
無事に溜まった魔素を吸引し終えると、エリィは起き上がれるほどに回復した。
「うぅ……師匠……」
「……」
「ごめんなさい……」
「何にだ?」
「えっ? あの上手く出来なくて……あと迷惑もかけて……」
「なんだ、そんな事は大した事じゃない」
俺も最初に魔素の取り込みすぎに気を付けろとは言わなかった。むしろ、最初は魔素を使って魔法を発動させるだけだから、今回のように魔素を取り込んで変換させる方法までいくとは思っていなかったんだ。
だが、実際はそこまでの事をやってのけた。エリィは常々天才だと思っていたが、今回に限っては俺の方が頭から抜けていたのが悪い。
それに弟子のミスをカバーするのは師匠の務めだ。そんな事で迷惑をかけたと思う方が迷惑だ。今は世界に出るための準備期間なんだから、大いに失敗すればいい。
これからもまだまだ修行は続くからな。もう一度言うが、俺の魔導法鎧を突き破って怪我を追わせるほどの威力を持っていたんだ。取り込める魔素量も増えるだろうし、そのうち俺との模擬戦も出来るかもな。
そんな事をエリィの頭を撫でながら話してやると、最後にはゲロを吐きそうな顔をしていたが笑顔になったから問題はないだろう。
すぐにエリィを治療し、俺の腕も治療してくれたブルーにも感謝しなくてはな。ブルーも撫でてやると、嬉しそうな顔をして尻尾を振り回していた。……本当は犬かもしれないな。
その日はエリィの料理に一層気合が入っていた。明日からの修行ルーティンに魔素コントロールも追加するとして、4階層も慣れたらフォロー有りでボス部屋に行ってもいいかもな。
そんな思いを馳せながらゆっくり浸かる風呂は、最高に気持ちよかった。
「!? 何してるんだエリィ!」
ちょっと目を話した隙に、魔素をこれでもかと取り込んだウィンドボールが大きく膨らんで今にも弾けそうな状態になっていた。あんなに魔力と魔素を取り込んだ魔法が暴発すれば、術者本人も近くのアジトも無傷では済まないだろう。
俺はすぐに消滅させる魔法を放つ。
「レジスト!」
だが、取り込んだ魔素の量が大きすぎたのかレジストさせたのは魔法の一部だ。エリィは魔力を増幅させる際に魔素を体に取り込んで増幅させようと考えたのだろう。
その結果、身体は魔素を取り込み続け、魔力として変換されウィンドボールに注がれ続ける。レジストで消した分はすぐに補填されてしまった。
「くそっ!」
俺は魔導法鎧を発動させて、暴発しそうなウィンドボールとエリィの間に立つ。さらにウィンドボールとエリィの結び付きを切断するために結界魔法でウィンドボールを覆う。魔力の流れが立ち切れたエリィがその場に倒れ込んだが、まずはこっちを処理だ。
これだけ膨れたウィンドボールの暴走は俺の結界だけでも抑えきれないかもしれない。さらに俺ごとウィンドボールをアースウォールで囲み、上にだけ逃げ道を残す。
その間にもウィンドボールが膨らみ今にも弾け飛びそうな状態になっていく。あと一手だ、持ち堪えてくれよ。
俺はウィンドボールの下へ潜ると、魔導法鎧で強化した拳にさらに魔力を乗せて撃ち抜く。いつ破裂するかわからないなら、逆に魔力の出口を作ってやるのだ。
圧縮されていた風は出口から勢いよく噴き出すと、俺の魔導法鎧をも切り裂く力と噴射によって真っ直ぐ上へと登っていく。そして雲の中にめり込むと同時に弾け飛んだ。
その力は、弾け飛んだ所を中心に大きな縁を描きながら雲を消しとばし、見えなかった太陽が顔を出したぐらいだ。
「エリィ!」
「今ハイヒールをかけてます!」
ブルーが体を大きくしてエリィを囲うようにしながらハイヒールを唱えている。万が一あのウィンドボールが弾け飛んだ時に、身を挺して守るためだろう。こいつは食い意地だけじゃないことにちょっと見直した。
ハイヒールをかけられたエリィの表情が少し柔らかくなる。それでも体調が悪そうなのは変わらずで、間違いなく魔素中毒が原因だろう。俺はエリィのお腹に手を乗せ、溜まってる魔素を吸引しようと試みた。よく見ると、ウィンドボールに突っ込んだ腕には無数の切り傷がある。暴走とはいえ、俺の魔導法鎧を突き破るほどの威力を持っていたと言う事だ。
魔素は取り込みすぎると毒にもなる。むしろ先にこの状態を体験できてよかったのかもしれない。俺が観察してた魔素量と、自身で感じた魔素量の擦り合わせを行なって、今の魔力量でどこまで魔素を取り込めるかの線引きをしていくのがいいだろう。
無事に溜まった魔素を吸引し終えると、エリィは起き上がれるほどに回復した。
「うぅ……師匠……」
「……」
「ごめんなさい……」
「何にだ?」
「えっ? あの上手く出来なくて……あと迷惑もかけて……」
「なんだ、そんな事は大した事じゃない」
俺も最初に魔素の取り込みすぎに気を付けろとは言わなかった。むしろ、最初は魔素を使って魔法を発動させるだけだから、今回のように魔素を取り込んで変換させる方法までいくとは思っていなかったんだ。
だが、実際はそこまでの事をやってのけた。エリィは常々天才だと思っていたが、今回に限っては俺の方が頭から抜けていたのが悪い。
それに弟子のミスをカバーするのは師匠の務めだ。そんな事で迷惑をかけたと思う方が迷惑だ。今は世界に出るための準備期間なんだから、大いに失敗すればいい。
これからもまだまだ修行は続くからな。もう一度言うが、俺の魔導法鎧を突き破って怪我を追わせるほどの威力を持っていたんだ。取り込める魔素量も増えるだろうし、そのうち俺との模擬戦も出来るかもな。
そんな事をエリィの頭を撫でながら話してやると、最後にはゲロを吐きそうな顔をしていたが笑顔になったから問題はないだろう。
すぐにエリィを治療し、俺の腕も治療してくれたブルーにも感謝しなくてはな。ブルーも撫でてやると、嬉しそうな顔をして尻尾を振り回していた。……本当は犬かもしれないな。
その日はエリィの料理に一層気合が入っていた。明日からの修行ルーティンに魔素コントロールも追加するとして、4階層も慣れたらフォロー有りでボス部屋に行ってもいいかもな。
そんな思いを馳せながらゆっくり浸かる風呂は、最高に気持ちよかった。
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