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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
17:魔素-2
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俺は両手を前に出して二つのファイアボールを空中に出した。一つは魔力を多く含み、もう一つは魔素を多く含んだ状態。側から見れば同じファイアボール見えるはずだが、じっくりと観察すれば違いが出てくるはずだ。
エリィも目の前に出されたファイアボールに向かって、魔力凝視を使い解析を発動させる。もう鑑定を超えて解析が出来る様になってるのは誇らしいものだ。
しばらく観察し続けていると、エリィが何か気付いたのか口を開いた。
「師匠、こっちの方が……魔素が多いとかですか?」
「……」
「……」
「……正解だ」
「やったぁ!」
しっかりと魔素の複有数が多い方を選んできた。パッと見ただけでは全く同じに見えたとしても、凝視すればどこまで魔力が魔素を干渉させてるかがはっきりとわかるはずだ。
今度はこれを自身で把握してもらい、魔法を発動するときにもコントロール出来る様になればいい。次は魔素を感覚として認識させる修行だ。
「次はまず座って心を落ち着けて。初めて魔力を操った時みたいに、心を鎮めて周りと同化する様に」
「……はい」
「そしたら身体を覆っている魔力を全て閉じる様に動かす。微弱な魔力すら残さず、身体の中心に全ての魔力を留める様に」
最初の修行と違うのはここだ。今までは魔力を感知する事を中心に動かしていたが、魔素に関しては身体を覆う魔力が初めのうちは弊害となる。魔力を持つものは誰しも身体から魔力が滲み出ており、その栓をしっかりと閉じる事で真の意味で自然を感じることが出来るのだ。
エリィも目を瞑って集中して魔力を体内に抑え込んでいる。すると、自身の魔力だけでなく、自然に溢れている魔素の流れをぼんやりと感じ取れるはずだ。
「し、師匠……あの……」
「大丈夫だ。怖がる必要はない」
「はい……。でも、いつもと違う何かがそこら中に……」
「そうだ。今エリィが心の目で見ている感覚、それが魔素だ」
大地に根付く魔素、大地から噴き出る魔素、風に乗って運ばれる魔素、湖に浮かぶ魔素、俺とブルーの周りに浮かぶ魔素。目に見えない魔素はそこら中にに存在し、常に自分の側にいるのだと感じさせてくれる。
エリィもその魔素の感覚を感じ取り、自然の凄さに圧倒されているのだろう。よく集中しているのがわかる。
「エリィ、その魔素を魔力で捕まえてウィンドボールを発動させてごらん」
「はい」
右手を前に伸ばしたエリィが魔力を使って魔素を掌に集める。魔素の感覚を手に入れた今のエリィにはそう難しくない操作だろう。いつもと同じように魔力を操作し、少しだけ自然の魔素を取り込み魔力を成形する。
そしてゆっくりと魔法名を唱えると、ちゃんとウィンドボールが発動する。
「師匠! 出来……あっ」
エリィが目を開いて俺に出来たのを見せようとした瞬間、ウィンドボールは魔素のコントロールを失い魔力ごと霧散した。魔素の感覚は掴みやすいが、コントロールとなるとまた別の問題だ。
自然エネルギーを自身の魔力と融合させてコントロールするのは、自分の魔力だけを扱うよりも難しい。最初のうちは気を抜いただけで魔力ごと吹っ飛んでしまうだろう。
せっかく出来たと思った魔素を使う魔法が霧散してしまい、悔しそうな顔をするエリィ。俺は頭に手をポンと乗せながら笑顔を見せた。
「初めてやってすぐに出来るやつなんていないぞ。今までも練習して繰り返して修行したから出来たんだろ?」
「……はい」
「ならまだまだ時間はある。エリィは俺の弟子の中で1番のセンスの持ち主だ。だから、魔素もすぐに使いこなせるようになるぞ」
「……はい!」
それから昼休憩を挟みつつ、ひたすら魔素をコントロールする修行を続けた。魔法は一番得意な風属性のウィンドボールを選択している。魔素を捕まえるまでは問題なく行えるが、魔法に変換したり継続したりなどが出てくるとちょくちょく失敗が増えていく。
ムキになったエリィが、全身の魔力量を増やして魔法を発動させようとした。
「師匠!」
「!? 何してるんだエリィ!」
エリィも目の前に出されたファイアボールに向かって、魔力凝視を使い解析を発動させる。もう鑑定を超えて解析が出来る様になってるのは誇らしいものだ。
しばらく観察し続けていると、エリィが何か気付いたのか口を開いた。
「師匠、こっちの方が……魔素が多いとかですか?」
「……」
「……」
「……正解だ」
「やったぁ!」
しっかりと魔素の複有数が多い方を選んできた。パッと見ただけでは全く同じに見えたとしても、凝視すればどこまで魔力が魔素を干渉させてるかがはっきりとわかるはずだ。
今度はこれを自身で把握してもらい、魔法を発動するときにもコントロール出来る様になればいい。次は魔素を感覚として認識させる修行だ。
「次はまず座って心を落ち着けて。初めて魔力を操った時みたいに、心を鎮めて周りと同化する様に」
「……はい」
「そしたら身体を覆っている魔力を全て閉じる様に動かす。微弱な魔力すら残さず、身体の中心に全ての魔力を留める様に」
最初の修行と違うのはここだ。今までは魔力を感知する事を中心に動かしていたが、魔素に関しては身体を覆う魔力が初めのうちは弊害となる。魔力を持つものは誰しも身体から魔力が滲み出ており、その栓をしっかりと閉じる事で真の意味で自然を感じることが出来るのだ。
エリィも目を瞑って集中して魔力を体内に抑え込んでいる。すると、自身の魔力だけでなく、自然に溢れている魔素の流れをぼんやりと感じ取れるはずだ。
「し、師匠……あの……」
「大丈夫だ。怖がる必要はない」
「はい……。でも、いつもと違う何かがそこら中に……」
「そうだ。今エリィが心の目で見ている感覚、それが魔素だ」
大地に根付く魔素、大地から噴き出る魔素、風に乗って運ばれる魔素、湖に浮かぶ魔素、俺とブルーの周りに浮かぶ魔素。目に見えない魔素はそこら中にに存在し、常に自分の側にいるのだと感じさせてくれる。
エリィもその魔素の感覚を感じ取り、自然の凄さに圧倒されているのだろう。よく集中しているのがわかる。
「エリィ、その魔素を魔力で捕まえてウィンドボールを発動させてごらん」
「はい」
右手を前に伸ばしたエリィが魔力を使って魔素を掌に集める。魔素の感覚を手に入れた今のエリィにはそう難しくない操作だろう。いつもと同じように魔力を操作し、少しだけ自然の魔素を取り込み魔力を成形する。
そしてゆっくりと魔法名を唱えると、ちゃんとウィンドボールが発動する。
「師匠! 出来……あっ」
エリィが目を開いて俺に出来たのを見せようとした瞬間、ウィンドボールは魔素のコントロールを失い魔力ごと霧散した。魔素の感覚は掴みやすいが、コントロールとなるとまた別の問題だ。
自然エネルギーを自身の魔力と融合させてコントロールするのは、自分の魔力だけを扱うよりも難しい。最初のうちは気を抜いただけで魔力ごと吹っ飛んでしまうだろう。
せっかく出来たと思った魔素を使う魔法が霧散してしまい、悔しそうな顔をするエリィ。俺は頭に手をポンと乗せながら笑顔を見せた。
「初めてやってすぐに出来るやつなんていないぞ。今までも練習して繰り返して修行したから出来たんだろ?」
「……はい」
「ならまだまだ時間はある。エリィは俺の弟子の中で1番のセンスの持ち主だ。だから、魔素もすぐに使いこなせるようになるぞ」
「……はい!」
それから昼休憩を挟みつつ、ひたすら魔素をコントロールする修行を続けた。魔法は一番得意な風属性のウィンドボールを選択している。魔素を捕まえるまでは問題なく行えるが、魔法に変換したり継続したりなどが出てくるとちょくちょく失敗が増えていく。
ムキになったエリィが、全身の魔力量を増やして魔法を発動させようとした。
「師匠!」
「!? 何してるんだエリィ!」
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