上 下
25 / 63
第1章 魔法を極めた王、異世界に行く

16:珍客-3

しおりを挟む

「と言うわけで、今日から一緒に暮らす水龍だ」
「よろしくお願いします」
「いや意味がわからないんですけど師匠!?!?」

 意味がわからないのはこっちのセリフだ。いつも通り夜の修行に死んで生き返ったら羽の生えたトカゲみたいな奴がいたんだぞ?
 しかもハイヒールを唱えて俺を回復までしてくれた。さらに言葉を話すなんて見たこともない。
 とりあえず肉を欲しそうにしていたので何枚か分け与えたら、こんな風に懐かれたのだ。

「お肉が美味しかったので、僕も一緒に暮らそうかと」
「水龍ちゃんも何を言ってるの!?」

 簡単に言えば餌付けされた羽トカゲだ。こんな小さなサイズで言葉も喋れて魔法も使えるなんて素晴らしいじゃないか。いつか解剖してぜひその生態を……いや、辞めておこう。そんな恐ろしい顔で俺を見るんじゃない。
 俺としても龍とは会いたかったし、むしろこうやってコミュニケーションが取れるのが嬉しい。知性のある魔物? と呼べばいいのかわからんが、龍と仲良くなって損はないだろう。
 実際のサイズも見せてもらったが、これから暮らすなら小さいサイズのままの方がありがたい。

「あのですね師匠? この湖にいる龍は本当にいるかも知られていませんからね? しかも本来人前にも姿を見せませんし、むしろ悪さをしに来た勇者を一撃で追い出した恐ろしい存在……」

 そこまでエリィが一気に喋ると、視線を水龍の方へと移す。
 水龍もエリィの視線に気付いて首を傾げた。

「むぅ?」
「……可愛い存在ですね」

 エリィが手を伸ばすと水龍は抵抗することなくその手に乗った。そのまま撫で始めると水龍も嬉しそうに目を細めながら笑顔になる。
 もしかしたら本来は恐ろしい存在かもしれんが、特に今の俺達に危害は加えないだろう。むしろ肉を与えていれば大人しくしてそうな気もする。
 元々俺らはこの森を荒らすために来たわけでもないしな。

「もう、わかりましたよ。水龍ちゃん、一緒に暮らしましょう?」
「うん! 僕からもお願いします!」
「そうなると、名前を決めなきゃですね……」

 水龍でいいのでは? とも思ったが、水龍とは種族名なのでちゃんと名前があった方がいいと言われた。確かに俺も名前じゃなくて「ヒューマン」とは呼ばれたくはないな。
 そうなると名前かぁ……水龍に聞いてみたが、何でもいいそうだ。

「んー、スイとかリュウとか……」
「師匠はセンスないんですね?」
「ぐぬぬぬ」

 その後2人であーでもないこーでもないと話した結果、水流の名前は「ブルー」になった。なんか安直な気がするが本人も喜んでいるので問題はないだろう。
 こうして俺たちの修行場に1人? の住人が増えることになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的
ファンタジー
魔法仕掛けの古い豪邸に残された6歳の少女「ノア」 そこに次々と召喚される男の人、女の人。ところが、誰もかれもがノアをそっちのけで言い争うばかり。 もしかしたら怒られるかもと、絶望するノア。 でも、最後に喚ばれた人は、他の人たちとはちょっぴり違う人でした。 魔法も知らず、力もちでもない、シャチクとかいう人。 その人は、言い争いをたったの一言で鎮めたり、いじわるな領主から沢山のお土産をもらってきたりと大活躍。 どうしてそうなるのかノアには不思議でたまりません。 でも、それは、次々起こる不思議で幸せな出来事の始まりに過ぎなかったのでした。 ※ プロローグの女の子が幸せになる話です ※ 『小説家になろう』様にも「召還社畜と魔法の豪邸 ~召喚されたおかげでデスマーチから逃れたので家主の少女とのんびり暮らす予定です~」というタイトルで投稿しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。 目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に! 火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!! 有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!? 仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない! 進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命! グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか! 読んで観なきゃあ分からない! 異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す! ※「小説家になろう」でも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

遥かなる物語

うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。 この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。 彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。 だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか? ーーーーーーーー 序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。 ※作者独自の世界観です。 ※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...