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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
21:森にきた盗賊団-1
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原初の森入り口。この森は外側が海に囲われ、森を隠すように山も聳え立っており、入り口側以外から森に入るのは不可能だと言われている。
その代わり森の入り口は誰でも侵入可能だが、伝承からも基本的に奥までいくような物好きはいない。
「団長……ヘイムリア団長! それ以上は危険です!」
「クソっ! やっと追い詰めたのに……!」
騎士団を率いるのは齢17の女性。原初の森の入り口近くからその森の深さを眺めていた。木々は数mはあろうかと思われるほど大きく成長しており、奥の方は光を通していないのか薄暗くなっている。
騎士団として何名かの盗賊団を捕まえたはいいが、首謀者が捕まらなければまた勢力を増やして近隣が危うくなる可能性がある。トカゲのしっぽ切りとはよく言ったもので、時間が経てばまた村人たちが脅威にさらされるだろう。
そしてそれ以上に危険なのは、この森は龍の棲家でもあると言う伝承。数百年以上生きる龍の脅威はこの国の人間なら誰しも知っていることだ。盗賊団が軽い気持ちで森の奥まで踏み荒らし、龍の怒りを買わないかも心配事として上がっている。
「団長……ここって数ヶ月前にアレが……」
「あぁ、空を覆う雲が一瞬にして晴れ渡った場所だ」
「やっぱ、本当に龍がいるんですかね……」
異常気象。大きな破裂音が響き渡ったかと思えば、天を覆う分厚い雲が円を描くように霧散していき太陽が顔を出してきた。その衝撃は何人もの村人や行商人が確認しており、龍が怒りの咆哮を上げたのかと推測するものまで出てきたぐらいだ。
しかしそれ以来大きな事件などは起きておらず、晴れたことによって龍の怒りが沈んだとも推測されていた。
「わからん。賞金首が出てくる可能性を考慮し、近くに野営を立てる。見張りは交代制にしよう」
◇
ニヤニヤしながら盗賊達がこっちに近付いてくる。俺も立ち上がり右手を前に出して警告するように声を出した。
「それ以上近づくな。もし近付くなら、敵対行動とみなし、こっちも攻撃する」
「あぁん? てめー俺様が誰か知らねーのか!?」
先頭にいる男が笑いながら剣を担いだ。どうやらこの男は有名な奴らしいが、俺はこの森から出たことないから知らん。
つか、最初にブルーの索敵に引っかからないような奴が有名なのか?
「俺様はB級賞金首のディグド様だ! わかるか? 俺様の危険度はBクラス! お前みたいなGランク冒険者じゃ一生敵わねぇのさ!」
「あー……」
そういやそんなタグをつけてたな。木で出来たタグを見て、俺がGランクだと見抜いたんだろう。
賞金首ってのは危険度によって変わるのか? つかBランクでこの程度なのか?
世間の事をそんなに知らない俺が困惑していると、背後からエリィが小声で俺に教えてくれた。
「B級って凄く強いんだよ……逃げないと殺されちゃうよ」
なるほどね。つまり目の前にいる奴は凄く強いB級賞金首で、俺たちはその悪者に狙われた鴨に見えてるってことか。
下品な笑いをしているこいつらがいなくなる事はないだろう。それじゃ、力の差を見せつけますか。
エリィにその場にいるように指示すると、俺はディグドに向かって歩みを進めながら、人差し指を立てて手前にクイクイっと折る。
「賞金首なら殺しても問題ないだろ? こいよ」
「あ゛ぁ!? んじゃ望み通り殺してやるよ!」
その代わり森の入り口は誰でも侵入可能だが、伝承からも基本的に奥までいくような物好きはいない。
「団長……ヘイムリア団長! それ以上は危険です!」
「クソっ! やっと追い詰めたのに……!」
騎士団を率いるのは齢17の女性。原初の森の入り口近くからその森の深さを眺めていた。木々は数mはあろうかと思われるほど大きく成長しており、奥の方は光を通していないのか薄暗くなっている。
騎士団として何名かの盗賊団を捕まえたはいいが、首謀者が捕まらなければまた勢力を増やして近隣が危うくなる可能性がある。トカゲのしっぽ切りとはよく言ったもので、時間が経てばまた村人たちが脅威にさらされるだろう。
そしてそれ以上に危険なのは、この森は龍の棲家でもあると言う伝承。数百年以上生きる龍の脅威はこの国の人間なら誰しも知っていることだ。盗賊団が軽い気持ちで森の奥まで踏み荒らし、龍の怒りを買わないかも心配事として上がっている。
「団長……ここって数ヶ月前にアレが……」
「あぁ、空を覆う雲が一瞬にして晴れ渡った場所だ」
「やっぱ、本当に龍がいるんですかね……」
異常気象。大きな破裂音が響き渡ったかと思えば、天を覆う分厚い雲が円を描くように霧散していき太陽が顔を出してきた。その衝撃は何人もの村人や行商人が確認しており、龍が怒りの咆哮を上げたのかと推測するものまで出てきたぐらいだ。
しかしそれ以来大きな事件などは起きておらず、晴れたことによって龍の怒りが沈んだとも推測されていた。
「わからん。賞金首が出てくる可能性を考慮し、近くに野営を立てる。見張りは交代制にしよう」
◇
ニヤニヤしながら盗賊達がこっちに近付いてくる。俺も立ち上がり右手を前に出して警告するように声を出した。
「それ以上近づくな。もし近付くなら、敵対行動とみなし、こっちも攻撃する」
「あぁん? てめー俺様が誰か知らねーのか!?」
先頭にいる男が笑いながら剣を担いだ。どうやらこの男は有名な奴らしいが、俺はこの森から出たことないから知らん。
つか、最初にブルーの索敵に引っかからないような奴が有名なのか?
「俺様はB級賞金首のディグド様だ! わかるか? 俺様の危険度はBクラス! お前みたいなGランク冒険者じゃ一生敵わねぇのさ!」
「あー……」
そういやそんなタグをつけてたな。木で出来たタグを見て、俺がGランクだと見抜いたんだろう。
賞金首ってのは危険度によって変わるのか? つかBランクでこの程度なのか?
世間の事をそんなに知らない俺が困惑していると、背後からエリィが小声で俺に教えてくれた。
「B級って凄く強いんだよ……逃げないと殺されちゃうよ」
なるほどね。つまり目の前にいる奴は凄く強いB級賞金首で、俺たちはその悪者に狙われた鴨に見えてるってことか。
下品な笑いをしているこいつらがいなくなる事はないだろう。それじゃ、力の差を見せつけますか。
エリィにその場にいるように指示すると、俺はディグドに向かって歩みを進めながら、人差し指を立てて手前にクイクイっと折る。
「賞金首なら殺しても問題ないだろ? こいよ」
「あ゛ぁ!? んじゃ望み通り殺してやるよ!」
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