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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
15:魔法修行③-1
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俺がダンジョンを踏破して1ヶ月。エリィもダンジョンに挑むようになって、自分が強くなってるのを認識し始めたころ、エリィは一つの問題にぶつかっていた。
「むう、師匠の言う並列起動が難しいです」
「それはエリィが考えすぎだからだ」
地下1階や地下2階は、一度に出てくる魔物の数も少なく、ほぼ一対一の状況で戦うことが多い。さらに倒してもすぐに次が来るなどではなく、しばらく歩かないと次の魔物に出会わないのだ。
すでに魔法もしっかり発動できるエリィには、この階層は問題なく踏破することが出来る。しかし、地下3階から魔物が一度に複数現れ始めてからは、対応に遅れが出始めた。
魔物自体はそこまで強くないので、エリィの魔法で一撃で倒すことが出来る。だが2匹や3匹同時に襲い掛かられると、どうしても魔法が追いつかなくなり攻撃を受けてしまう場面が増えた。冷静に局面を考え、動きながら魔法を放ったり色々と試しているが、まだまだ修行不足だ。
その弱点を克服するために、今日は新しい武器になる並列起動の修行をしている。
エリィは右手に魔力を集中させ、それを維持したまま左手に魔力を集めようとしているがうまくいかない。左手に意識が向いてしまうと、どうしても右手の魔力が減っていくのだ。
そのまま左手に集中させたまま右手に意識を向けると、今度は左手の魔力が減る。
一進一退を繰り返し続け、先程根を上げたところだ。
「ししょぉー……」
「うーん、そうだな。それじゃヒントをやろう」
「やった!!」
魔力操作は自身の感覚だからあまり先入観などを植え付けたくはない。だが、困っている弟子に手を差し伸べないのも違うからな。
それにこれなら自身の感覚だろうし、そんなに影響もないだろう。
「ならまずは全身に魔力布衣!」
「はい!」
流れるようなスピードでエリィが魔力布衣を発動させる。常日頃から魔力布衣を発動させてはいるが、修行するときはその魔力量を増やして全身に滞留させるように言いつけてある。
うん、しっかりと出来ているな。
「それから湖の周りを1周してもらう。足に集中!」
「はい!」
「それだ!」
「……え?」
足に集中した魔力は綺麗に左右に分かれている。エリィの足を指差し、魔力を集めた目魔力凝視で見るように指示する。
言われた通り見たエリィも気付いたのだろう。魔力はちゃんと左右の脚に大きく集中しているのだ。
「こ、これは……」
「並列起動は、こんな風に自然に認識できればすぐにでも習得できる。あとは繰り返すだけだ」
「……はい!」
さっきまで悩んでいたエリィの目に光が灯った。魔力ってのは自身の感覚が一番大事だからな、今まで自分がやってきたことが、壁にぶつかった時など不意にヒントになることもある。
天才とは言え努力は必要だ。エリィなら並列起動もすぐにものにするだろう。
「むう、師匠の言う並列起動が難しいです」
「それはエリィが考えすぎだからだ」
地下1階や地下2階は、一度に出てくる魔物の数も少なく、ほぼ一対一の状況で戦うことが多い。さらに倒してもすぐに次が来るなどではなく、しばらく歩かないと次の魔物に出会わないのだ。
すでに魔法もしっかり発動できるエリィには、この階層は問題なく踏破することが出来る。しかし、地下3階から魔物が一度に複数現れ始めてからは、対応に遅れが出始めた。
魔物自体はそこまで強くないので、エリィの魔法で一撃で倒すことが出来る。だが2匹や3匹同時に襲い掛かられると、どうしても魔法が追いつかなくなり攻撃を受けてしまう場面が増えた。冷静に局面を考え、動きながら魔法を放ったり色々と試しているが、まだまだ修行不足だ。
その弱点を克服するために、今日は新しい武器になる並列起動の修行をしている。
エリィは右手に魔力を集中させ、それを維持したまま左手に魔力を集めようとしているがうまくいかない。左手に意識が向いてしまうと、どうしても右手の魔力が減っていくのだ。
そのまま左手に集中させたまま右手に意識を向けると、今度は左手の魔力が減る。
一進一退を繰り返し続け、先程根を上げたところだ。
「ししょぉー……」
「うーん、そうだな。それじゃヒントをやろう」
「やった!!」
魔力操作は自身の感覚だからあまり先入観などを植え付けたくはない。だが、困っている弟子に手を差し伸べないのも違うからな。
それにこれなら自身の感覚だろうし、そんなに影響もないだろう。
「ならまずは全身に魔力布衣!」
「はい!」
流れるようなスピードでエリィが魔力布衣を発動させる。常日頃から魔力布衣を発動させてはいるが、修行するときはその魔力量を増やして全身に滞留させるように言いつけてある。
うん、しっかりと出来ているな。
「それから湖の周りを1周してもらう。足に集中!」
「はい!」
「それだ!」
「……え?」
足に集中した魔力は綺麗に左右に分かれている。エリィの足を指差し、魔力を集めた目魔力凝視で見るように指示する。
言われた通り見たエリィも気付いたのだろう。魔力はちゃんと左右の脚に大きく集中しているのだ。
「こ、これは……」
「並列起動は、こんな風に自然に認識できればすぐにでも習得できる。あとは繰り返すだけだ」
「……はい!」
さっきまで悩んでいたエリィの目に光が灯った。魔力ってのは自身の感覚が一番大事だからな、今まで自分がやってきたことが、壁にぶつかった時など不意にヒントになることもある。
天才とは言え努力は必要だ。エリィなら並列起動もすぐにものにするだろう。
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