自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり

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奇跡

第12話:俺はじーさんになっても強くかっこよくありたい。腕だけでなく心もな。

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 階段を降りた先。

 ここは先ほどの土壁むき出しと違い、かなり整備されているような作りになっている。

 ヒカリゴケで明るく照らされた扉が威圧的に出迎える。

「よし、開けて入るか」

「はーい」

 俺はリムをおぶったままドアに手をかざした。

 濃厚な重低音を鳴らしつつゆっくりと扉が開く。

 中から明るい光が見えてきた。

「さて、ゼイトスさんはどこにいるのかなっと……」

 中はそんなに広くない。

 目の前には棺桶のような箱が置いてあり、そこからいびきのような音が聞こえてくる。

 ……まさか寝てんのか?

「ケイドー?」

「あぁ、行ってみようか」

 棺桶に近づき蓋に手を当てる。

 そのまま横へずらしながら中を覗くと……いた。

 気持ちよさそうに寝てやがる。

 これ本当に封印されてんのか?

 どー見ても寝てるだけじゃねぇか。

「ケイド寝てるねー?」

「……気持ちよさそうだな」

 さて、どーするかな。

 封印は解いたはずだし、このまま帰宅してもいいが……。

 目の前には気持ちよさそうないびきを立てて寝ている白髪混じりのじーさん。

 この人がゼイトスで間違いはないだろう。

 ……念のため起こすか。

「もしもーし。ゼイトスさん?朝ですよー?」

 肩に手を置いて何度か揺すってみる。

 気持ちよさそうに寝ていたじーさんの目がゆっくりと開いた。

「ん?おぉ……」

 先程まで瞑っていた目をこすりながらじーさんが上半身を起こした。

 周りをキョロキョロと眺めるとゆっくりと背伸びをする。

 大きなあくびをしながら俺たちを見ると、そのまま棺桶に寝そべり目を閉じた。

「……いや寝るんかい!!」




 ◇



「いやーすまんすまん。意外とこの中が気持ちよくてのぉ」

 ゼイトスが椅子に座りながら口を開いた。

 俺が突っ込みを入れると流石に起きて、魔法を使いこの空間に家を作り出したのだ。

 ほんと魔法ってのは便利すぎる。

 ゼイトスが寝ていた棺桶は椅子の横に置いてあり、中を見ると柔らかそうな綿毛が敷き詰められていた。

「ウバシャスさんに言われて俺たちはここに来たんだが……」

「ほう?ウバシャス……懐かしいのぉ」

 ゼイトスが少し遠い目をしながら答えてきた。

 ウバシャスもゼイトスも八柱としてこの世界に蔓延っていたらしい。

 だが今の魔王が現れてからは、どれぐらい顔を合わせていないかはわからない。

 そして封印されたことにより、長い間眠りについていたそうだ。

「そして……その子は?」

 俺にくっ付いて寝ているリムを見ながらゼイトスが不思議そうに声を出してきた。

 リムは眠気が限界に来たらしく俺の横で寝ている。

 膝枕なんて久々にしたよ。俺もぜひして……いやその一線は超えられないか。

「ウバシャスのじーさんから預かって来たリムだ。まぁ今は俺の相棒ってとこだな」

「……ほう?なるほどのぉ」

 ゼイトスが顎に手を当てながら何かを考えている。

 リムが珍しいのか?

 確かにこんな美少女は滅多にいない。

 そんな話題のリムがむくりと起き上がった。

「うぅー。寝ちゃった」

「まだ寝てても大丈夫だぞ?」

 俺が優しくリムに微笑むとリムも笑顔で返して来た。

 まだ1年ちょっとしか一緒にいないが、やはり俺はこの子を守ってあげるべきだろう。

 リムの笑顔を見ながらそんな気がしていた。

「ふぅむ。それならば……リム……殿よ。私の封印を解いたお礼をしなければな」

 ゼイトスがそういうと立ち上がった。

 右手を前に出し、何やら魔法のようなものを呟いている。

 やがて光が右手を覆い、リムへ向けて放たれた。

「レジェネ・レイ・メモリア」

 ゼイトスが最後にそう呟くとリムが空中に浮きながら光り始めた。

「ああああああああ!!」

「おい!じーさん!何をしたんだ!!」

 思わずじーさんの胸ぐらを掴んだが、すぐにいなされてしまった。

 何をしたんだこのじーさんは!

 リムになんかあったら俺はーー。

「大丈夫じゃ。彼女の力の一部を取り戻させただけじゃからな?」

「はぁ?」

 何を言ってるんだ?

 俺は意味がわからずリムの方を見ると、すでにリムの光は収まっていた。

 そしていつもと変わらないリムが椅子に座っている。

「あれ?リム?」

「ケイドー?大丈夫だよー」

 えへへへ、と笑いかけてくるリム。

 よかった。とりあえず何もなさそうだ。

「リム殿はこれでまた強くなったわい。残りは……4人かのぉ。封印されてない八柱も2人程おる」

 あと4人……今わかってるのは『ギア』って人物ぐらいだ。

 ゼイトスは何か知っているのだろうか。

 期待を込めた目で俺がゼイトスを見ると、ゼイトスが口を開いて来た。

「残念ながら私がわかるのは『ウート』ぐらいなものじゃ。封印されておらぬ2人は『ファルフェイ』と『ルスト』。この2人はどこかの街で人として暮らしておる」

 あぁじーさん達は俺の心が読めるんだった。

 俺が何も言わなくても話し始める。

 だがその情報だけでもありがたい。

 じーさん、じーさんと続いているんだ。次もじーさんだろう。

「せっかくじゃ。リム殿の強さを見るためにも模擬戦でもせんか?」

「するー!リム動きたい!!」

 リムが元気よく飛び跳ねている。

 さっきまで寝ていたんだ。気力も十分だろう。

「模擬戦ってもなぁ……俺は疲れてるからパスだ」

「なぁに。私が召喚する相手と戦ってもらうだけじゃよ」

 そうゼイトスが話すと、悪そうにニヤリと頬を緩ませた。




 じーさんはやはり人外だろうな。

 さっきまでただの洞窟だったのが、今はだだっ広い草原になってやがる。

 これはあの……亜空間か?

「リム殿よ。準備はよいか?」

「おっけー!」

 リムが元気よく返事をすると戦闘モードへ移行する。

 先程までロリ体型だったリムが一気に成長して、誰が見てもダイナマイトボディへと変化した。

「……ん?」

 だがいつもと違った。

 足のかかと部分に小さな翼が生えている。

 それは靴の上から生えており、まるでジャンピングシューズみたいな形だ。

 それに気付いたリムも不思議そうな顔をしている。

「ほっほっほ。私が力を解放し、リム殿は速さを手に入れたのじゃ。そしてこれから戦うのは……」

 ゼイトスが両手を地面につけると、その場に魔法陣が浮かび上がった。

 その魔法陣が下から上へ登ると、そこには魔物が1匹現れた。

「なっ!それは……メタルラビットじゃねーか!」

 メタルラビット……素早い動きと硬い皮膚により出会ったとしてもすぐに逃げられる。

 だが討伐した場合には、その最高級の肉が高値で取引されており、王族でも滅多に口にすることが出来ない。

 硬いのは皮膚だけで、中の肉はとろけるほど柔らかいのだ。

「ほっほっほ。ではリム殿。思いっきり倒してくだされ」

「よぉし!」

 リムがまっすぐ駆け出すと、それに気付いたメタルラビットが逃げ始める。

 やはり速い。俺でも追いつくか微妙なところだ。

 しかしその姿を見たリムが口元を吊り上げた。

「ドンっ!!」

 掛け声とともにリムが超高速で追いかけ始める。

 メタルラビットはだだっ広い草原を直角に曲がりながら逃げるが、すぐにリムに追いつかれた。

 そのまま耳を捕まえられ、リムの勝ち。

「わーい!ケイド見た?見た?リム早くなったよ!」

「お、おう。流石だな」

 これはすげーや。

 こうやって封印を解いていけばリムがどんどん強くなるのか?

 そしたら世界を旅して回るのもだいぶ楽になれるな。

「な、なぁじーさん。俺には?俺にはなんかないのか?」

 我ながら図々しいと思うが、やっぱなんか期待しちまう。

 俺だって強くなりてぇ。

 このままリムが強くなり続けて……いや、あんな奴らと同じにするのは申し訳ないか。

「ふむ?お主は……ほう!限界突破しておるのか!それならギアに会ったら私から秘技を受け継げと言われたと話すがよい。それでお主はさらに強くなれる」

 ゼイトスからは何も貰えないが、ギアって奴からは秘技を教えてもらえるらしい。

 だがそんかセリフだけで教えてくれるのか?

「大丈夫じゃ。お主の限界突破にリム殿もおる。私の言葉として話せばわかってくれるじゃろう」

 ……また読まれた。

 まぁその言葉を信じて向かうしかないな。

「じーさん、ありがとう。俺も強くなりたいしな」

「ほっほっほ。若い人間がやる気を出すのは嬉しいものじゃよ」

 ……嬉しいことを言ってくれるんじゃねーか。

 そうだ。俺の人生を老後として過ごすにはまだまだ早い。

 やれることはキッチリやって過ごしてやる。


 俺たちはしばらくじーさんと歓談してから洞窟を出て行った。

 まずは王都でクエストの報告。そして報酬を貰ってアイテムの補充だ。

 次の目的地はギアの救出。

 次のじーさんはどんな人物だろうか。
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