自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり

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奇跡

第11話:でっかいやつはでっかいなりにいいところもある。俺はちっちゃくても好きだがな。

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 それから洞窟探索は順調に進んだ。

 多分俺も強くなってるんだろう。

 相変わらずリムは強いが、俺はそれ以上に強い。

 慎重な俺だから、必ず当たる時にしか手を出してはいないけどな。

 ここの敵はなかなかの強さを持ってる。

 授業前の俺なら間違いなく逃げ出していただろう。

 そーなるとじーさんには感謝だな。

 おっと、リムにも感謝しないと。

 不意にリムの頭を撫でると、怒ったような顔で俺を見て来た。

「今集中してるの!」

「あっはい。ごめんなさい」





 地下への道を数回降りると最下層についた。

 あぁこの感じ。

 肌にひりつくような威圧感とプレッシャーが俺を心地よい気分にしてくれる。

 ダンジョンマスター……か。

 ザブラ達と数回当たったことがあるが、このマスター前に来ると気合いが入る。

 ……決して怖いんじゃない。

 これから出会う敵が楽しみなんだ。

 失敗数15ってことはかなりの強敵だが、俺とリムならなんとかなるだろう。

 『俺の冒険はついえてしまった!』なんて終わり方は認めねぇ。


 俺は隣にいるリムを顔を精一杯の笑顔で見つめた。

「ケイドどーしたのー?」

「うん?これからめちゃくちゃ強い敵を倒すのが楽しみなんだよ」

「でも震えてるよー?」

 俺は気付いていなかった。

 どうやら体はこの威圧感に対して反応している。

 だが気持ちはどうだ?

 いつになくやる気に満ち溢れている。

「これはな、武者震いって言うんだ。この中に待ち構えてる奴が楽しみなんだよ」

「リムも!」

 笑顔で返してくるリム。

 やはり可愛い。

 よし、絶対に生きて帰ろう。


 俺は意を決して扉を開いた。

 その広間の真ん中には魔物が1匹佇んでいる。

 暗くてよく見えないが、奥には通路も見える。

 あの先にゼイトスが封印されているのだろうか。

 じーさんの言っていた通り、あの魔物を倒すしか無さそうだ。

『グガガガ……オォン!』

 俺たちが1歩進むと、その魔物がこっちに気付いた。

 3つの頭を持った獣……ケルベロス。

 地獄の番人と呼ばれるだけあり、その戦闘力は計り知れない。

 四足歩行で立ち上がれば3mはあるだろう。

 しかしデカイ図体の割に素早い動きをする。

 頭はそれぞれ別の意思を持っているのか、別々にブレスなども吐いてくる。

 さらにそれだけじゃない。

 鋭い爪は鉄をも切り裂き、口に生えている牙は岩をも砕く。

 そんな恐ろしい敵によく15人で済んでいるものだ。

「リム、左右に展開。基本的に俺が注目を集めるから、リムは思いっきりやってくれ」

「はーい」

 返事は優しそうだが、顔は真剣そのものだ。

 俺たちは左右に展開し、敵の出方を伺う。

「ゴギャァン!!」

 頭の1つが吠えたかと思えば、そのまま俺に襲いかかって来た。

 しかしそれは想定内。

 あとはどんな攻撃をしてくるかをいい。

「『予知眼ビジョンアイ』!」

 その瞬間世界が遅くなる。
 実際には一瞬しか経っていないが、その時間だけで十分だ。
 こいつは俺を食おうと大口を開けてくる。
 それを横に避ければ今度は爪だ。
 となると、俺はーー

「はぁ!」

 上だ。

 高く飛び上がり距離を取る。

 呆気にとられたような魔物がすぐに俺を捕捉し、飛びかかろうと足に力を込めた。

「エヤァ!」

 ズガン!

 そうはさせまいとリム。

 ガラ空きになったボディに思いっきり拳を突きつけた。

 鈍い音と共にケルベロスの巨体が吹っ飛ぶ。

 壁にぶつかる寸前で体制を立て直し、改めて俺たちの方を見て来た。

『ゲゴァァ……』

 自分の攻撃が避けられないのが気になったのか、それとも重い一撃を食らって怯んだのか。

 3つの頭で観察するように見ている。

「まったく……獣の熱い眼差しはお断りなんだけどなぁ」

「ケイド余裕じゃない?」

 俺の呟きに突っ込みを入れてくれる相棒。

 最高じゃないか。



 目を合わせすぐにまた二手に分かれる。

 俺がケルベロスの注意を引き、隙が出来たらリムが叩き込む。

「リム!今だ!」

魔炎弾ファイアバレット

 俺たちのコンビネーションは最強かもしれない。

 ケルベロスの注意を引き、体制を崩すのが俺の役目。

 デカイだけあって2,3発殴らなきゃよろめきもしねぇ。

 その隙が出来たらリムの出番だ。

 魔法に肉弾戦。何をさせてもリムはしっかり仕事をしてくれる。

 身体強化系の魔法も使っているのだろう。

 物凄い速さと勢いでケルベロスを押していく。

 さらに予知眼ビジョンアイのお陰もあって、順調に相手の体力を奪っていった。

 俺に注意を向ければリムが攻撃、リムに注意が向けば俺が攻撃。

 何度も撃ち込まれ、ケルベロスはなすすべもなく弱っていく。

「おるぁ!!」

「はぁっ!!」

 俺が右頭を拳で、リムが左頭に蹴りをいれた。

 骨を砕くような音が鳴り、そのまま頭が動かなくなる。

 残るは……真ん中の1つ。


「リム、また俺が注意をーー」

 俺が声を上げた瞬間だった。

 勝手に予知眼ビジョンアイが発動し、この後起きる光景が脳内に浮かび上がる。

 ケルベロスが一瞬でリムの側面に回り込み、その分厚く鋭い爪で攻撃する瞬間だ。

 俺の体は考えるより先に動き出した。

 ケルベロスは最後の足掻きだろう。

 追い詰められた獣は、時として驚くほど力を出す。

 それが今リムに向けられているのだ。

「『閃速ランポ』」

 一時的に足腰の強化と速度上昇。

 瞬時に距離を詰め、リムと爪の間に入る。


 ゴシャァン

「うおおおおお!!」

 俺の拳がケルベロスの肉球にめり込む。

 爪先はリムの目と鼻の先まで迫っていた。

 だが届かせやしない。俺の予知眼ビジョンアイと修行した力さえあれば。

 一撃で骨を粉砕し、その勢いのままケルベロスを吹っ飛ばす。

「リム!」

「はい!」

 2人でケルベロスの吹っ飛ばされた方へ駆け抜ける。

 やや手前でジャンプし、渾身の一撃を放つ。

「吹き飛べ!爆熱暴拳ギャラル!」

 俺の右拳が炎の魔力を纏い膨れ上がる。

「滅せよ。魔蹴斬ゼファート!」

 リムの蹴りから斬撃が飛び放たれる。



 ズガァァァン!!

 盛大な轟音と共に土煙が上がった。

 手応えは十分。これで生きてたらどうしようもないが……。

 土埃が治まってくると、そこには物言わぬ塊になったケルベロスが見るも無残な姿で鎮座していた。


「よっしゃぁぁぁ!!」

「やったぁぁぁ!!」

 2人して飛び跳ねながらハイタッチをする。

 よかった。本当に予知眼ビジョンアイには感謝しかない。

 目の前のケルベロスが淡く光り、その姿を消していく。

 一部の光は俺の持っていた依頼遂行証へと吸収され、他は霧散した。

 これで任務は完了。奴隷にはならずに済みそうだ。



 ゴゴゴゴゴ……

 ケルベロスが霧散すると洞窟全体から音が鳴り始めた。

 奥に見える通路とは別に、さらに地下への階段が姿を現わす。

 本来この洞窟でダンジョンマスターを倒したとしても、繋がるのは地上へのワープゲートだけだ。

 だが今回の相手はケルベロス。

 普段のマスターと違い、封印されているゼイトスに関係しているのだろう。

「ケイド?」

「ん?あぁそれじゃ行くか……あれ?」

 俺が振り向いた先にいるはずのリムがいない。

 いや、厳密には大人となっているリムはいなかった。

 代わりにいつものリムの姿でそこにいた。

「えへへ。疲れちゃったの!ケイドおんぶして?」

「ったく。ほら、おいで」

 俺がしゃがんで背中を見せるとリムが乗ってくる。

 まだまだ子供だ。可愛い盛りでもある。

 今回のケルベロスとの戦闘はかなり激しかった。

 リムも身体強化や大技を繰り出していたのでその反動だろう。

 俺も少しばかり疲れている。

「しゅっぱつしんこー!」

「へいへい。痛いから頭を叩かないでな?」

 リムに頭をペチペチされながら、俺は階段を下に降りていった。
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