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プロローグ
第6話:信じられるものと信じたいものは別物だ。信じられたから信じたんだ。
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俺は気がつくと柔らかいベッドの上にいることに気付いた。
……いやおかしい。
さっきまで俺は地面に突っ伏してたはずだ。
両腕と腹を見ると治療した後まである。
なんだここは。どこだ?
周りを見ると明るい。
蝋燭の炎か?ランタンに火が灯っており、周囲も明るく照らしている。
俺は死んだのか?
死んだにしては待遇が違う気がするが……。
少し呆けていると部屋のドアが開いた。
そこから8歳ぐらいの小さい子がタオルを持って入ってきた。
俺を見ると驚いた顔をし、そのままドアから逃げていく。
いや逃げたいのは俺なんですが……。
だがもしかしたら俺は助かったのだろうか。
「ふぉっふぉっふぉ。目覚めたかね?」
60代ぐらいだろうか。
白髪のお爺さんがドアから入ってきた。
その足元にはあの小さい子もいる。
「えっと、その、もしかして助けてーー」
「まずは封印を解いてくれてありがとうな」
お爺さんが椅子に座ると深々とお辞儀をしてきた。
いや何が何だかわからん。
俺なんかしたのか?
助けたって……封印?あ、あのデーモンのことか?
「いやー、別に何かした訳ではーー」
「そうじゃ。わしは魔王に封印され、あのデーモンに門番をされていたのじゃ」
なんだ?この洞窟には人の話を聞く奴はいないのか?
でもデーモンを倒したのを知ってるってことは、やっぱあの広間の奥なのかここ。
「それでここに何故俺がーー」
「そうじゃ。あの広間の奥にわしがーー」
「最後まで喋らせて!?」
思わず大声で突っ込んでしまった。
だが不思議と体は痛くない。
俺はあのデーモンにこっぴどくやられてたが……。
「ふむ、焦ったようじゃな。動けるなら向こうの客間で話そうじゃないか。リム、客人を頼んだぞ」
「あい!」
小さい子が可愛く手をおでこにあてて敬礼している。
どうやらこの子が俺を手当てしてくれたらしい。
可愛いじゃないか。
「ふぉっふぉっふぉ。……手を出すなよ?」
「そんなことしねーよ!」
リムがその言葉を聞いて少し軽蔑していそうな目で見てきた。
いやいやいや、本当にそんな趣味はありませんよ?
そのままベッドから降り立つと、少しふらつきはしたが歩くことに問題はなかった。
客間と呼ばれた場所にリムと手を繋いで向かうと、先ほどの老人がお茶を用意している。
いい匂いが部屋に充満していた。
「若いのは名前をなんという?」
若いの!?
この歳になって若いのなんて言われたの初めてだぞ!?
周りからはおっさんと呼ばれ続けてたが、ひさびさに若いなんて言われた。
ちょっと感動しちまうじゃねーか。
「おっちゃん、泣いてるの?」
泣いてなんかいねーよ?
大丈夫だ。泣いてなんか……ちょっとまて。
リムちゃん今なんて言った?
「えっと、俺はケイドって言うんだ。改めて助けてくれたことにお礼を言わせてほしい」
俺は深く頭を下げてお礼を言った。
ここまで動けるのも何か貴重な薬などを使ったのかもしれない。
あの傷じゃ普通生きてなくてもおかしくないからな。
「ふぉっふぉっふぉ。なぁに朝飯前じゃよ。あとお礼を言うならリムにもの?」
「あぁ。リムちゃん、ありがとうね」
「あいー!」
リムが恥ずかしそうに照れ笑いをしている。
……うん、そんな趣味はないがやはり可愛いじゃないか。
俺も自然と笑顔になった。
だが俺はここに来てどれくらい経っているのだろうか。
腹の減り具合からして1日ぐらいは経っててもおかしくなさそうだが……。
「ケイドが来てからすでに3日は経っておるよ」
「は?そんなに!?」
「そうじゃ。全然目を覚まさなくてのぉ。リムがしっかりと看病してたのじゃよ」
なんて優しい子だ。
俺はリムの頭に手を置き、ゆっくりと撫でながらまたお礼を言った。
いや、ちょっと待てよ?
俺の考え、このじーさんに筒抜けになってないか?
「ふぉっふぉっふぉ」
こりゃ絶対にバレてるわ。
となると、このじーさんは何者だ?
魔王に封印されていた?
心を読める?
間違いなく人外じゃねーのか?
「おじいさまはこの世界にいる八柱の1人です!」
リムがとんでもない事を言い始めた。
確かに聞いたことがある。
この世界には8人の神がいて、それを束ねている創造神もいる。
その8人の神は八柱と呼ばれ、それぞれが独立して世界を見守っていた。
しかし別の世界から魔王がやってきて、八柱を封印して創造神に挑もうとしている。
すでに何人かの柱が封印されていると。
「いやぁさすがに……ねぇ?」
信じられない。
元々この話を聞いたのは、その辺で酔い潰れそうになってたおっさんからだ。
さすがにあのおっさんの話を「はいそーですか」なんて鵜呑みにも出来ないだろう?
こんな話を他人にしても知らないと言われてたんだ。
そしてここまで壮大なことを言われても、俺がその封印を解いたと言われても、信じられるはずがない。
しかし、もしそれが本当なら俺はとんでもないことをしたんだ。
今後魔王から命を狙われてもおかしくない。
「ふぉっふぉっふぉ」
相変わらずじーさんは笑っているだけだ。
嘘か本当かもわからねぇ。
だがこのじーさんは間違いなく只者ではない。
「まぁなんにせよ、俺には関係ないな。そろそろ行かないとクエスト失敗になっちまう」
俺がそう言って席を立とうとした時、じーさんが鋭い目で俺を見てきた。
なんだ。俺の何を見ているんだ?
「ケイドよ。お主は今迷っておるな?」
なんだよ。深層心理の底まで見えるのか?
その目はもう全部知ってるんだろう?
……そうだよ。俺にはなんの目的もねぇ。
このまま死ぬ運命でしかねーよ。
「そうじゃな。助けてくれた礼ではないが、今の力の使い方を教えてやろうか」
力の使い方?なんだそれは。
「よっと」
じーさんが何か取り出した。
水晶玉か?
それを俺に手渡してくると、胸の前で持つように言われた。
「ふむ……ほぉぉぉぉ」
じーさんが手を掲げると魔力が流れてきた。
暖かい。
敵意も悪意もない魔力が俺を包んでいる。
本当に神かもしれないな、こんな暖かい魔力は初めてだ。
「ふむ。お主、最近自分の心と体がついて行かないことがなかったか?」
あったな。
なんつーか、走ろうとすると体が前に行きすぎたりする。
表しにくいけど、自分が考えてる以上に肉体に限界が来てそうなんだよな。
「ふむ。そして嫌な予感などではっきりと場面が見えたりはしないか?」
それもある。
あのデーモンとの戦闘前にも見えたぐらいだ。
ただの嫌な予感だとしか思わなかったが、それが何かあるのか?
「そして割れるほどの頭痛を経験したことは?」
それもある。
なんだ、じーさんは俺の何を見ているんだ?
じーさんが俺から水晶を取り上げるとそれをしまった。
俺の顔をじっと見つめると、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「お主の体は人間の限界を超えて成長しておる。限界を突破したことにより固有能力も存在しておるのじゃ」
「は?」
おいおいなんだよそれ。
俺の剣の腕なんてクソみたいなものだし、限界を超えてるなんて信じられねーぞ?
いやまてよ?でもあのデーモンを一撃で倒したのがその限界突破によるものか?
「ふむ。気付いておるが使い方がなっておらんのか。どれ、わしが修行をつけてやろう」
「ほ、本当か!?」
俺は強くなれるのか?
もう負い目を感じなくて済むのか?
俺は……俺はまだまだ強くなれるのか?
「ふぉっふぉっふぉ。焦るでない。わしの修行はちーとばかしキツイがついてこれるかの?」
「もちろんです!絶対にやりきりますよ!」
願っても無い。
じーさんが何者かはわからんが、強くなれるならそれに乗るまでだ。
リムが俺がここに残ることを聞くと嬉しそうに抱きついてきた。
なんだこの可愛さは。
「ふぉっふぉっふぉ。んじゃ早速リムと手合わせじゃ。まずはどこまで動けるか知りたいからの」
じーさんがリムを連れて外に出て行く。
いや待て、リムと手合わせ?
大人と子供だぞ?
俺は疑問を浮かべながら付いて行った。
◇
「なんだよこれ!!」
思わず叫んでしまった。
家の外はまるで洞窟などなかったかのように広い。
いやむしろ洞窟なんかじゃない。
空は青々しく晴れており、光に満ちているのだ。
「ふぉっふぉっふぉ。亜空間じゃよ。修行にはもってこいの場所じゃ」
なんだよほんとこのじーさん。
マジで神なんじゃねーか?
周りを見回すとリムが準備運動をしている。
本当に俺とやるらしい。
「大丈夫じゃよ。お主ではまず勝てぬよ」
嬉しそうにじーさんが笑ってやがる。
そいじゃ遠慮なく行かせてもらうとするかな?
「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
リムが丁寧にお辞儀をしてきた。
俺もそれに釣られて頭を下げると、リムの姿はもうなかった。
「は?……いでぇ!」
思いっきりぶん殴られた。
不意打ちかよ!
デーモンに殴られたぐらい痛かったぞ!
「ふぉっふぉっふぉ」
じーさんは笑いっぱなしかよ。
ちくしょう。今度はこっちの番だ。
「うおおおおお!!」
右でまっすぐ。
リムは微動だにしていない。
さすがに顔は可哀想だから、胸辺りを狙う。
しかし、当たる寸前にリムが消えた。
バキッ!
後頭部を蹴られた。
なんだ何が起きたんだ?
俺はさっきまでしっかりリムを見ていたんだ。
それが急に消えるなんて……。
「そこまでじゃ」
じーさんが止めた。
確かに俺じゃ無理だ。何にも出来ねぇ。
「予知眼も不発、体もスピードを出しきれておらぬ。これは長い修行になりそうじゃのぉ」
みっともなく倒れている俺にじーさんが話しかけてきた。
なんだよ予知眼って。
凄そうじゃねーか。
「ふぉっふぉっふぉ。明日からの修行、しっかりとついてこいよ?」
じーさんが今日一番の悪い笑みを見せてきた。
今後俺はどうなるんだろうな……。
……いやおかしい。
さっきまで俺は地面に突っ伏してたはずだ。
両腕と腹を見ると治療した後まである。
なんだここは。どこだ?
周りを見ると明るい。
蝋燭の炎か?ランタンに火が灯っており、周囲も明るく照らしている。
俺は死んだのか?
死んだにしては待遇が違う気がするが……。
少し呆けていると部屋のドアが開いた。
そこから8歳ぐらいの小さい子がタオルを持って入ってきた。
俺を見ると驚いた顔をし、そのままドアから逃げていく。
いや逃げたいのは俺なんですが……。
だがもしかしたら俺は助かったのだろうか。
「ふぉっふぉっふぉ。目覚めたかね?」
60代ぐらいだろうか。
白髪のお爺さんがドアから入ってきた。
その足元にはあの小さい子もいる。
「えっと、その、もしかして助けてーー」
「まずは封印を解いてくれてありがとうな」
お爺さんが椅子に座ると深々とお辞儀をしてきた。
いや何が何だかわからん。
俺なんかしたのか?
助けたって……封印?あ、あのデーモンのことか?
「いやー、別に何かした訳ではーー」
「そうじゃ。わしは魔王に封印され、あのデーモンに門番をされていたのじゃ」
なんだ?この洞窟には人の話を聞く奴はいないのか?
でもデーモンを倒したのを知ってるってことは、やっぱあの広間の奥なのかここ。
「それでここに何故俺がーー」
「そうじゃ。あの広間の奥にわしがーー」
「最後まで喋らせて!?」
思わず大声で突っ込んでしまった。
だが不思議と体は痛くない。
俺はあのデーモンにこっぴどくやられてたが……。
「ふむ、焦ったようじゃな。動けるなら向こうの客間で話そうじゃないか。リム、客人を頼んだぞ」
「あい!」
小さい子が可愛く手をおでこにあてて敬礼している。
どうやらこの子が俺を手当てしてくれたらしい。
可愛いじゃないか。
「ふぉっふぉっふぉ。……手を出すなよ?」
「そんなことしねーよ!」
リムがその言葉を聞いて少し軽蔑していそうな目で見てきた。
いやいやいや、本当にそんな趣味はありませんよ?
そのままベッドから降り立つと、少しふらつきはしたが歩くことに問題はなかった。
客間と呼ばれた場所にリムと手を繋いで向かうと、先ほどの老人がお茶を用意している。
いい匂いが部屋に充満していた。
「若いのは名前をなんという?」
若いの!?
この歳になって若いのなんて言われたの初めてだぞ!?
周りからはおっさんと呼ばれ続けてたが、ひさびさに若いなんて言われた。
ちょっと感動しちまうじゃねーか。
「おっちゃん、泣いてるの?」
泣いてなんかいねーよ?
大丈夫だ。泣いてなんか……ちょっとまて。
リムちゃん今なんて言った?
「えっと、俺はケイドって言うんだ。改めて助けてくれたことにお礼を言わせてほしい」
俺は深く頭を下げてお礼を言った。
ここまで動けるのも何か貴重な薬などを使ったのかもしれない。
あの傷じゃ普通生きてなくてもおかしくないからな。
「ふぉっふぉっふぉ。なぁに朝飯前じゃよ。あとお礼を言うならリムにもの?」
「あぁ。リムちゃん、ありがとうね」
「あいー!」
リムが恥ずかしそうに照れ笑いをしている。
……うん、そんな趣味はないがやはり可愛いじゃないか。
俺も自然と笑顔になった。
だが俺はここに来てどれくらい経っているのだろうか。
腹の減り具合からして1日ぐらいは経っててもおかしくなさそうだが……。
「ケイドが来てからすでに3日は経っておるよ」
「は?そんなに!?」
「そうじゃ。全然目を覚まさなくてのぉ。リムがしっかりと看病してたのじゃよ」
なんて優しい子だ。
俺はリムの頭に手を置き、ゆっくりと撫でながらまたお礼を言った。
いや、ちょっと待てよ?
俺の考え、このじーさんに筒抜けになってないか?
「ふぉっふぉっふぉ」
こりゃ絶対にバレてるわ。
となると、このじーさんは何者だ?
魔王に封印されていた?
心を読める?
間違いなく人外じゃねーのか?
「おじいさまはこの世界にいる八柱の1人です!」
リムがとんでもない事を言い始めた。
確かに聞いたことがある。
この世界には8人の神がいて、それを束ねている創造神もいる。
その8人の神は八柱と呼ばれ、それぞれが独立して世界を見守っていた。
しかし別の世界から魔王がやってきて、八柱を封印して創造神に挑もうとしている。
すでに何人かの柱が封印されていると。
「いやぁさすがに……ねぇ?」
信じられない。
元々この話を聞いたのは、その辺で酔い潰れそうになってたおっさんからだ。
さすがにあのおっさんの話を「はいそーですか」なんて鵜呑みにも出来ないだろう?
こんな話を他人にしても知らないと言われてたんだ。
そしてここまで壮大なことを言われても、俺がその封印を解いたと言われても、信じられるはずがない。
しかし、もしそれが本当なら俺はとんでもないことをしたんだ。
今後魔王から命を狙われてもおかしくない。
「ふぉっふぉっふぉ」
相変わらずじーさんは笑っているだけだ。
嘘か本当かもわからねぇ。
だがこのじーさんは間違いなく只者ではない。
「まぁなんにせよ、俺には関係ないな。そろそろ行かないとクエスト失敗になっちまう」
俺がそう言って席を立とうとした時、じーさんが鋭い目で俺を見てきた。
なんだ。俺の何を見ているんだ?
「ケイドよ。お主は今迷っておるな?」
なんだよ。深層心理の底まで見えるのか?
その目はもう全部知ってるんだろう?
……そうだよ。俺にはなんの目的もねぇ。
このまま死ぬ運命でしかねーよ。
「そうじゃな。助けてくれた礼ではないが、今の力の使い方を教えてやろうか」
力の使い方?なんだそれは。
「よっと」
じーさんが何か取り出した。
水晶玉か?
それを俺に手渡してくると、胸の前で持つように言われた。
「ふむ……ほぉぉぉぉ」
じーさんが手を掲げると魔力が流れてきた。
暖かい。
敵意も悪意もない魔力が俺を包んでいる。
本当に神かもしれないな、こんな暖かい魔力は初めてだ。
「ふむ。お主、最近自分の心と体がついて行かないことがなかったか?」
あったな。
なんつーか、走ろうとすると体が前に行きすぎたりする。
表しにくいけど、自分が考えてる以上に肉体に限界が来てそうなんだよな。
「ふむ。そして嫌な予感などではっきりと場面が見えたりはしないか?」
それもある。
あのデーモンとの戦闘前にも見えたぐらいだ。
ただの嫌な予感だとしか思わなかったが、それが何かあるのか?
「そして割れるほどの頭痛を経験したことは?」
それもある。
なんだ、じーさんは俺の何を見ているんだ?
じーさんが俺から水晶を取り上げるとそれをしまった。
俺の顔をじっと見つめると、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「お主の体は人間の限界を超えて成長しておる。限界を突破したことにより固有能力も存在しておるのじゃ」
「は?」
おいおいなんだよそれ。
俺の剣の腕なんてクソみたいなものだし、限界を超えてるなんて信じられねーぞ?
いやまてよ?でもあのデーモンを一撃で倒したのがその限界突破によるものか?
「ふむ。気付いておるが使い方がなっておらんのか。どれ、わしが修行をつけてやろう」
「ほ、本当か!?」
俺は強くなれるのか?
もう負い目を感じなくて済むのか?
俺は……俺はまだまだ強くなれるのか?
「ふぉっふぉっふぉ。焦るでない。わしの修行はちーとばかしキツイがついてこれるかの?」
「もちろんです!絶対にやりきりますよ!」
願っても無い。
じーさんが何者かはわからんが、強くなれるならそれに乗るまでだ。
リムが俺がここに残ることを聞くと嬉しそうに抱きついてきた。
なんだこの可愛さは。
「ふぉっふぉっふぉ。んじゃ早速リムと手合わせじゃ。まずはどこまで動けるか知りたいからの」
じーさんがリムを連れて外に出て行く。
いや待て、リムと手合わせ?
大人と子供だぞ?
俺は疑問を浮かべながら付いて行った。
◇
「なんだよこれ!!」
思わず叫んでしまった。
家の外はまるで洞窟などなかったかのように広い。
いやむしろ洞窟なんかじゃない。
空は青々しく晴れており、光に満ちているのだ。
「ふぉっふぉっふぉ。亜空間じゃよ。修行にはもってこいの場所じゃ」
なんだよほんとこのじーさん。
マジで神なんじゃねーか?
周りを見回すとリムが準備運動をしている。
本当に俺とやるらしい。
「大丈夫じゃよ。お主ではまず勝てぬよ」
嬉しそうにじーさんが笑ってやがる。
そいじゃ遠慮なく行かせてもらうとするかな?
「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
リムが丁寧にお辞儀をしてきた。
俺もそれに釣られて頭を下げると、リムの姿はもうなかった。
「は?……いでぇ!」
思いっきりぶん殴られた。
不意打ちかよ!
デーモンに殴られたぐらい痛かったぞ!
「ふぉっふぉっふぉ」
じーさんは笑いっぱなしかよ。
ちくしょう。今度はこっちの番だ。
「うおおおおお!!」
右でまっすぐ。
リムは微動だにしていない。
さすがに顔は可哀想だから、胸辺りを狙う。
しかし、当たる寸前にリムが消えた。
バキッ!
後頭部を蹴られた。
なんだ何が起きたんだ?
俺はさっきまでしっかりリムを見ていたんだ。
それが急に消えるなんて……。
「そこまでじゃ」
じーさんが止めた。
確かに俺じゃ無理だ。何にも出来ねぇ。
「予知眼も不発、体もスピードを出しきれておらぬ。これは長い修行になりそうじゃのぉ」
みっともなく倒れている俺にじーさんが話しかけてきた。
なんだよ予知眼って。
凄そうじゃねーか。
「ふぉっふぉっふぉ。明日からの修行、しっかりとついてこいよ?」
じーさんが今日一番の悪い笑みを見せてきた。
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