自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり

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プロローグ

第1話:俺は敢えて1人になったんだ。孤独じゃねぇ!

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(今日も1日頑張るぞー!)

 気持ちのいい朝を迎えた。

 背伸びをすると、背骨と肩がパキパキとなっている。

 最近働き詰めだった弊害かな?


 俺の名前は『ケイド』。

 今は独り身だ。

 さらにおっさんと呼ばれる歳でもある。

 独り身でおっさん……まぁ人生の謳歌者だとでも思ってくれ。


 久々の独り身を満喫しようとこの街『ルーフ』まで来ている。

 なに?ただのぼっちだって?

 ……いやいや、俺の事を好きなベイビーは何人もいるかもしれないが、誰か1人を決めることなんて出来ない。

 別に『実際はいない』なんてことはないからな?な?


 まぁおっさんと呼ばれているのは歳もある。

 確かに顔は老け顔だ。だから昔の仲間には名前で呼ばれずに、ずっと「おっさん」って呼ばれてたから慣れたわ。

 誰に呼ばれようが問題はない。


 っと、幼女にぶつかってしまった。

 よそ見しながら歩いてた俺が悪いな。

「おっさんどこ見てんねん!気ぃつけろや!」

「……」

 だ、大丈夫だ。

 俺が悪かったんだ。うん、俺が悪い。

 あんな可憐な幼女におっさんって呼ばれたから傷付くとかない。

 うん、大丈夫だ。問題ない。


 い、いやー、独りはいいぞー!

 なんのしがらみもなく、なんでも出来るからな!

 今まではずっと雑用だったけどな、これからは俺の好きに生きるんだ!

 ……べ、別に泣いてねーし!

 寂しくねーし!


 え?なんで俺が独りかって?

 いやさー聞いてくれよ………



ーーーーーー



 俺は冒険者の中でも『SSS』ランクと最高位のパーティにいたんだ。

 世界一強いと言われるイケメン剣士『ザブラ』

 攻撃魔法を扱わせれば右に出る者がいない魔女『イコル』

 治癒魔法のスペシャリストで女神官『フレイ』

 ……な?二つ名だけでもかっこいいだろ?

 戦闘能力はピカイチだ。

 どんな魔物でも倒せるって最強のパーティだった。

 この世を恐怖で支配してる魔王なんかも倒せるだろう。

 もちろん依頼があれば……だがな。


 ん?俺か?

 ……俺はまぁあれだ。パーティのなんでも屋だ。

 全員の荷物を運ぶ大事な役割だ。

 どこに何を入れてたかも把握しなきゃなんねぇ。

 俺の荷物整理術はこの世で1位と自負してらぁ。

 そしてなんでも屋ってのはなんでも出来なきゃいけねぇ。

 ひたすら重い荷物背負ってどこまでも行ったし、何か入り用があればすぐに買いにも行った。

 全員の洗濯もしたし、料理もしたし、マッサージもしたし(イコルとフレイには拒否られてたが)、足手まといにならんように隠れてもいた。

 あ、隠れてたっつってもあれだぞ。

 逃げてただけじゃねーぞ?

 仲間が攻撃されそうになったり、危なかったりしたらちゃんと叫んでたからな!

 ほら、俺は慎重な男だからわかっちゃうんだよね。

 危険信号を本能で察する的な?

 だから俺のおかげで窮地も脱出してたね。

 そしてアイテムってのも大事だからな!

 ポーションなんかもすぐ取り出して、投げて渡してた。

 どこにいようとしっかり投げ渡してたからな!

 まぁ俺のサポート能力は世界一だろうな。


 そんな大事なポジション……パーティの要でもある俺だ。

 何年もこのメンツで過ごしてきた。

 俺がいなきゃこのパーティは成り立たねぇなんてさえ思ってたのさ。


 その日は雨が降ってた。

 打ち合わせまで俺は酒を飲んで、少し酔ってたのはある。

 ザブラ達3人の泊まる部屋に俺も参加して、明日の打ち合わせをしてたんだ。

 あぁ俺の宿だけは別さ。

 あまり金を使いすぎてもいけねぇからな。

 メインの3人にはいい部屋に泊まってもらってたんだよ。


「明日は『コカトリスキング』の縄張りだ。イコルとフレイは後方からサポートで俺が前線を引き受ける。おっさんは……まぁ足引っ張らないでくれ」


 ザブラが明日の話を切り出した。

 俺がクエストを受けてきてザブラに話す。

 んでザブラがみんなに話して、どうするかを決めるんだ。

 あぁ俺のことは照れ隠しだ。

 いつも世話になってるとわかってるからうまく言えないんだろう。


「おっけー!っておっさん、そのニヤつき顔キモいからこっち見ないで」


 辛辣そうに見えるが、これはイコルの照れ隠しだ。

 いつも俺に強い言葉を使うってことは、俺の事を好きなのかもしれないな。

 イコルに隠れるように俺を見てるのがフレイだ。


「本当に……無理です」


 ……ま、まぁ彼女も一種の照れ隠しだ。

 その証拠にじっと俺を見てくる。

 汚い雑巾に向けるような目線に見えるが、そんな事はない。

 …そんな事はない。

 この3人は俺の事を信じてくれてるからな。

 ちょっと酔ってるからか目がしょぼしょぼしてくらぁ。


 その日はそれで解散して俺は宿に帰った。

 もちろん帰ってからもポーションのチェックだ。

 コカトリスの石化ブレス対策はバッチリ。

 これで抜かりはないだろう。

 石化対策用のポーションだが、石化した奴にぶつけて溶かすからガラスが脆い。

 扱いには細心の注意が必要なんだ。

 ま、俺にとってはまったく問題ないけどな。


 狭い部屋にいっぱいの荷物。

 この荷物量を俺が1人で運ぶ。

 毎度の事とはいえ、そろそろ腰もヤバくなりそうだ。



 俺は残った最後の一滴の酒を飲み干して眠りについた。
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