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第13話
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その後、ナツキの我儘により隼人は各種料理器具一式を錬成する事になった。その出来栄えに感心したボックスが、試しに何か作ってやるなどと言い出した時隼人は思わず溜息を吐いた。しかしナツキの無言のおねだりに屈し、隼人は言われるがままに食材を錬成する。それらを使い、ナツキが口頭でレシピを伝えながらボックスが作り上げたのはパンケーキだ。生クリームにチョコレート、オレンジにストロベリー。果物も砂糖も目一杯使われたそれを、隼人が錬成した机と椅子に座り4人で食べる。
「ん~」
ナツキは満足そうに頬を押え、ボックスは何やら考え事をしながら少しずつ食べている。フワフワとした食感、甘さを支える卵の風味。果物の酸味のアクセント。初めて作ったにしては完成度の高過ぎるパンケーキに、隼人はボックスと熱い握手を交わした。
「なぁ、紙とペン貰ってもいいか。忘れる前に書いときたくてよ」
そんな事を真剣な顔で言うボックスの真面目さに、隼人は首を傾げながら白紙の分厚い本とボールペンを錬成して渡した。
「ボックスさ、何で盗賊なんかしてた?」
「...良くある話しさ。騒乱で村が滅んじまって路頭に迷う、なんて話はよ。何処に行こうがコネが無きゃ仕事も無ぇからな」
「そっかー...」
「騒乱は魔力災害の中で1番身近。これもまだ収まってない」
「魔力災害か...。って事は何とかしなきゃだな」
「何言ってんだ。ありゃ人がどうにか出来るもんじゃねぇぞ」
少し暗い表情でそう言うボックスに目をやり、ナツキはボックスが貰った白紙の本から1ページ切り取った。それを見たボックスがペンを渡すと、ナツキはそこに幾何学模様や文字をビッシリ書き込んでいく。そしてそれを隼人に無言で見せた。
「あー...なるほど、そういう理屈。手段はあるけど国家事業になりそうだなぁ」
「本気で言ってんのか?」
「うん。騒乱の発生を抑止する事は出来るよ。ただ、結構デカい装置を結構な数用意して一定間隔で設置しなきゃならないから。国とか貴族が絡まないと無理かなぁ」
「目標。貴族を味方につける」
朗々と宣言したナツキを3人は見詰め、そして最初にボックスが両手を挙げた。
「分からん。取り敢えずメシは作ってやる。後はオマエらに任せる」
「う~ん...。味方につけるって、具体的には?」
「それはあるじの仕事」
「マジで...?」
暫し思案した隼人は、机を叩くと勢い良く立ち上がった。
「ここで考えても仕方ない! 取り敢えず街に行こう!」
「りょ」
「グガァ」
「それで良いのかよ...」
隼人は食べ終わった食器を全員分集めると魔術で洗浄し、机や椅子諸共全て亜空間に収納した。そしてピーコックに乗り込み、ナツキ達も後に続く。
「いざ...。なんだっけ?」
「崖の街〈クリフェスト〉な。分かれ道を左だ」
「よし! いざ、クリフェスタへ!」
「クリフェストな」
「ん~」
ナツキは満足そうに頬を押え、ボックスは何やら考え事をしながら少しずつ食べている。フワフワとした食感、甘さを支える卵の風味。果物の酸味のアクセント。初めて作ったにしては完成度の高過ぎるパンケーキに、隼人はボックスと熱い握手を交わした。
「なぁ、紙とペン貰ってもいいか。忘れる前に書いときたくてよ」
そんな事を真剣な顔で言うボックスの真面目さに、隼人は首を傾げながら白紙の分厚い本とボールペンを錬成して渡した。
「ボックスさ、何で盗賊なんかしてた?」
「...良くある話しさ。騒乱で村が滅んじまって路頭に迷う、なんて話はよ。何処に行こうがコネが無きゃ仕事も無ぇからな」
「そっかー...」
「騒乱は魔力災害の中で1番身近。これもまだ収まってない」
「魔力災害か...。って事は何とかしなきゃだな」
「何言ってんだ。ありゃ人がどうにか出来るもんじゃねぇぞ」
少し暗い表情でそう言うボックスに目をやり、ナツキはボックスが貰った白紙の本から1ページ切り取った。それを見たボックスがペンを渡すと、ナツキはそこに幾何学模様や文字をビッシリ書き込んでいく。そしてそれを隼人に無言で見せた。
「あー...なるほど、そういう理屈。手段はあるけど国家事業になりそうだなぁ」
「本気で言ってんのか?」
「うん。騒乱の発生を抑止する事は出来るよ。ただ、結構デカい装置を結構な数用意して一定間隔で設置しなきゃならないから。国とか貴族が絡まないと無理かなぁ」
「目標。貴族を味方につける」
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「分からん。取り敢えずメシは作ってやる。後はオマエらに任せる」
「う~ん...。味方につけるって、具体的には?」
「それはあるじの仕事」
「マジで...?」
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「ここで考えても仕方ない! 取り敢えず街に行こう!」
「りょ」
「グガァ」
「それで良いのかよ...」
隼人は食べ終わった食器を全員分集めると魔術で洗浄し、机や椅子諸共全て亜空間に収納した。そしてピーコックに乗り込み、ナツキ達も後に続く。
「いざ...。なんだっけ?」
「崖の街〈クリフェスト〉な。分かれ道を左だ」
「よし! いざ、クリフェスタへ!」
「クリフェストな」
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