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この時間からなら急げば最短でティータイムに間に合うかどうか、といったところだが、あくまで「最短」だ。

このままなら早くて明日の朝食…果たしてそれは「急ぎ」と言えるだろうか。

それは彼女の助けになるのだろうか。

答えは否だ。

ならばどうすべきか。

半分答えは出つつ尚も考え続けるアメリィにエレナが「はい!」と手を挙げた。

「はい、エレナさん」

「今から行くってのはどうでしょうか?!」

「今から??」

「うん、今から。だってどうせ暇でしょ?」

と、エレナはあえて空気を読まずに笑いながら提案した。

別に本気でそんな事をするつもりはない。

姉があまりにも深刻に悩むものだから和ませようと言ってみただけだった。

のだが。

「…アリかもしれない」

姉の意外な返事に「なんちゃって」と続くはずだった言葉は飲み込まれ、代わりに「へ?」という間抜けな単語にもならない音が出た。

「エレナ支度して。馬車の用意も」

言うが早いかアメリィは隣の衣装部屋へ続く扉を開け、訪問着を物色し始めた。

「な、え、ちょっと待って姉様、冗談でしょ?ホントに行くの?」

「エレナが言ったのに」

「冗談のつもりなんだけど?!」

「私は本気」

「えぇぇぇ…何かまた変なスイッチ入ってる~」

エレナは脱力してソファに沈みこんだ。

頑固な姉はもう何を言っても聞かないだろう。

覚悟を決めて怒られるしかない。

「リリ姐は大丈夫でも父様はどうするの?良い感じの言い訳、考えてる?」

「リリ姐のピンチって言えば良い」

「それで納得するとは思えないんだけど…」

「多分リリ姐が何とかしてくれる。『公爵夫人』が一緒なら父様もお説教なんて出来ない」

「それはまた大胆な…姉様たまにこういう事するよね」

「格好良い?」

「きゃーステキーカッコイー…って遊んでる場合じゃない!私も支度しなきゃ」

パッと立ち上がりエレナは慌ただしく出ていった。

リリサはアメリィとの面会を望んでいるようだが、当然のようにエレナも行くつもりでいる。

それはアメリィも、おそらくリリサもそう思っているだろう。

特別仲良しという事もないけれど、リリサと会う時は必ず二人一緒だった。

「一人で」と言われない限りは共に行くのが常だ。

今回も特に何も言われていないので大丈夫だろう。
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