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第1章
政略結婚
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「え?」
ナタリーは驚いて声を上げた。
紅茶がテーブルにこぼれる。
「今週末に急遽、おまえの結婚式を上げることになった。」
彼女は大きな目をみはって父親を見つめた。
ナタリーは昨日16歳の誕生日を迎えたばかりだ。
今まで箱入り娘として育てられ、美少女でありながらも恋人さえいたことがない。
そんな彼女に、この知らせの衝撃は大きすぎた。
名こそ出さないが、結婚相手はわかりきっている。
きっとロイ・ハーギストンのことだ。
彼は王族の血をひく名門貴族の3男でナタリーの婚約者。
そして…。
みるみる曇っていくの娘の表情に、父も少し申し訳なさそうな顔をした。
「なんでもあちらの事情で、すぐにでも結婚したいらしい。だからせめてナタリーの誕生日まで待ってもらっていたんだ。」
そう、二人が結婚するのは2年後、彼女が成人してからのはずだった。
恋愛結婚の流行っている今、結婚年齢は20代が当たり前だ。
学校を卒業してまもなく結婚すると好奇の目にさらされるのは一目瞭然だった。
「どうして?教えてくれたら、考えるわ。」
父は無言で肩をすくめる。
彼がこの表情をしているときに意見を変えさせるのはほぼ無理だ。
しかしここで諦めると本当に結婚させられてしまう。
ナタリーはなおも食い下がった。
「教えてくれないのなら、結婚なんてしないわ。」
「ナタリー。」
彼はなだめるように話す。
「ロイ君は申し分ない、いやむしろ最高の相手じゃないか。ハーギストン家に生まれて眉目秀麗、それなのに気取らず紳士的だと有名だ。」
確かに彼は気取らないことで有名だったー女性関係においても。
一流大学を首席で卒業したとたんに堕落し、親の財力と持って生まれた美貌で遊び暮らす毎日。
泣かせた女性は星の数にも上るという。
それでもなお飽き足らず、ナタリーと結婚しようというのだ。
確かにハーギストンのような名家としがない地方貴族のトレロン家が婚約を取り付けられたのは奇跡のようだった。
それでも…
「私はあんな男との政略結婚じゃなくて、好きな人と結ばれた末に結婚をしたいの。」
「ナタリー、せめて式は豪華にするつもりだ。ドレスも好きなものを頼んでいい。友達もたくさん招待したらどうだ?」
どう言っても取り合ってくれない父に、ナタリーはいらいらし始めた。
「そういうことじゃないの!」
ナタリーは涙目で叫んだ。
どうしようもないのが、たまらなく悔しい。
「お父様なら分かってくれると思ったのに!」
断れないとはいえ、彼も結局はこの結婚を喜んでいるのだ。
彼女はカップが堕ちるのも構わず、乱暴に立ち上がって部屋を出た。
ドアを閉じた瞬間、ガシャン!っと何かの割れる音がする。
それも気づかないふりをして、ナタリーは階段を駆け上がった。
ナタリーは驚いて声を上げた。
紅茶がテーブルにこぼれる。
「今週末に急遽、おまえの結婚式を上げることになった。」
彼女は大きな目をみはって父親を見つめた。
ナタリーは昨日16歳の誕生日を迎えたばかりだ。
今まで箱入り娘として育てられ、美少女でありながらも恋人さえいたことがない。
そんな彼女に、この知らせの衝撃は大きすぎた。
名こそ出さないが、結婚相手はわかりきっている。
きっとロイ・ハーギストンのことだ。
彼は王族の血をひく名門貴族の3男でナタリーの婚約者。
そして…。
みるみる曇っていくの娘の表情に、父も少し申し訳なさそうな顔をした。
「なんでもあちらの事情で、すぐにでも結婚したいらしい。だからせめてナタリーの誕生日まで待ってもらっていたんだ。」
そう、二人が結婚するのは2年後、彼女が成人してからのはずだった。
恋愛結婚の流行っている今、結婚年齢は20代が当たり前だ。
学校を卒業してまもなく結婚すると好奇の目にさらされるのは一目瞭然だった。
「どうして?教えてくれたら、考えるわ。」
父は無言で肩をすくめる。
彼がこの表情をしているときに意見を変えさせるのはほぼ無理だ。
しかしここで諦めると本当に結婚させられてしまう。
ナタリーはなおも食い下がった。
「教えてくれないのなら、結婚なんてしないわ。」
「ナタリー。」
彼はなだめるように話す。
「ロイ君は申し分ない、いやむしろ最高の相手じゃないか。ハーギストン家に生まれて眉目秀麗、それなのに気取らず紳士的だと有名だ。」
確かに彼は気取らないことで有名だったー女性関係においても。
一流大学を首席で卒業したとたんに堕落し、親の財力と持って生まれた美貌で遊び暮らす毎日。
泣かせた女性は星の数にも上るという。
それでもなお飽き足らず、ナタリーと結婚しようというのだ。
確かにハーギストンのような名家としがない地方貴族のトレロン家が婚約を取り付けられたのは奇跡のようだった。
それでも…
「私はあんな男との政略結婚じゃなくて、好きな人と結ばれた末に結婚をしたいの。」
「ナタリー、せめて式は豪華にするつもりだ。ドレスも好きなものを頼んでいい。友達もたくさん招待したらどうだ?」
どう言っても取り合ってくれない父に、ナタリーはいらいらし始めた。
「そういうことじゃないの!」
ナタリーは涙目で叫んだ。
どうしようもないのが、たまらなく悔しい。
「お父様なら分かってくれると思ったのに!」
断れないとはいえ、彼も結局はこの結婚を喜んでいるのだ。
彼女はカップが堕ちるのも構わず、乱暴に立ち上がって部屋を出た。
ドアを閉じた瞬間、ガシャン!っと何かの割れる音がする。
それも気づかないふりをして、ナタリーは階段を駆け上がった。
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