腐っている侍女

桃井すもも

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腐侍女の土産

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私の腐った侍女としての職歴は決して長いものではございません。

しかしながら、短いと云う訳でもございません。

なのに、出来過ぎ上司による身だしなみチェックが未だ厳しいのは何故でしょう。

後れ毛も、ほつれ毛もございません。

まじまじと何気を装い、髪とか耳とか首元とか。そんなにご覧になられても何も付いてはおりませんよ!

あちこち視線で検分されるのは大変居心地の悪いものです。
パワー・ハラスメントは人事部に訴えますよ。
あの舐める様な視線は、はっ、もしやセクシャル・ハラスメント?!
同族嫌悪~!

いや、それは無い無い、そんな腐った事など無い、などと思いながら本日はお休みです。

以前渋られた有給消化も、現在では非常に取りやすくなっております。

本日私は実家に戻っております。
久しぶりにお母様とお茶を楽しんでいるのです。

「素敵な首飾りね。」
「ええ、時間外労働の対価として頂戴したのです。」
「そう。」
事実をありのままお話ししたのですが、お母様が目を細めてご覧になります。

「そう云えば、今年はワインの出来が良さそうよ。」
「まあ、本当ですか?」
「ええ、貴女も見てくると良いわ。」

領地の産業は大切な生業です。
これは早速ヒューバート様にご相談してお休みを頂かねば。

お休みの日に更なるお休みの申請について考えるというなかなかに腐ったお休みを過ごしたのでございます。流石、腐海の住人。

「君の領地?」
「はい。産業の様子を確かめたいと思いまして。」
「日数は?」
「一週間程、「長いな」
被せられてしまいました。鬼畜め、しね。

「では五日ではどうでしょう(くそぅ)」

腐った涙を嚥んで、漸く了承を頂戴出来たのです。

王都から領地まで片道二日、往復の行程だけでお休みの八割を要します。
ゆっくり視察をしたいところですが、先ずはお母様の仰られたワインの出来を確かめて、それからお土産を選びました。


「日に焼けてないか?」

乙女に何たる言い草。鬼畜、以下同文。

ええ、仰る通りです。
貴方様が有給にけちけちとケチを付けたので、わたくし、馬を駆けました。

ええ、馬車ではございません。
愛馬メリーに乗って単騎で行って参りました。
お蔭様ですっかりこんがり焼けたのですよ!

恨みがましい視線を向けてお土産をお渡し致します。

殿下には、殿下のお生まれになった年のワインと今年の新酒(特級畑産)を。

殿下の生まれ年のワイン。
勿論私も同じワインをコレクションしております。人生80年ですから80本所有しております。

ヒューバート様の誕生日なんて、そんなものは知りませんので、今年の新酒(並)のみですね。

殿下と直接お言葉を交わすなど畏れ多いことですので、これは殿下、これはヒューバート様と、纏めてヒューバート様に押し付けました。

何でしょうね、若干の不服顔。







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