王妃の手習い

桃井すもも

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帰国

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それから程なくして、オフィーリアは帝国を立った。

アンドリューに伴われての帰路であった。

首に縄を掛けられる事はなかったけれど、腕に囲われる事はあった。

帰路には、陸路に加えて海路を利用した。
「王太子一行の海洋の旅」はオールブランス一族が担った。

碧い海を渡り、港に泊まる。そうして陸路に切り替えて、そこから王都まで進んだ。

大回りの経路を経て、途中経由する貴族領では婚姻式を控えた王太子夫妻として領民の前に現れた。

当然、オールブランス侯爵領も経由した。

そうして王国内の主要な領地を周り、たっぷり三月程を掛けて王都に戻った。

一先ず王都に戻ってから改めては?というオフィーリアの疑問に、
「君は直に動けなくなるから。」とアンドリューは答えた。 

王都に戻ると間を置かずに婚儀が執り行われた。
それから程なくしてオフィーリアは懐妊する。

オフィーリアは動けなくなった。


********


オフィーリアの体調が安定した頃、他国ㇸ嫁いでいたマーガレットが帰国した。

現在は公爵夫人であるマーガレットは、一昨年女児を出産している。
此度は婚姻以来初めての里帰りであった。


「初めから貴女しか見ていなかったわ。」

「貴女を願ったのはアンドリューよ。」

「貴女、ずっと狙われていたのよ。」

「皆、気付いていたわ。知らなかったのは貴女だけよ。」


久しぶりのお茶の席で、次々に落とされる爆弾発言に、オフィーリアは理解が及ばなくなった。


「でも、真実、望んでいたのは王家でしょう。貴女が産まれた時に、王家は、貴女に目を付けていた筈よ。」

「傾聴の一族に姫が産まれたのですもの。」


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