王妃の手習い

桃井すもも

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本心2

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「残念ながら、オフィーリア。」

オフィーリアの本心からの告白を聞き終えて、アンドリューは口を開いた。


「君の気持ちは十分解かった。」
だがしかし、と続く。

「私の気持ちには到底及ばないよ。」

アンドリューの言葉は続く。

「甘く見てもらってはいけないね。」

「僕の本心を知ったなら、君はきっと逃げ出すだろう。」
一人称が変わる。

「そうして、二度と手に入らない。」


「それくらい、僕の想いは重いんだよ。」


おもいおもいの連語で少し戸惑ったが、オフィーリアは何だか悔しくなった。

心を決めて、胸の内の全てを伝えた。
一世一代の大告白をした。
それなのに、このひとは、それを軽いと云う。自分の想いに比べて軽いと云う。

そうならば、
「殿下のお気持ち、承知致しました。ですが私の気持ちは殿下には届き切ってはいなかったようです。」
でしたらば、とオフィーリアは続ける。

「文をお書き致します。」




********



侍女の控えの部屋を借りて、オフィーリアは文を書いた。

あれこれ考えても仕方がないので、取り敢えず箇条書きにする事とした。

アンドリューの好きなところをひとつずつ書いてゆく。

書き出してみたら思った以上に多くて、自分でも驚いた。

私、こんなにも殿下をお慕いしていたのだわ。

余りに多くなりそうで、紙面も足りなくなりそうで、最後はエイヤッと全部纏めることにした。



********



「殿下、今日は夜も更けました。文は明朝お読みになって下さいませ。」


文を書き終えたオフィーリアがそう言うと、
「殿下はお仕事の手が速うございます。明朝までお待ちになれないでしょうから、私が一旦お預かり致しましょう。」
と、侍従が文を預かってくれた。


アンドリューは苦い物を飲み込んだ様な渋顔をした。
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