王妃の手習い

桃井すもも

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告白1

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この瞬間をオフィーリアは生涯忘れることはないだろう。


アンドリューがオフィーリアに向き合って居住まいを正した。

その瞬間、
室内は完全なる「無」となった。

侍従も侍女も護衛達も、その存在を瞬時に掻き消した。

まるでそれは、元よりこの部屋にはアンドリューとオフィーリアのただ二人しかいなかった様に。

素晴らしい!王宮の方々!

流石だわと、感動するオフィーリア。
私、この日のことを生涯忘れない自信があるわ。


「んんっ」
オフィーリアの集中力が逸れたのを察したらしいアンドリューの咳払いで、いけないいけないとオフィーリアは現実に戻る。

素晴らしい王宮の面々が気配を消すという大仕事をしてくれている。

これから殿下が話すことを、私は受け止めなくてはならない。

喩えそれがどんな事であろうとも。


「オフィーリア」
アンドリューの瞳に自分が映っている。

「君には申し訳ないが、」と小さく一息入れたアンドリューが

「君には私の贄になって貰う。」
オフィーリアを見つめて言った。

殿下、その様な事、初めから覚悟の上です。
私は、貴方が治める国が、貴方の治制の元で安寧であることを、心から願っているのですから。

オフィーリアには既に覚悟が決まっていた。

どんな形であれアンドリューの為になるのなら、どんな役割でも担おうと。

真っ直ぐにアンドリューを見つめる。

アンドリューの瞳の中の自分は、微笑んでいる。大丈夫。


「不器用...」


不意に発せられた微かな声音。
え?と反射的に声の元を見やると、

それは、
気配を消していたはずの侍女であった。





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