王妃の手習い

桃井すもも

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アンドリューの瞳1

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王太子の帝国視察は、滞り無く進んだ。

王太子の、と云うのは名ばかりの、オフィーリア有りきの視察であった。

そんな事は誰の目から見ても確かなのだが、誰もそんな事は一言だって漏らしはしない。

出来た部下達であった。


どの地に於いてもアンドリューは、これは美しいだろう、あれは楽しいのだよと、過去に自身が感銘を受けたり驚きを感じた物事を、オフィーリアに追体験させてくれた。


君に見せたいと思ったんだ。


学園の物品庫で囁いた言葉は、アンドリューの真からの言葉なのだろう。

自分が知らないアンドリューが次々と現れて、オフィーリアは困惑した。

聡明で美しいアンドリュー。将来賢王となることは間違い無い。

彼は飄々と掴みどころが無く、オフィーリアの手に追えるような人間ではない。

そんなアンドリューにも学びの時代があった。
美しい物事に心を震わせたり、驚きに目を見張ったり。

もっと前には、あどけない少年の時代もあったのだ。

そんな当たり前の事に思い至ると、自身の体験をオフィーリアにも教えたかったというアンドリューの言葉が思い起こされて、オフィーリアは何かくすぐったい様な気持ちになった。

そうして、自分でも気付かぬ内に、アンドリューの滞在出来るの残り日数を数えるためにカレンダーに指を這わせていた。
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