王妃の手習い

桃井すもも

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侯爵の報告

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それからアンドリューは、何事も無かったかのように颯爽と去って行った。

「また明日。」と、不穏な予告を残して。


「あー、大丈夫だったかな?オフィーリア嬢。」

白々しい心配顔を見せながらウォルポール侯爵が問うて来るのを、

オフィーリアは、若干冷ややかな視線で返す。


その後の説明によると、王太子殿下の訪問は突然のものであった。

駐在大使であるウォルポール侯爵邸に、何の先触れもなされなかった。

母国では何が起こっているのか殿下に問うと、

万事滞り無しとの答えであった。

只々、オフィーリアとの面会を求められ、その後の事は、己が体験した通りである。

アンドリューはこの後、帝国女王陛下ヘ謁見の予定で、明日から帝国内の視察をなさる。

勿論、学園も。
何なら視察の1番目は学園である。

オフィーリアには全ての日程で帯同を願う。

アンドリューの婚約者として。


以上!と声が聴こえるような空気を孕んでウォルポール侯爵の報告は終わった。

オフィーリアの気力も終わった。


王太子殿下の婚約者として。

婚約者として。


王女の留学はどうなったの?

王女との婚約はどうなったの?


頭の中に大勢の???が犇めいて、目が回る感覚に襲われていると、ウォルポール侯爵夫人に、今日のところは邸内でゆっくり休んで頂戴と声を掛けられた。


仰る通りだわ。今日のところはもう休もう。

オフィーリアは思考をシャットダウンさせたのだった。
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