王妃の手習い

桃井すもも

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セシルへ2

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あれこれ迷いに迷った末、オフィーリアは10冊程の絵本を購入した。

幼児の為の書物であるのに、絵本は挿絵も美しくお話も楽しくて、オフィーリアの年齢であっても夢中で読み進んでしまう。

全ての絵本に目を通し終え、セシルは喜んでくれるかしらと思い浮かべるだけで、背中に翼があったのなら、今すぐにでも届けてあげたいのにと、そんな衝動に駆られる。

幼児向けに大きな文字で描かれた絵本。

眺めている内に、ひょっとしたらセシルはそろそろ文字を習い始めるのではないかと思い至った。

まして一年経てば4歳になる。そうなれば、幼児向けの簡単な絵本ならば自在に読めるであろう。

当然ながら、オフィーリアの購入した絵本は全て帝国語で書かれている。

であれば、母国語の訳を付けてあげたい。



翌日の放課後、オフィーリアは再び書店へ向かった。

例の書店は文具も豊富に置いている。
勿論インクも。

できうる限り、色とりどりのインクを選び購入した。

漆黒の闇色であったり、深い深い海の碧色であったり、瑞々しいチェリーのようなピンクレッドに、毛並みも艷やかな雄馬のダークブラウン。

そうして寮に戻ると、絵本を眺める。

眺めている内に、この挿絵にはこの色のインクが合うわとイメージが湧いてくる。

それからは、1ページ1ページ、挿絵に導かれながら思い思いのインクで文字を綴って行った。

帝国語の横に色彩も鮮やかに、流麗な母国語の文字が並ぶ。 

帝国の文字はカッチリとした堅い印象の字体である。それは、印刷されると静謐な印象を与えて書面に良く映える。

比べて母国語は、芸術豊かな国柄らしく、伸びやかな筆致の文体である。

特に、教育を受けた令嬢の綴る文字は殊更に美しく、文字自体が芸術作品の一部となる。

オフィーリアは耳も優れているが、美しい文字を書くことにも長けていた。

特に彼女の書く飾り文字は、その美しさには定評があった。
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