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王太子の婚約者3
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王太子の婚約者候補は4人であった。
年齢も王太子と同年齢を中心に、爵位も公爵家から伯爵家まで、正に国内貴族令嬢の釣り合いを鑑みたものと云える。
しかしながら、それは表向きの事で、実のところは婚約者はほぼ内定していると思われていた。
それは、王太子と血縁でもある公爵家令嬢で間違いないのだが、王家は、あくまでも広く国内から選りすぐった体を知らしめたかったのであろう。
王太子との会合は、4人全ての婚約者候補と共に行われた。
王太子妃教育も、其々の邸で同じ教師によって施される。
全ての婚約者候補に対し遜色無く、同等平等の扱いがなされた。
婚約者候補となり、オフィーリアは領地からタウンハウスへ移り住んだ。
そこで王太子妃教育を受け、王太子や他の候補者と同じ学園へ通う。
学園は国内に数箇所あり、当初は領地に程近い学園への入学を決めていた。
当主教育と学園での学びを同時に受ける筈であった。
それが、総領娘としての、次期侯爵当主としての人生は大きく変わり、己が外へ嫁ぐ身となる。
小さな弟は可愛く愛しい。喩えそれが自分の人生を変えたものであったとしても。
当主教育で培った知識は、何れ嫁ぐ先で活かせればよい。
「婚約者候補」としての身も仮初のもの。
オフィーリアは、何れこの馬鹿馬鹿しい身分から開放されると疑わなかった。
他の候補者も同じであったろう。
婚約者は内々では決まっているのだから。
********
月に一度、王太子と婚約者候補の茶会が開かれた。
王太子は其々の令嬢達に遜色無く話題を投げかける。
烟る金の髪に蒼い瞳の王太子。
聡明で穏やかな人柄の美しい王子である。
同じ色を纏った公爵令嬢は王太子とは従姉妹に当たる。
血筋も近ければ、人柄も気品も申し分のない高貴な美しい令嬢である。
王太子を中心に、その隣に公爵令嬢が座し、それを囲むように残りの候補者令嬢が座る。
始終穏やかに会話を振る王太子に令嬢達が応えるのだか、オフィーリアは元来の気質もあり聞き役に徹する事が多い。
金髪に蒼眼の王太子や令嬢達に囲まれて、地味な色合いの髪と瞳が更に目立たなさに拍車を掛けていた。
多忙な王太子が先に席を外すと、後は令嬢達のお茶会となる。
意外な事に、令嬢達の仲は良かった。
予定調和の形ばかりの候補者集めと皆が承知していた為か、候補者争いとは無縁であった。
公爵令嬢は王太子と同い年、オフィーリアの二つ上になる。
あとの2人は侯爵家と伯爵家の令嬢で、オフィーリアの二つ年下である。
美しく貴高い公爵令嬢を、オフィーリアは尊敬と敬愛の思いでみていた。
他の候補者令嬢も、心持ちが朗らかで気安い交流が出来た。
王太子抜きの茶会は、乙女のお喋りに花を咲かせられる憩いのひと時であった。
年齢も王太子と同年齢を中心に、爵位も公爵家から伯爵家まで、正に国内貴族令嬢の釣り合いを鑑みたものと云える。
しかしながら、それは表向きの事で、実のところは婚約者はほぼ内定していると思われていた。
それは、王太子と血縁でもある公爵家令嬢で間違いないのだが、王家は、あくまでも広く国内から選りすぐった体を知らしめたかったのであろう。
王太子との会合は、4人全ての婚約者候補と共に行われた。
王太子妃教育も、其々の邸で同じ教師によって施される。
全ての婚約者候補に対し遜色無く、同等平等の扱いがなされた。
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それが、総領娘としての、次期侯爵当主としての人生は大きく変わり、己が外へ嫁ぐ身となる。
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当主教育で培った知識は、何れ嫁ぐ先で活かせればよい。
「婚約者候補」としての身も仮初のもの。
オフィーリアは、何れこの馬鹿馬鹿しい身分から開放されると疑わなかった。
他の候補者も同じであったろう。
婚約者は内々では決まっているのだから。
********
月に一度、王太子と婚約者候補の茶会が開かれた。
王太子は其々の令嬢達に遜色無く話題を投げかける。
烟る金の髪に蒼い瞳の王太子。
聡明で穏やかな人柄の美しい王子である。
同じ色を纏った公爵令嬢は王太子とは従姉妹に当たる。
血筋も近ければ、人柄も気品も申し分のない高貴な美しい令嬢である。
王太子を中心に、その隣に公爵令嬢が座し、それを囲むように残りの候補者令嬢が座る。
始終穏やかに会話を振る王太子に令嬢達が応えるのだか、オフィーリアは元来の気質もあり聞き役に徹する事が多い。
金髪に蒼眼の王太子や令嬢達に囲まれて、地味な色合いの髪と瞳が更に目立たなさに拍車を掛けていた。
多忙な王太子が先に席を外すと、後は令嬢達のお茶会となる。
意外な事に、令嬢達の仲は良かった。
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公爵令嬢は王太子と同い年、オフィーリアの二つ上になる。
あとの2人は侯爵家と伯爵家の令嬢で、オフィーリアの二つ年下である。
美しく貴高い公爵令嬢を、オフィーリアは尊敬と敬愛の思いでみていた。
他の候補者令嬢も、心持ちが朗らかで気安い交流が出来た。
王太子抜きの茶会は、乙女のお喋りに花を咲かせられる憩いのひと時であった。
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