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不可解
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あのお二人の不穏な逢瀬、ええ、逢瀬なのに不穏な空気を感じた可怪しな出来事から少しして、不可解な出来事が増えました。
何故だか学園でトーマス様と出会う事が増えたのです。
入学してからも度々お姿を見かけましたが、それはどれもお一人ではなく、ご友人かマリアンネ様とご一緒でした。
そして、それらは大抵偶然目にするもので、トーマス様から私に故意に近づくと云う事は無かったのです。
それが、いつかの図書室前の通路で出会った時のように、度々トーマス様からお声が掛かるのです。
しかし、それもお声が掛けられると程なくマリアンネ様が後から現れるので、それが私は何とも不気味で面倒で、逃げるように、いえもう逃げ出す事にしたのです。
トーマス様が来る=マリアンネ様が付いていらっしゃるのですから、面倒事間違いありません。
大切なお話しがお有りなら、先触れを出して我が邸をお訪ね頂ければよいのです。両親との顔合わせを望んではいらっしゃらないのでしょうか、トーマス様は学園でのお話しをお望みのようなのです。
そんなこんなで、偶々廊下などでマリアンネ様とすれ違う度に、以前も感じたあの強い視線を受ける様になり、煩わしさに拍車が掛かるのでした。
お二人の間に何があったのか分かりません。
もしかしたら、私との婚約解消を避けようとするトーマス様からマリアンネ様に、何かお話しをされたのかもしれません。
そして多分それは、マリアンネ様にとっては許容し難い事なのでしょう。
先視で視た未来では、私とマリアンネ様が関わり合うことはありませんでした。
お互いにお互いをいないものとして、無視を決めておりました。
そうして、それはトーマス様が卒業された後の一年間も変わらなかったのです。
それが、マリアンネ様は婚礼の日にあの様な事を引き起こした。
先視での凶行を思い出して、私はすっかりマリアンネ様のことが恐ろしくなってしまいました。
婚約が解消されれば、私とトーマス様とのご縁は切れます。
トーマス様のお気持ちが固まるのを待っていては間に合わない、何か良くないことが起こりそうな予感に、私は父に相談をしたのです。
学園でのお二人のご様子と、意図的に現れるようになったトーマス様、それを追うマリアンネ様と、そのマリアンネ様から向けられる強い視線。
そのどれもが私に不安を覚えさせ、学園での生活にピリピリしたものを感じる様になったのです。
父は、私の話しを思いのほか重く受け止めた様でした。
学生である私達に対処仕切れない出来事が起こる、そんな空気を感じ取ったらしく、相談をした翌日には急を要する要件であるからと伯爵家を訪いました。
伯爵家でどの様な話し合いがなされたのか、私は聞かされませんでした。
以前申し入れた解消の話し合いは、未だ結果を見ずにおりました。
しかし、父はその日、婚約解消の合意を取り付けて来たのです。
伯爵ご夫妻は解消を受け入れて下さいました。
ただし、問題が一つ。
トーマス様ご本人がお認めにならなかったのです。
トーマス様は私との面会をお望みになりました。
あれ程学園でお声掛けをされたのです。
私はトーマス様とお会いする事に致しました。
これが、私とトーマス様とがお話し合いをする最後の機会なのだと思ったのです。
何故だか学園でトーマス様と出会う事が増えたのです。
入学してからも度々お姿を見かけましたが、それはどれもお一人ではなく、ご友人かマリアンネ様とご一緒でした。
そして、それらは大抵偶然目にするもので、トーマス様から私に故意に近づくと云う事は無かったのです。
それが、いつかの図書室前の通路で出会った時のように、度々トーマス様からお声が掛かるのです。
しかし、それもお声が掛けられると程なくマリアンネ様が後から現れるので、それが私は何とも不気味で面倒で、逃げるように、いえもう逃げ出す事にしたのです。
トーマス様が来る=マリアンネ様が付いていらっしゃるのですから、面倒事間違いありません。
大切なお話しがお有りなら、先触れを出して我が邸をお訪ね頂ければよいのです。両親との顔合わせを望んではいらっしゃらないのでしょうか、トーマス様は学園でのお話しをお望みのようなのです。
そんなこんなで、偶々廊下などでマリアンネ様とすれ違う度に、以前も感じたあの強い視線を受ける様になり、煩わしさに拍車が掛かるのでした。
お二人の間に何があったのか分かりません。
もしかしたら、私との婚約解消を避けようとするトーマス様からマリアンネ様に、何かお話しをされたのかもしれません。
そして多分それは、マリアンネ様にとっては許容し難い事なのでしょう。
先視で視た未来では、私とマリアンネ様が関わり合うことはありませんでした。
お互いにお互いをいないものとして、無視を決めておりました。
そうして、それはトーマス様が卒業された後の一年間も変わらなかったのです。
それが、マリアンネ様は婚礼の日にあの様な事を引き起こした。
先視での凶行を思い出して、私はすっかりマリアンネ様のことが恐ろしくなってしまいました。
婚約が解消されれば、私とトーマス様とのご縁は切れます。
トーマス様のお気持ちが固まるのを待っていては間に合わない、何か良くないことが起こりそうな予感に、私は父に相談をしたのです。
学園でのお二人のご様子と、意図的に現れるようになったトーマス様、それを追うマリアンネ様と、そのマリアンネ様から向けられる強い視線。
そのどれもが私に不安を覚えさせ、学園での生活にピリピリしたものを感じる様になったのです。
父は、私の話しを思いのほか重く受け止めた様でした。
学生である私達に対処仕切れない出来事が起こる、そんな空気を感じ取ったらしく、相談をした翌日には急を要する要件であるからと伯爵家を訪いました。
伯爵家でどの様な話し合いがなされたのか、私は聞かされませんでした。
以前申し入れた解消の話し合いは、未だ結果を見ずにおりました。
しかし、父はその日、婚約解消の合意を取り付けて来たのです。
伯爵ご夫妻は解消を受け入れて下さいました。
ただし、問題が一つ。
トーマス様ご本人がお認めにならなかったのです。
トーマス様は私との面会をお望みになりました。
あれ程学園でお声掛けをされたのです。
私はトーマス様とお会いする事に致しました。
これが、私とトーマス様とがお話し合いをする最後の機会なのだと思ったのです。
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