偶然なんてそんなもの

桃井すもも

文字の大きさ
上 下
3 / 3

思い違いは程々に

しおりを挟む
白金の癖のない真っ直ぐな髪。
 
薄紫に煌めく瞳。アメジストよりも綺麗な君の瞳。

すらりと伸びた白く靭やかな手足。
指先までほっそりと、触れたら壊れてしまいそうな君の肢体。

名前の通りに麗しい僕の婚約者、フルール(百合の花)。

聡明で賢明な君なのに、何でそんなに間が悪い。偶然?
あんな所にいるなんて。

人気の無い放課後の図書室の書架の陰。
よりによって、あの男と一緒だなんて。

僕以外の男に手を掴まれて、二人きりでベンチにいるなんて。

ちょっと君をどうにかしたくなってしまうよ。

よりによって、あの男と一緒に帰るだなんて。
家族?知るかそんな事。

「昨日君と帰れなかったから、ちょっと街歩きをしたんだよ。」

そう言って君の髪に触れる。
ついでに頬を何気を装い撫でてやる。

白金の艷やかな君の髪に、黒百合の髪飾りを着けてあげる。

「ああ、とても良く似合っている(僕の色を纏って)。」
食べちゃいたい。食べて良いかな?フルール。

白い肌が真っ赤に染まって、薄紫の瞳がうるうる潤む。

もう、このまま邸に戻ろうかな。学園なんて行かなくても良くないか?

甘い囁き?巷で人気?
良く解らないけど、どうやら君も僕のことを解っていないらしい。

君への想いは彼女が思うような気持ちではないよ。そんな温(ぬる)くて軽くて甘いものじゃあない。

はあぁ、好き、好き、大好き、全部好き。
悲しい位、君の事が好きだ。

だから、お別れはお手柔らかに等と巫山戯た言葉を取り消してくれないかな。

いつも僕が君を物陰から覗いているのを知っている?

君を愛してる。
君を幸せにする。

君を手放すなんて有り得ない。
君には僕だけで良いよね。僕じゃなくちゃ駄目だよね。

何処もかしこも真っ赤な君の手を取って、指先に口付ける。

白百合の君が益々赤く染まって、潤む瞳は泣きそうだ。もっともっと泣かせたい。

思い違いも程々にね。
次はないよ?君は僕だけのものなのだから。


               End


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】誠意を見せることのなかった彼

野村にれ
恋愛
婚約者を愛していた侯爵令嬢。しかし、結婚できないと婚約を白紙にされてしまう。 無気力になってしまった彼女は消えた。 婚約者だった伯爵令息は、新たな愛を見付けたとされるが、それは新たな愛なのか?

欲に負けた婚約者は代償を払う

京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。 そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。 「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」 気が付くと私はゼン先生の前にいた。 起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。 「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」

彼女は彼の運命の人

豆狸
恋愛
「デホタに謝ってくれ、エマ」 「なにをでしょう?」 「この数ヶ月、デホタに嫌がらせをしていたことだ」 「謝ってくだされば、アタシは恨んだりしません」 「デホタは優しいな」 「私がデホタ様に嫌がらせをしてたんですって。あなた、知っていた?」 「存じませんでしたが、それは不可能でしょう」

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

処理中です...