ヴィオレットの夢

桃井すもも

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継承3

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ヴィオレットはそれから腹の空(あ)かぬ間に、二人目を出産する。

公爵夫人は「妻の身体を思い遣れぬ、うつけ者」だとデイビッドを蔑んだ。
そうして、出産を終えたヴィオレットの手を握りご苦労だったわねと労った。

二人目は、男児であった。
デイビッドと同じ髪色と瞳を持った嫡子である。

ヴィオレットは、母の心情が少しだけ解る気がした。
後継を産み落として、肩の荷が降りるとはこういう気持ちなのか。

公爵家に連なる貴族家を纏めて、子々孫々血を受け継いでゆく。
それを担うのは、妻の腹だ。

側妃を選ぶ選択に迫られた、王太后の重圧を思い遣る。
そうして生まれた父王に託されたものが、どれほどに重かったことか。それを兄も背負って行く。

継承とは、人が人生を掛けて成すことなのだと思った。

これから我が子達にも、重いものを背負わせる。生まれながらに重荷を背負う我が子達に、そこにも自由は見いだせるのだと教えてあげたい。

それは、産み落とされた場所から芽を吹いて、燦々と輝く太陽の陽の光と恵みの慈雨をいっぱいに浴びて、匂い立つ花を咲かせたあとには甘い実を結ぶ、庭の花々樹木達とよく似ていると思った。


長子、女児はアイリス(菖蒲)と
嫡子、男児はアンソニー(花)と名付けられた。



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