アダムとイヴ

桃井すもも

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罪と罰3

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「イヴ。」

急に後ろから呼び止められて、反射的に振り返りました。

「どうして、」
「アダム様。」

この場で話し始めたアダム様を制します。

「何のご用でしょう。」
「その、婚約解..」

「お話し合いは終わっております。学園で無闇な事をお話にならない方が宜しいかと。」
「だが、...僕は納得していない。」

「では何故お話しの場で仰らなかったのですか?」

あの出来事の後、私達は婚約についてのお話し合いを致しました。

私はそれまで目にして来たことをそのままお話し致しました。

その席で、アダム様は何やら逡巡したご様子ではっきりとしたことを仰らなかったので、互いの両親と私とで合意と見做して、婚約は解消されたのです。

アダム様が、何を逡巡していらしたのかは解りません。

それでも、漸くアダム様を解放してあげられました。

愛するエバ様と添う事が許されるのです。

「君でなければ、」
「アダム様。貴方の幸せを大切になさって下さい。」

アダム様のお答えが、どうだったのか分かりません。

私は、そのままお別れしましたので。

暫くしてお父様から、アダム様が後継から外されたと聞きました。

三男様が後を継ぐのだそうです。
アダム様はエバ様の男爵家へ、婿入りなさるのだそうです。

誠に御目出度い事です。

私は、心からそう思いました。

あれから何度かお二人の姿を学園で見掛けましたが、もう涙が出ることはありませんでした。



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