アダムとイヴ

桃井すもも

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罪と罰1

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その日は放課後に街へ立ち寄りました。

学園からそれ程離れていない所に文具を扱うお店があります。

インクが切れてしまいそうで、侍女に頼んでもよいのですが、折角なので自分で選ぼうと思ったのです。

店内は、インクの他にも万年筆や画材、便箋に封筒と、目移りするもので溢れておりました。

窓辺の日差しにキラリと輝くガラスペンが見えて、

「まあ!綺麗。」

流線型に流れる優美な軸が美しくて、もっと近くに寄って見てみたいとショーウィンドウの間近まで寄りましたところ、

「....」

ウィンドウ越しに良く知るお二人が見えました。

アダム様とエバ様が通りを歩いていらっしゃいました。

腕を組んで、何か楽しいお話しをエバ様がなさっているらしく、それをアダム様が柔らかな笑みで耳を傾けているご様子でした。

ウィンドウ一枚隔てただけで、違う世界にいるような、そんな感覚が致しました。

このまま見つめていたら、目が合ってしまいそうで、そっとウィンドウから離れます。

そうして頃合いを見てからお店を出ました。

迎えの馬車は学園に来ますが、まだ時間があります。

花壇でも眺めて待ちましょう。

そう考えて学園へ戻り、目当ての花壇、図書室から出た直ぐ側の花壇のベンチに座りました。

春の花々が盛んに咲いているのを見つめていると

「イヴ嬢?」

背中に声を掛けられました。
振り返るとシリル様です。

「ご機嫌よう、シリル様。」

「うん、...」
シリル様が何やら苦いお顔をなさって、

「ねえ、イヴ嬢。なんで泣いてる?」 

どうやら私は、泣いていたらしいです。




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