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王子の噂とは、どうやら王子には目を掛けているご令嬢がいるらしい、と云うものであった。
それが事実であるのなら、こんな高位貴族の令嬢達を一絡めに確保しなくとも、その「特別なご令嬢」とやらを婚約者に据えれば良かろうに。
ところがその女性とは男爵家のご令嬢で、しかも男爵が外で産ませた庶子であるらしい。爵位も足りなければ令嬢としての資質も足りていない。
何だその何処かで聞いたような話し。真逆、ピンクの髪にピンクの瞳?と思えばその真逆で、赤味を帯びた金髪は陽の光を浴びてピンクに見えるし、瞳も薄い紅茶色がこれも見ようによってはピンクに見える。
学園への入学もまだであるのに、もう恋にうつつを抜かすとんだ色ボケ王子だと、流石ののんびりソフィアも呆れてしまった。
行き先不明の自分であるなら兎も角、アナスタシアには婚約を望んだご令息がいた。
人の恋路を邪魔しておいて、これは多分、私達婚約者候補達を愛する人を傷付ける悪人とでも悪様に言うつもりだろう。
馬鹿王子め、勝手に恋していてくれ。そしてそこに私達を巻き込むな!
王子の噂を知った日は、流石のソフィアも幾分荒れた。
平素が温度の無い感情しか示さない娘の変化に、両親は全く気付かない。
兄と姉達には何があったのかと聞かれたが、馬鹿で戯けた話しを耳にしたのだと言えば、それは大変だったわねと気の毒に思ってくれた。流石は兄姉。
もうこれは、王子の婚約者云々は公爵家令嬢のお姉様方にお任せして、私とアナスタシアは可及的速やかに退出すべきであろう。
唾付けみたいに数に入れられて、それで王子の恋路を邪魔する醜い令嬢などと言われでもしたら堪らない。
まだ誰も何も一言もそんな事は言っていないのに、ソフィアはもう終わった感満載で、アナスタシアの手を取ってあははうふふと草原を駆け抜ける夢を見たくらいであった。
だから、顔合わせでも王子に好印象など持ってもらおうとも、こちらも好意的に受け取ろうとも思わなかった。
烟る金髪が眩しくてロイヤルブルーの瞳が宝石みたいな、只美しいだけの考えなしな王子など、国の害ではあるまいか。そこまで考えて、虫けらを見つめる視線を放っていたのに気付かない。
隣に座るアナスタシアは、ソフィアが顔を顰めるのに、ソフィア様お腹が痛いのかしらと心配に思ったが、流石は王家、お茶も菓子も最高級のものを出されたのをソフィアが完食したことから、体調不良でないことに安心したのであった。
途中、王太子殿下が様子を窺いに来た時は、流石のソフィアもカーテシーをキメキメに決めて、礼を尽くした。
あんぽんたんな第二王子と違って、王国のために政略での婚姻を受け入れた王太子殿下は、よほど肝が据わっている。王家、こうでなくちゃ。
おう!第二王子とやら。貴様、訂正、貴方様こそ兄殿下を見習って、ここにこうして集められた令嬢達の立場を考えて下さいませよ。
ふんっとばかりに視線を外したので、ソフィアはその後、何度か王子がこちらを窺い見るのには気が付かなかった。
美味しい紅茶を二杯おかわりして、三杯目には茶葉を別の種類に替えてくれた王宮侍女に感謝をしながら、美味い焼き菓子を堪能した。
土産までもらったから、邸に帰ったら兄様姉様侍女達と頂こうと、お開きの合図の直後には、そそくさ退席したのであった。
それが事実であるのなら、こんな高位貴族の令嬢達を一絡めに確保しなくとも、その「特別なご令嬢」とやらを婚約者に据えれば良かろうに。
ところがその女性とは男爵家のご令嬢で、しかも男爵が外で産ませた庶子であるらしい。爵位も足りなければ令嬢としての資質も足りていない。
何だその何処かで聞いたような話し。真逆、ピンクの髪にピンクの瞳?と思えばその真逆で、赤味を帯びた金髪は陽の光を浴びてピンクに見えるし、瞳も薄い紅茶色がこれも見ようによってはピンクに見える。
学園への入学もまだであるのに、もう恋にうつつを抜かすとんだ色ボケ王子だと、流石ののんびりソフィアも呆れてしまった。
行き先不明の自分であるなら兎も角、アナスタシアには婚約を望んだご令息がいた。
人の恋路を邪魔しておいて、これは多分、私達婚約者候補達を愛する人を傷付ける悪人とでも悪様に言うつもりだろう。
馬鹿王子め、勝手に恋していてくれ。そしてそこに私達を巻き込むな!
王子の噂を知った日は、流石のソフィアも幾分荒れた。
平素が温度の無い感情しか示さない娘の変化に、両親は全く気付かない。
兄と姉達には何があったのかと聞かれたが、馬鹿で戯けた話しを耳にしたのだと言えば、それは大変だったわねと気の毒に思ってくれた。流石は兄姉。
もうこれは、王子の婚約者云々は公爵家令嬢のお姉様方にお任せして、私とアナスタシアは可及的速やかに退出すべきであろう。
唾付けみたいに数に入れられて、それで王子の恋路を邪魔する醜い令嬢などと言われでもしたら堪らない。
まだ誰も何も一言もそんな事は言っていないのに、ソフィアはもう終わった感満載で、アナスタシアの手を取ってあははうふふと草原を駆け抜ける夢を見たくらいであった。
だから、顔合わせでも王子に好印象など持ってもらおうとも、こちらも好意的に受け取ろうとも思わなかった。
烟る金髪が眩しくてロイヤルブルーの瞳が宝石みたいな、只美しいだけの考えなしな王子など、国の害ではあるまいか。そこまで考えて、虫けらを見つめる視線を放っていたのに気付かない。
隣に座るアナスタシアは、ソフィアが顔を顰めるのに、ソフィア様お腹が痛いのかしらと心配に思ったが、流石は王家、お茶も菓子も最高級のものを出されたのをソフィアが完食したことから、体調不良でないことに安心したのであった。
途中、王太子殿下が様子を窺いに来た時は、流石のソフィアもカーテシーをキメキメに決めて、礼を尽くした。
あんぽんたんな第二王子と違って、王国のために政略での婚姻を受け入れた王太子殿下は、よほど肝が据わっている。王家、こうでなくちゃ。
おう!第二王子とやら。貴様、訂正、貴方様こそ兄殿下を見習って、ここにこうして集められた令嬢達の立場を考えて下さいませよ。
ふんっとばかりに視線を外したので、ソフィアはその後、何度か王子がこちらを窺い見るのには気が付かなかった。
美味しい紅茶を二杯おかわりして、三杯目には茶葉を別の種類に替えてくれた王宮侍女に感謝をしながら、美味い焼き菓子を堪能した。
土産までもらったから、邸に帰ったら兄様姉様侍女達と頂こうと、お開きの合図の直後には、そそくさ退席したのであった。
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