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こんなに駆けるのは子供の頃以来だろう。子供の頃でさえこれほど駆けたことなど無かったかも知れない。
学園の廊下で、ヘンリエッタはハロルドに追われていた。
端から見れば、なかなかシュールな図である。婚約者が婚約者に学園の廊下で追われている。そうして、何故か婚約者から逃げている。
婚約誓約書にサインをしたその日から、ハロルドとは音信不通となっていた。不思議な程に接触は皆無であった。
今夜は二度目の婚約が整って以来、初めてハロルドに会ったのに、エドワードの後ろに控える彼とヘンリエッタは、視線を交わすことも言葉を交わすことも一度も無かった。
ハロルドがヘンリエッタをどう見たのかは知らないが、ヘンリエッタが彼を瞳に映すことは無かった。
今もマルクスに手を引かれ、ヘンリエッタはハロルドから逃げて馬車に向かって駆けている。マルクスは前もって帰る時刻を御者に伝えており、もう既に馬車は待っているらしかった。
暗がりに所々照明が灯されて、照らされた道筋が浮き上がって見えている。そこを思いっ切り二人で駆け抜けた。
慣れないヒールに重いドレス。息が上がってスピードが出ない。元より貴族の令嬢は走らない。身体を動かすのはダンスくらいだろうが、生憎そのダンスはヘンリエッタの苦手とするものだった。
「くっ、」苦しいの一言も苦しくて言えない。
「ヘンリエッタ、待ってくれ!」
ハロルドの声がどんどんどんどん近くなる。その声を背中に聴いても、ヘンリエッタは止まろうと思えなかった。反射的に逃げ出したのが、もう逃げる事が目的になって、何が何でも逃げ切ろうと駆けていた。
「ヘンリエッタっ!」
ハロルドの声がする。
再婚約からただの一度も文も花も贈られず、姿を現すこともなく、夜会のエスコートを自分から願ったにも関わらず王女に侍ってヘンリエッタを忘れた婚約者。もうすぐ他人に戻るであろう婚約者。
逃げたってどうなる事でも無いのだが、追い掛けるハロルドを、ヘンリエッタを呼び止めるハロルドを、ヘンリエッタは今頃になって留まり向き合う考えが浮かばなかった。
「走れる?ヘンリエッタっ」
「く、苦しいっ」
マルクスに問われて無理だと答えれば、マルクスは瞬く程の一瞬でヘンリエッタを抱き上げた。
まるでダンスの続きを踊るように、そのままヘンリエッタを抱えてターンをするように、軽やかにヘンリエッタを抱き上げてしまった。
「マ、マリーっ」
「舌を噛むわよ、しっかり掴まってっ」
思わずマルクスの首に腕を回す。
「ヘンリエッタ!!」
同時にハロルドの声がした。
その声から逃れる様に、ヘンリエッタはマルクスの胸に顔を埋めた。
信じられない事に、マルクスはヘンリエッタを抱き上げたまま、真っ直ぐ馬車まで走り抜いた。
馬車が見えると走りながら、
「扉を開けろっ」と御者に叫んだ。
何者か人影に追われる主の姿に、御者は慌てて馬車の扉を開いた。開いた途端、飛び込む様にマルクスはステップを上がる。
「ヘンリエッタ!!」
尚もハロルドに名を呼ばれた。それはもう叫び声に近かった。ヘンリエッタはマルクスの腕の中で必死に身を縮めた。
衝撃と共に座席に降ろされ、マルクスが扉を閉める。閉めながら、「出せ!」と御者に声を掛けた。
馬車が動く。その揺れを感じながら、ヘンリエッタは逃げ切ったと思った。
「大丈夫?ヘンリエッタ、何処か痛い?」
「だ、だ、大丈夫。それよりマリー、貴女こそ大丈夫?」
マルクスは結構な距離をヘンリエッタを抱えて駆けた筈で、今もまだ荒く息を弾ませている。
「大丈夫よ、私なら。それより、」
そこではぁはぁと息を整えながらマルクスは、
「なあに?あれ。怖かった~。もう絶対捕まりたくないと思ったのよ~!なあに~もぉ~怖すぎよぉ~。」
鬼気迫るハロルドから、マルクスもまた戦々恐々恐れ慄き逃げ出したのだと解って、ヘンリエッタは思わず笑ってしまった。
ヘンリエッタが笑い出し、はぁはぁ言っていたマルクスもまた釣られる様に笑い出した。
はぁはぁ、あはあは、今度は笑い過ぎて息が苦しい。
はあ~、と最後に大きく息を吐き出した。
「ほんと、はぁ~、その通りだわ。私も怖かった~。はぁ、お、追いつかれちゃ駄目だと思って走ったけれど、全然走れなかったわ。貴女が抱えてくれるだなんて、マリー、凄いわ。貴女って何でも出来ちゃうのね!」
なにこの達成感。婚約者から逃げ仰せて達成感を感じるだなんて。まるでハロルドが卑劣な悪党みたい。む?それ良いわね、小説の題材にぴったりだわ。悪辣な夫から逃げる妻。これってテーマとして行けるのではないかしら。
荒い息を整えながら次なる小説のテーマが決まって、これは邸に戻ったら忘れぬ内に構想を書き留めねばと思った。
「貴女、逃げて来ちゃって良かったの?」
マルクスに問われて、ヘンリエッタは考えた。
「本能的に逃げちゃおうって思ったの。でもそうしたのは彼にも原因があるわ。だって、あんな勢いで追い掛けられたら恐怖しか感じないじゃない。それに、もう良いの。心の準備なら出来てるわ。」
「そう。でもこのままではいけないでしょう。物語には締めがあるのだから。」
「そうよね。逃げっぱなしは無理よね。お互い決め事の後始末をしなければ前に進めないわね。」
終わりに向かって進む物語。ヘンリエッタとハロルドの物語の結びについて、ヘンリエッタは思いを巡らすのだった。
学園の廊下で、ヘンリエッタはハロルドに追われていた。
端から見れば、なかなかシュールな図である。婚約者が婚約者に学園の廊下で追われている。そうして、何故か婚約者から逃げている。
婚約誓約書にサインをしたその日から、ハロルドとは音信不通となっていた。不思議な程に接触は皆無であった。
今夜は二度目の婚約が整って以来、初めてハロルドに会ったのに、エドワードの後ろに控える彼とヘンリエッタは、視線を交わすことも言葉を交わすことも一度も無かった。
ハロルドがヘンリエッタをどう見たのかは知らないが、ヘンリエッタが彼を瞳に映すことは無かった。
今もマルクスに手を引かれ、ヘンリエッタはハロルドから逃げて馬車に向かって駆けている。マルクスは前もって帰る時刻を御者に伝えており、もう既に馬車は待っているらしかった。
暗がりに所々照明が灯されて、照らされた道筋が浮き上がって見えている。そこを思いっ切り二人で駆け抜けた。
慣れないヒールに重いドレス。息が上がってスピードが出ない。元より貴族の令嬢は走らない。身体を動かすのはダンスくらいだろうが、生憎そのダンスはヘンリエッタの苦手とするものだった。
「くっ、」苦しいの一言も苦しくて言えない。
「ヘンリエッタ、待ってくれ!」
ハロルドの声がどんどんどんどん近くなる。その声を背中に聴いても、ヘンリエッタは止まろうと思えなかった。反射的に逃げ出したのが、もう逃げる事が目的になって、何が何でも逃げ切ろうと駆けていた。
「ヘンリエッタっ!」
ハロルドの声がする。
再婚約からただの一度も文も花も贈られず、姿を現すこともなく、夜会のエスコートを自分から願ったにも関わらず王女に侍ってヘンリエッタを忘れた婚約者。もうすぐ他人に戻るであろう婚約者。
逃げたってどうなる事でも無いのだが、追い掛けるハロルドを、ヘンリエッタを呼び止めるハロルドを、ヘンリエッタは今頃になって留まり向き合う考えが浮かばなかった。
「走れる?ヘンリエッタっ」
「く、苦しいっ」
マルクスに問われて無理だと答えれば、マルクスは瞬く程の一瞬でヘンリエッタを抱き上げた。
まるでダンスの続きを踊るように、そのままヘンリエッタを抱えてターンをするように、軽やかにヘンリエッタを抱き上げてしまった。
「マ、マリーっ」
「舌を噛むわよ、しっかり掴まってっ」
思わずマルクスの首に腕を回す。
「ヘンリエッタ!!」
同時にハロルドの声がした。
その声から逃れる様に、ヘンリエッタはマルクスの胸に顔を埋めた。
信じられない事に、マルクスはヘンリエッタを抱き上げたまま、真っ直ぐ馬車まで走り抜いた。
馬車が見えると走りながら、
「扉を開けろっ」と御者に叫んだ。
何者か人影に追われる主の姿に、御者は慌てて馬車の扉を開いた。開いた途端、飛び込む様にマルクスはステップを上がる。
「ヘンリエッタ!!」
尚もハロルドに名を呼ばれた。それはもう叫び声に近かった。ヘンリエッタはマルクスの腕の中で必死に身を縮めた。
衝撃と共に座席に降ろされ、マルクスが扉を閉める。閉めながら、「出せ!」と御者に声を掛けた。
馬車が動く。その揺れを感じながら、ヘンリエッタは逃げ切ったと思った。
「大丈夫?ヘンリエッタ、何処か痛い?」
「だ、だ、大丈夫。それよりマリー、貴女こそ大丈夫?」
マルクスは結構な距離をヘンリエッタを抱えて駆けた筈で、今もまだ荒く息を弾ませている。
「大丈夫よ、私なら。それより、」
そこではぁはぁと息を整えながらマルクスは、
「なあに?あれ。怖かった~。もう絶対捕まりたくないと思ったのよ~!なあに~もぉ~怖すぎよぉ~。」
鬼気迫るハロルドから、マルクスもまた戦々恐々恐れ慄き逃げ出したのだと解って、ヘンリエッタは思わず笑ってしまった。
ヘンリエッタが笑い出し、はぁはぁ言っていたマルクスもまた釣られる様に笑い出した。
はぁはぁ、あはあは、今度は笑い過ぎて息が苦しい。
はあ~、と最後に大きく息を吐き出した。
「ほんと、はぁ~、その通りだわ。私も怖かった~。はぁ、お、追いつかれちゃ駄目だと思って走ったけれど、全然走れなかったわ。貴女が抱えてくれるだなんて、マリー、凄いわ。貴女って何でも出来ちゃうのね!」
なにこの達成感。婚約者から逃げ仰せて達成感を感じるだなんて。まるでハロルドが卑劣な悪党みたい。む?それ良いわね、小説の題材にぴったりだわ。悪辣な夫から逃げる妻。これってテーマとして行けるのではないかしら。
荒い息を整えながら次なる小説のテーマが決まって、これは邸に戻ったら忘れぬ内に構想を書き留めねばと思った。
「貴女、逃げて来ちゃって良かったの?」
マルクスに問われて、ヘンリエッタは考えた。
「本能的に逃げちゃおうって思ったの。でもそうしたのは彼にも原因があるわ。だって、あんな勢いで追い掛けられたら恐怖しか感じないじゃない。それに、もう良いの。心の準備なら出来てるわ。」
「そう。でもこのままではいけないでしょう。物語には締めがあるのだから。」
「そうよね。逃げっぱなしは無理よね。お互い決め事の後始末をしなければ前に進めないわね。」
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