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額のキス
しおりを挟む僕の人生は先生によって成立している。よくわかっている。それが悪いとも思わない。
精神的にも先生に依存している自覚もある。だからこそ先生に突き放されてしまうのは耐えられない。昨日の問いにも答えられない。僕の狡猾さだけ育っていく。なんとかして、どうにかして側に置いてもらう方法を考え、縋っている。
だから、こんなこと受け入れられるはずがないんだ。
寝たら思考がスッキリした。コーヒーを淹れ朝を迎える。先生は珍しく起きてこない。こんな日は体調を崩していることだろう。
先生の寝室をノックしてみる。
「先生?朝ですよ。起きてください」
反応はなく、扉を開けてみると誰もいない部屋がそこにはあった。
「せんせ…?」
仕事部屋で寝落ちしていることもたまにあるのでそちらの方かと思い足を運ぶ。
コンコンコンとノックしてみると先生はそっちにいた。大荷物を抱えていた。
「起きてたんですね。何処か行かれるのですか?」
「おはよう。そうだね。少し取材に遠出することになってね」
「大事なことはちゃんと言ってください。何日くらいですか?あと何が必要ですか?」
「ん~期間はまだ未定だ。もう用意は終わる。終わったらリビングへ行くよ」
「わかりました」
先生が小説のための取材へ向かうことは珍しくない。ただ荷物の量を見るに僕の知る限りでは1番長くなるんだろうと予想できる。先生が居なくなってしまうのは寂しいが仕方がない。
用意を終えたという先生と食事を取る。
「いつ出られるのですか?」
「今夜だ」
「そうですか。どちらへ?」
「気の向くまま。と言った具合だな」
「そんな曖昧な…」
「大丈夫だ。心配せずとも君は私の育てた優秀な男だどうとでもなる」
「いくつだと思ってるんですか?心配される年齢じゃありませんよ」
「そうだったな。明日で15歳になるんだったな。誕生日に一緒に居られなくてすまないな」
「いいえ、それを申し訳ないと思う気持ちだけで嬉しいです」
先生は誕生日プレゼントといって袋をくれた。中身は当日になってから見て欲しいとのことだった。
いつも通り僕は過ごす中、先生はいつもより忙しなく動いている。ゆったりとした人だがたまにはこんな風に動くのも悪くないだろう。
日が沈み始めた頃、先生は車に荷物を積んで出ていくのを見守る。
「先生」
「なんだい?」
「こっちに来てください」
先生の額にキスをした。寂しくて先生を抱きしめた。
「昨日の話、反応は変わりませんからね」
「君も強情だな。嬉しいよそんなに気に入ってもらえて」
そう言って目を瞑り先生より高くなった頭を少し下げて鼻へのキスを待つと先生は僕の前髪をスッと退かして額に口付けをした。
「?」
「いいんだ、これでいい」
戸惑う僕を見て先生は優しく微笑んだ。
「そうだな。こっちの初めてくらいもらってもいいだろう」
そう言って先生は僕の唇に先生の唇を重ねた。
驚きと戸惑いで呆気に取られていると先生は恥ずかしそうに赤らめて僕の目を見る。
「君は優しくて美しく気高い。もう少しだけ味あわせてくれ」
そういって先生はもう一度キスをした。二度目のキスは舌を絡ませ互いの愛を確かめ合うような、艶かしく官能的で先生のことがとても愛おしくなった。
力が入らなくなっていくと先生は僕を押し倒して言った。
「私は君を愛している。これだけは忘れないでくれ」
「そんな、大袈裟ですよ。僕が先生のこと忘れるわけがないでしょう?僕も愛しています先生」
最後にぎゅーと僕を抱きしめた先生は「もういくよ」といって扉の外へ行ってしまった。
身体に残る先生の温度、火照った体、敬愛している先生とのキス、どれも刺激的で甘美で嬉しくて、とても切なくなった。
夜は更けて先生のいない一人の夜の孤独は嫌いだが、先刻の先生とのキスが忘れられない。どうして先生はこんなに恋しい思いをさせて僕を残すんだろう。そんな風に思っていると外が騒がしくなってくる。
ここは先生の私有地で周りには何もないはずなのにどうしたんだろう。
ドンドンドンと強いノックが響く。嫌な予感がして無視をしようと決めた。
時間をおかず、二度、三度ノックは繰り返される。あいにく外から見える部屋の灯りは落としてあるので存在を悟られないように大人しくしている。
外から機械的な大きな声が聞こえる。
「『鷲倉小夜!扉を開けなさい!貴女には誘拐の容疑がかかっている!』」
先生が誘拐?犯罪者?なんの話だ?
「『本当にこんなところにいるんですかね?』『馬鹿!通報があったんだぞ!』」
きっと何かの間違いだ。それに先生はここにはいない。それに通報?この場所に来ているということはこの場所に問題があるということ。でもここには僕と先生とたまに来る弥衣さんしかいない。誘拐なんて…誘拐なんて……
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