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第3話
第3話 出発 (27)
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「嫌だああああ!!!やめてえええ!!!
私は男に向かって走るクレッチュマー博士に対して、ただ無力に叫ぶことしかできなかった。
クレッチュマー博士はものすごい速さで男に突進しようとする。
男はそれをなんとか横に避けたが、胴体の端を強く打ってしまい、男はそこを痛みを堪えるように強く押さえていた。
クレッチュマー博士は無慈悲にもまた男に対して歩き出した。
今のクレッチュマー博士はクレッチュマー博士ではない。明らかに彼らしくない。それまで温厚で、突然の来客であった私に対しても快く受け入れてくれた。
こんな資源も限られた「人工の新天地」では、そんな事できる事自体すごいのだ。どこの国にもいない、無法者はびこる無法地帯かつ敵対的なロボットが暴れる危険地帯で、静かな病におびえながら彷徨う人々の姿を見た事があるけど、皆目に光がなく、人に会うたび資源を持っていると見て、略奪をはたらこうとするのだ。
こんな自分が生きるだけで精一杯な世界で、人の為に何かできるというのは、それを意識している私ですら容易にできないし、限られた人しか救えない。
クレッチュマー博士は、「いい人」なんだ、だからきっと今のクレッチュマー博士は彼自身ではない。
だけど私は無力だった。男が負傷しクレッチュマー博士に狙われているのに、ただここで膝をついてそれを見る事しかできていない。
私にクレッチュマー博士を止めることができたのなら。そんな事をただ考えるだけだった。
すると発砲の音が鳴り響いた。
ザックがクレッチュマー博士向かって発砲したのだ。急所は狙っていないようだったが、父親に向かって発砲するのはとても辛いものだったのか、彼の顔は苦渋に満ちている。
少しすねの辺りをかすったのか、少しズボンが破け電流がビリビリと走っていた。
だがそんなものはもろともせず、クレッチュマー博士はザックに向かって走り出す。
だが私はクレッチュマー博士の恐ろしい気迫の前で動くことができなかった。
そのとき、クレッチュマー博士の胴体めがけて拳が飛んだ。男が博士に一撃くらわせようとしたのだ。だが、クレッチュマー博士はそれをおさえた。だが、少し動きを止める事ができたのか、ザックは攻撃をよけられた。
男はザックに対して目配せをし、頷く。ザックも男の頷きに対し、頷き返してこたえた。
おそらく会話してる暇のない緊迫した状況の中では、アイコンタクトでのコミュニケーションが必要となるのだろう。
クレッチュマー博士は男に向かって振り向き際に回し蹴りをくらわせようとするが、男はそれを後方によけ、それから一気に距離を詰めタックルをかまし、そのまま博士の胴体を押さえ、動きを封じながら走った。
どんなに速い動きをできるサイボーグでも、動きを封じ力でおさえてしまえば有利に動けるのだ。
すごい...さっきまであんなに追い詰められていたのに...!
男はクレッチュマー博士と共に一気に橋の端の柵を突き抜け、男は博士の胴体に乗り、そのまま空中に飛ぶ。
すると男とクレッチュマー博士の姿は空中に消え、どこに行ったかわからなくなってしまった。
「すまない親父...今のうちに逃げるぞ...!」
ザックは私を抱えて必死に逃げた。
ほんとにごめん...私ただのお荷物だよね...
ただ無力な私は、ザックにただ守られる事しかできなかった。
すると急に私達のいる空間が変わり、辺りがまるまる別の空間へと一変した。強制的にワープさせられたのだ。
急な空間のゆがみのせいだろう。
そこにはクレッチュマー博士の上に男が乗り、クレッチュマー博士をおさえたまま彼のかぶりものをとろうとしている。
おそらくかぶりものの下の頭が弱点で、彼はそれを察したのだろう。
「やめて!!!」
私は急いで駆けだしそれを阻止しようと走り出す。
おそらく博士は素顔で男の拳を受けたらたとえ博士でもただでは済まない。あまりにも残酷すぎる。最悪の場合そのまま命を落とすなんてことも考えられてしまう。
今のクレッチュマー博士は明らかにおかしいが、元は優しい人物だった。ここは命を奪わず生かしておくほうがいい。
そしてなにより私は私を救ってくれた人を邪険にする事なんてできっこない。
だけど今の私にクレッチュマー博士を助ける事なんてできるのかな...彼はこんなにも暴れ、私達の脅威として今現在立ちはだかっているというのに、ここで私が男の邪魔をしてザックも男もみんなやられちゃったら結局私のせいってことになるじゃん...
だが、今はただひたすら駆け寄る事しかできなかった。
悪者にされちゃったっていい、今はただ私にできることをしたい。いっそのこと私がおとりになることだってやってやる。
だが、クレッチュマー博士は男の体を軽々と持ち上げ、立ち上がり私の方へ男を投げた。
私の頭上に宙に浮いた男の影がかかり、次第にその影が大きくなる。
まずい、このままではつぶされちゃう...だけど逃げたら彼の体が...
だが私はそれをよけた。結局私は自分が生きるので精一杯になる事しかできなかった。
私の体では男の体を持ち上げることはできない。
男はそのまま地に体をぶつけ、倒れこんでしまった。
私はダメ元でクレッチュマー博士に銃弾を放つ。
だが博士はそれをよけ、倒れた男に追撃をくらわせようとする。
するとザックがクレッチュマー博士に背後から発砲し、また脚に当たったのか、脚からは煙が出ていた。
クレッチュマー博士は、ザックの方に方向転換をすると、また走り出す。
クレッチュマー博士はザックに一気に接近し、その勢いのまま跳び蹴りをくらわせようとする。
私はダメ元で銃弾を放ったが、それもむなしく跳ね返されるだけだった。
ザックは蹴りを避けようとするも、遅れてしまい直撃してしまった。
腹に思い切り拳を受けた彼は「ガハァッ...」と嗚咽をこぼし、ただ吹き飛ばされていた。
私はただ彼に駆け寄ることしかできなかった。
私はあまり戦闘能力に秀でていなく、ミサに守られていてばっかりだった。そんな私にできることってなんなんだろう。それはきっと後方支援をしたり、負傷した味方を守ること、そして彼らを励ますことなのだろう。
「大丈夫...!?逃げるよ...!」
私は倒れたザックを抱えようとすると、彼はそれを優しく押しのけ、再び立ち上がった。
「そんな事しなくていい...お前は先に逃げるんだ...」
ザックは追撃をくらわせようとするクレッチュマー博士に再び走り出し、ただ不器用に銃弾を放ち続けている。
男は自らを狙っていない隙に、横からクレッチュマー博士に蹴りをかまそうとするも、それも受け止められ飛ばされてしまう。
「クソッ...駄目かっ...!」
男は受け身をとり、あまりの悔しさにやけになっているのか、その勢いのまま歯を食いしばり博士に突進しようとする。
私はやっぱり無力だ...
私はそんな事を思いながら、逃げることもできず、ただ座り込むことしかできなかった。
ザックに再び博士の拳が当たろうとした、その時だった。
一気にもといた空間がゆがみ、クレッチュマー博士とザックの距離は遠くなった。
そのおかげで、かすりはしたもののザックは間一髪でクレッチュマー博士の拳を避ける事ができた。
今までひとつのものであった橋の空間が分裂し、離れた。先ほどみたいに走るだけでは、足場が途切れていて、かつ離れているので、跳ばないかぎりは下に落ちてしまうだろう。
クレッチュマー博士は向こう側の橋にいて、男もまた別の橋にいた。
私達は先ほどまで一緒にいたのか同じ橋にいる。それぞれが別の空間にいて、それを隔てている感じであった。
「カンフィナさん、やっぱあんたは優しいんだな...よく頑張った。」
ザックは私の頭に手をあててそう言った。
「だけどザックさん...あなたはけがだらけじゃん...私結局なんにもできてない...」
私は涙を流しながらそんな事を言った。ザックの温かい手が私の頭を優しくなでた。
私は彼によりかかることしかできなかった。
「ごめんなさい...ごめん...」
ザックは深呼吸をしてそう言った。
「カンフィナさん、急に頼みごとをしてしまってすまない…俺に良い考えがあるんだ。あんたの事が絶対守るからそれに乗ってくれないか…」
ザックは私に向かってそう言った。
私は男に向かって走るクレッチュマー博士に対して、ただ無力に叫ぶことしかできなかった。
クレッチュマー博士はものすごい速さで男に突進しようとする。
男はそれをなんとか横に避けたが、胴体の端を強く打ってしまい、男はそこを痛みを堪えるように強く押さえていた。
クレッチュマー博士は無慈悲にもまた男に対して歩き出した。
今のクレッチュマー博士はクレッチュマー博士ではない。明らかに彼らしくない。それまで温厚で、突然の来客であった私に対しても快く受け入れてくれた。
こんな資源も限られた「人工の新天地」では、そんな事できる事自体すごいのだ。どこの国にもいない、無法者はびこる無法地帯かつ敵対的なロボットが暴れる危険地帯で、静かな病におびえながら彷徨う人々の姿を見た事があるけど、皆目に光がなく、人に会うたび資源を持っていると見て、略奪をはたらこうとするのだ。
こんな自分が生きるだけで精一杯な世界で、人の為に何かできるというのは、それを意識している私ですら容易にできないし、限られた人しか救えない。
クレッチュマー博士は、「いい人」なんだ、だからきっと今のクレッチュマー博士は彼自身ではない。
だけど私は無力だった。男が負傷しクレッチュマー博士に狙われているのに、ただここで膝をついてそれを見る事しかできていない。
私にクレッチュマー博士を止めることができたのなら。そんな事をただ考えるだけだった。
すると発砲の音が鳴り響いた。
ザックがクレッチュマー博士向かって発砲したのだ。急所は狙っていないようだったが、父親に向かって発砲するのはとても辛いものだったのか、彼の顔は苦渋に満ちている。
少しすねの辺りをかすったのか、少しズボンが破け電流がビリビリと走っていた。
だがそんなものはもろともせず、クレッチュマー博士はザックに向かって走り出す。
だが私はクレッチュマー博士の恐ろしい気迫の前で動くことができなかった。
そのとき、クレッチュマー博士の胴体めがけて拳が飛んだ。男が博士に一撃くらわせようとしたのだ。だが、クレッチュマー博士はそれをおさえた。だが、少し動きを止める事ができたのか、ザックは攻撃をよけられた。
男はザックに対して目配せをし、頷く。ザックも男の頷きに対し、頷き返してこたえた。
おそらく会話してる暇のない緊迫した状況の中では、アイコンタクトでのコミュニケーションが必要となるのだろう。
クレッチュマー博士は男に向かって振り向き際に回し蹴りをくらわせようとするが、男はそれを後方によけ、それから一気に距離を詰めタックルをかまし、そのまま博士の胴体を押さえ、動きを封じながら走った。
どんなに速い動きをできるサイボーグでも、動きを封じ力でおさえてしまえば有利に動けるのだ。
すごい...さっきまであんなに追い詰められていたのに...!
男はクレッチュマー博士と共に一気に橋の端の柵を突き抜け、男は博士の胴体に乗り、そのまま空中に飛ぶ。
すると男とクレッチュマー博士の姿は空中に消え、どこに行ったかわからなくなってしまった。
「すまない親父...今のうちに逃げるぞ...!」
ザックは私を抱えて必死に逃げた。
ほんとにごめん...私ただのお荷物だよね...
ただ無力な私は、ザックにただ守られる事しかできなかった。
すると急に私達のいる空間が変わり、辺りがまるまる別の空間へと一変した。強制的にワープさせられたのだ。
急な空間のゆがみのせいだろう。
そこにはクレッチュマー博士の上に男が乗り、クレッチュマー博士をおさえたまま彼のかぶりものをとろうとしている。
おそらくかぶりものの下の頭が弱点で、彼はそれを察したのだろう。
「やめて!!!」
私は急いで駆けだしそれを阻止しようと走り出す。
おそらく博士は素顔で男の拳を受けたらたとえ博士でもただでは済まない。あまりにも残酷すぎる。最悪の場合そのまま命を落とすなんてことも考えられてしまう。
今のクレッチュマー博士は明らかにおかしいが、元は優しい人物だった。ここは命を奪わず生かしておくほうがいい。
そしてなにより私は私を救ってくれた人を邪険にする事なんてできっこない。
だけど今の私にクレッチュマー博士を助ける事なんてできるのかな...彼はこんなにも暴れ、私達の脅威として今現在立ちはだかっているというのに、ここで私が男の邪魔をしてザックも男もみんなやられちゃったら結局私のせいってことになるじゃん...
だが、今はただひたすら駆け寄る事しかできなかった。
悪者にされちゃったっていい、今はただ私にできることをしたい。いっそのこと私がおとりになることだってやってやる。
だが、クレッチュマー博士は男の体を軽々と持ち上げ、立ち上がり私の方へ男を投げた。
私の頭上に宙に浮いた男の影がかかり、次第にその影が大きくなる。
まずい、このままではつぶされちゃう...だけど逃げたら彼の体が...
だが私はそれをよけた。結局私は自分が生きるので精一杯になる事しかできなかった。
私の体では男の体を持ち上げることはできない。
男はそのまま地に体をぶつけ、倒れこんでしまった。
私はダメ元でクレッチュマー博士に銃弾を放つ。
だが博士はそれをよけ、倒れた男に追撃をくらわせようとする。
するとザックがクレッチュマー博士に背後から発砲し、また脚に当たったのか、脚からは煙が出ていた。
クレッチュマー博士は、ザックの方に方向転換をすると、また走り出す。
クレッチュマー博士はザックに一気に接近し、その勢いのまま跳び蹴りをくらわせようとする。
私はダメ元で銃弾を放ったが、それもむなしく跳ね返されるだけだった。
ザックは蹴りを避けようとするも、遅れてしまい直撃してしまった。
腹に思い切り拳を受けた彼は「ガハァッ...」と嗚咽をこぼし、ただ吹き飛ばされていた。
私はただ彼に駆け寄ることしかできなかった。
私はあまり戦闘能力に秀でていなく、ミサに守られていてばっかりだった。そんな私にできることってなんなんだろう。それはきっと後方支援をしたり、負傷した味方を守ること、そして彼らを励ますことなのだろう。
「大丈夫...!?逃げるよ...!」
私は倒れたザックを抱えようとすると、彼はそれを優しく押しのけ、再び立ち上がった。
「そんな事しなくていい...お前は先に逃げるんだ...」
ザックは追撃をくらわせようとするクレッチュマー博士に再び走り出し、ただ不器用に銃弾を放ち続けている。
男は自らを狙っていない隙に、横からクレッチュマー博士に蹴りをかまそうとするも、それも受け止められ飛ばされてしまう。
「クソッ...駄目かっ...!」
男は受け身をとり、あまりの悔しさにやけになっているのか、その勢いのまま歯を食いしばり博士に突進しようとする。
私はやっぱり無力だ...
私はそんな事を思いながら、逃げることもできず、ただ座り込むことしかできなかった。
ザックに再び博士の拳が当たろうとした、その時だった。
一気にもといた空間がゆがみ、クレッチュマー博士とザックの距離は遠くなった。
そのおかげで、かすりはしたもののザックは間一髪でクレッチュマー博士の拳を避ける事ができた。
今までひとつのものであった橋の空間が分裂し、離れた。先ほどみたいに走るだけでは、足場が途切れていて、かつ離れているので、跳ばないかぎりは下に落ちてしまうだろう。
クレッチュマー博士は向こう側の橋にいて、男もまた別の橋にいた。
私達は先ほどまで一緒にいたのか同じ橋にいる。それぞれが別の空間にいて、それを隔てている感じであった。
「カンフィナさん、やっぱあんたは優しいんだな...よく頑張った。」
ザックは私の頭に手をあててそう言った。
「だけどザックさん...あなたはけがだらけじゃん...私結局なんにもできてない...」
私は涙を流しながらそんな事を言った。ザックの温かい手が私の頭を優しくなでた。
私は彼によりかかることしかできなかった。
「ごめんなさい...ごめん...」
ザックは深呼吸をしてそう言った。
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