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猫手水晶

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第3話

第3話 出発 (23)

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俺はただひたすらに走っていた。

俺は絶対にイリーアの姉貴を守らなければいけないという信念があった。はっきりとは覚えていないが、かつて彼女は過去にものすごく大変な事があったというのは確かに覚えていた。だが、その内容だけはなぜか思い出せなかった。
だが、俺は同じチームにいたにもかかわらず、彼女を守る事ができなかったというのは確かに覚えているし、決してそんな事を繰り返したくはなかったのだ。
イリーアは一人で抱えすぎている。誰かが守り、共に助け合わなくてはいつか彼女は壊れてしまう。
だから俺は彼女を守りぬくと心に誓っている。だからリディグとは違って不器用な俺でも、日々身体を鍛えるのは怠らず、力には自信を持てるように努力してきたのだ。

俺は兵士をなぎ倒し、進み続けた。
「ドクディスさんはこの要塞の広場の調査をお願いします!おそらくあなたがいる空間は、不定形に形が変わり続けますが、隆起し上の階の部分に登れたり、その空間自体が上の階になったりします!それを生かしてあなたはできるだけ高台へ行き、敵対チームの有無を見てほしいです!もし怪しい者を見つけたら逐次報告をお願いします!」
リディグから連絡が入った。
「わかった!」
俺は端的にそう答え。走り続けた。

すると突然俺の周りの床が下がり、落ちた俺は思わず受け身をとった。

下の階には兵士が銃を構えていた。

俺は彼らが引き金を引く前に彼らに駆け寄り、勢いに任せてタックルをかました。
兵士達は吹き飛ばされ、しばらくは動けなさそうな様子だった。

俺はまた走りだし、どこかで床が上に上がれるものはないか探し続けた。

すると上の金網を破って、俺の背後上方から銃弾が降ってきた。
これはまずいと思い、俺は銃弾の残像から逃げた。下の空間にいて、上に行けない状態だと、俺が不利で一方的に攻撃を受けかねない。
おそらく銃弾に残像があり、一方向に向かって大量の銃弾が降ってきているのを見る限り、俺を攻撃しているのは大型戦闘用ロボットだと想定できた。
そうとわかれば話は早かった。大型戦闘用ロボットは俊敏性に乏しいので、素早い動きや、蛇行した動き、方向転換が多い動きのものを狙うのは難しいはずだ
俺は右、左、右、左、と方向転換を頻繁に行いつつ、素早く動いて銃弾をかわし、上に行けるものはないか確認した。そして俺は右、右、と走りながら後ろに向かって方向転換をし、一階銃弾が貫いたこともあってか、もろくなっている金網めがけて跳んだ。
この空間は比較的天井が低かったので、頑張れば俺のジャンプ力でなんとか届きそうであった。
すると思った通り容易に金網は破け、俺は上の空間に飛び出した。

よし、これならいける。

俺は、ロボットをもろくなった金網までおびき寄せるため、距離をとりながらロボットと放たれる銃弾から逃げ続けた。
ロボットは巨体であるがゆえ、俺ですら破けてしまった金網の上に乗ってしまっては、たちまち下の空間へ落ちてしまうだろう。
俺はロボットから放たれる銃弾をかわしつつ、自分ももろくなった金網の上を乗らないよう、それを跳び越えながら蛇行して走り続けた。
ロボットのガトリングの射程から離れようとすると、ロボットは俺に近づこうと動き始める。
もうすぐだ。

ロボットは今にももろくなった金網の上に乗ろうとしている

そのときだった。
すると突然、俺のいる金網が急に飛び上がり、上の空間に飛ぼうとしていた。
金網が破けたのではなく、おそらく空間が歪んで起こったのだろう。だが、さすがに今それが起こるのは想定外だった。
大型戦闘用ロボットは、当たり所が悪ければ壊れる際に燃料タンクが引火し爆発を起こす危険性がある。
これはまずい。
爆発に巻き込まれないよう遠くに逃げる必要があるのだが、この場合どこに飛ばされるかわからない。
俺の後ろの下の空間では、閃光がピカッと光った後、「ドーーーーーンッッッッ!!!」というすさまじく大きな音と爆風、振動と共に爆発が起こっていた。
おそらく先ほどのロボットがもろくなった金網を破って下に落ち、その衝撃で爆発したのだろう。
俺が乗っていた金網の空間は、先程いた高さから4メートルほど急に飛び出し、その空間が飛び出した衝撃と、ロボットの爆風によって、筋肉によって重い俺の体でさえもたやすく吹き飛ばされてしまった。

俺は要塞の中、天高く宙を舞っていたのだ。
ところでこんなに勢いよく飛んでいて大丈夫なのか...?いやどう考えたってヤバいよな...
まぁ爆発に巻き込まれなかっただけマシかもしれないが、これはこれでヤバい。
俺は着地できそうな空間を探し、ぶつかってしまいそうなものがないか確認した。
俺の体は先程いた空間から上空10メートルほど舞っていた。
いや、舞っているというよりかはロケットのように勢いよく飛ばされているような感じだった。
すると、俺の前方の、2メートル斜め上に着地できそうな床が存在していたが、それを柵が阻んでおり、俺がそれにぶつかるのを待ち構えていた。
ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!

このままでは今すぐにでもぶつかってしまうだろう。
俺は一か八かで手を伸ばし、柵をつかめないか試みた。
ガシッ!!!

よし!いった!
柵のカーン!といった音と共に、手にとてつもない衝撃が走る。鍛えていなければ骨折していただろう。そしてその衝撃は全身を伝い、俺の体を震わせた。
俺はその勢いのまま、柵から体を持ち上げた、いや、正確には自分の体を投げたような感じだろうか。
そして俺は受け身をとり、無事に4階ほどの高さの空間に飛び移ることができた。
いや無事ではないか...全身にヒリヒリした痛みと衝撃が走るし...
だけどまあなんとか命は無事だし、動く事もできる状態であった。

だが安堵している暇もなかった。
間もなく兵士が上の空間から飛んできて、俺の事を撃とうと銃を構える。
俺は痛みを我慢し、少しひるんだが、ギリギリ銃弾をかわした。
俺は銃をリロードしようとする兵士の両腕をつかみ、背負い投げをした。
兵士は単独であったため、なんとか兵士をひるませる事に成功した。

俺は走り出した。俺が走っている金網の橋の、左右の空間から絶え間なく俺に銃弾が飛び交ってくるからだ。
だが、しばらく走り、狭い金網の橋を抜け、広い空間に出ると、銃弾がやんだ。
俺はなぜ急に銃弾がやんだのか、疑問に思いながら走り続け、前方を眺めると、ある人物の影を見つけた。

その人物は変わったかぶりものをかぶっており、腕は機械になっている、いわばサイボーグであった。

その瞬間、俺はそれをさとった。
寒気が全身を走り、とてつもなくおそろしい気持ちに苛まれた。

ーーーーーよほど素早いロボットとか、強力なサイボーグとかがいなけりゃなんとかなるぜー...ーーーーー
こんな言葉が俺の頭をよぎった
しまった。まさかイリーアが作戦会議の時に言った、最悪の事態が本当になってしまうとは。

サイボーグがここに来てしまったのだ。
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