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第12話

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 「なっ!」

 エリクレスの革命というその言葉を聞いた時、私は動揺を隠しきれなかった。
 何せそれだけこの国では革命という言葉はあり得ないものの証明だったのだから。
 それは決してこの国の貴族や王族に対して平民が不満を覚えることが無かったという理由ではない。
 当たり前だが、不満は爆発寸前だ。
 けれども、それを許さないだけの力をこの国は有している。
 それが長年王政が続けられてきたこの国の確かな実力だ。
 だからこの国に対してエリクレスが革命という言葉を使った時、私は信じられず……

 ーーー けれどもその一方で私は納得もしていた。

 エリクレスに従っていた裁判官、その気怠げな姿を私は思い出す。
 裁判官は当初、平民に対する権利の象徴として作られた存在だった。
 けれども今は違う。
 裁判官は貴族と癒着し、本来の目的を果たさないばかりか、逆に平民を蔑んでさえいる。
 しかしそんな組織の1人であるあの裁判官はエリクレスに付き従って、貴族であるレイナを裁いていた。
 それは明らかに異常な事態だった。
 たしかに貴族同士の権力争いで裁判官の存在を利用して自身のライバルを蹴落とそうとした貴族はいる。
 けれども今回はそんなレベルではなかった。
 何せ平民に対する権利を尊重した上で、あの裁判官はレイナを裁いていたのだから。

 さらにその裁判官は恐らくエリクレスに従っていることを私は悟っていた。

 そして貴族の味方である裁判官を味方につける、そのことはエリクレスが告げた革命が本気であることの何よりの証拠だった。
 それに、レイナをこの場から連れて行った衛兵達。
 彼らもエリクレスの味方だろう。
 つまり、エリクレスは本気で革命に取り組んでいるばかりか、成果を出しているのだ。
 そう、本来味方にならないはずの人間を自陣に取り込むことによって。

 「私も革命をやる」

 それにはどれ程の労力が必要だったのだろうか、そう考えた時私は自然とそう口にしていた。

 「えっ?」

 私の言葉にそんな反応を取られると思っていないかったのか、唖然としたエリクレスの顔が見える。
 それはまるで自分のことを賛同してくれる人間が今までいなかったかのような、そんな反応で、そしてその顔を見た瞬間私の胸はぎゅっと締め付けられた。
 エリクレスが王子としてこの場所に来た理由、それは今まで王太子だった王妃との正式な国王の子供が死んだからだろう。
 そして強引に次期国王となったエリクレスにはどれ程の苦労があったのだろうか?
 今まで平民だった人間を敬おうとする人間はこの国の貴族にはいいない。
 そしてそんな状況で必死にエリクレスは頑張っていたのだろう。
 身も心も好きれてしまうほどに。

 「覚えているでしょう!あんたが出て行く前に私とした約束!」

 そしてそのことに気づいた時、私はそう叫んでいた。
 それはエリクレスが出て行く前に私が彼と交わした約束。

 絶対にこの国を変えてやるという宣言。

 それは何の効力も持たない子供の言葉だった。
 エリクレスが強制的に連れていかれるその光景の中、私が叫んだ言葉。
 そらはただ、エリクレスを安心させようと叫んだ言葉だったのか、それさえもわからない遠い過去の記憶。

 「だから、私もその革命に参加させなさい!」

 ーーー けれども、その言葉に力を込めるために私はそう叫んだ。
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