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第9話
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「お前らもだ!」
突然の展開に王子の言葉の後沈黙が降りていた広場に、そんな1人の平民の言葉が響いた。
その声の主は私によくしてくれていた初老の男性で……
彼は怒りのこもった目で突然の出来事に反応できていない貴族を睨みつけていた。
「っ!」
そしてその怒りが自分達に来ていると、そう悟った貴族達はレイナのことをあっさりと見捨てその場から離れ始めた。
いつもならば平民の言葉などなんの効力持たない。
それが貴族の方針で、そしてそのせいで平民の発言には何の力もない。
けれども今回は違う。
王子と、その味方と思える裁判官の存在それが普段ならば何の力をもない平民の言葉に力を与えていた。
「畜生!逃げるな!」
そしてこの場にいたらレイナの二の舞になりかねない、そう判断した貴族達は我先にとこの場から逃げ出した。
恥も外聞も捨ててこの場から逃げ出す貴族達を平民は口汚く罵り追いかけ始めた。
その顔にはどの人間にも隠しきれない怒りが浮かんでいて、貴族達はさらに恐怖を感じたのか急いでこの場を離れ始める。
「はぁ……貴族を追いかけたところで何の意味も無いのですがね……」
そしてその平民達の態度を見て、裁判官はそう重々しいため息を漏らし、それから平民を止めるために走り去った方向へと歩き出し……
最後に私とレイナ、そして王子だけがこの広場になこされることとなった……
◇◆◇
「……どうしてこんなことを」
この場にいるのが3人だけになってもしばらくの間レイナはショックのためか口を聞くことができなかった。
けれども、少し経ってようやく話せる程度には回復したのか、王子を涙に濡れた目で睨みつけながら彼女はそう叫んだ。
「私は貴方を愛していたのに!何で私を見捨てたの!この女を貴方が例え愛していたとしても私を追放させることまでしないでいいじゃない!」
それは酷く身勝手な言葉だった。
何せ私は今までの話から考えるとあまりにも見当違いな嫉妬で追放されそうになったのだ。
そしてレイナが行って来たのはそれだけではない。
彼女の思い込みで殺された人間はどれだけいるだろうか。
それだけのことをしながら彼女はいざ自分の身に不幸が訪れたら被害者側のフリをしてそう叫ぶ。
それは醜悪、それ以外の何者でもなかった。
けれども、確かに彼女のいうことは正論だった。
彼女が被害者ヅラをするのは明らかにおかしいが、だがそれでも王子が彼女を追放する意味などなかった。
何せそんなことをしても彼女の父親である公爵を敵に回すだけでなのだから。
だからこそ、私は王子が何の目的を持っているのか、そう疑問に覚えながら王子へと顔を向ける。
恐らく私を王子が救った目的はこの身に宿る強大な魔力だろう。
しかし、私は王子が平民に酷く近い存在であるのではないかと考えている。
それは貴族を寄生虫と罵ったこと、そして平民達をこの場に迎え入れたことを見ての希望。
「いや、お前がある条件を飲めば俺はお前を追放するつもりなんかない」
「えっ?」
そしてそんな希望を抱いたからこそ、私は王子の言葉に絶句した。
つまり王子が狙っていたのは自由に動かせる駒なのだ。
そのためにレイナを陥れ、私を救った。
それは王子が決して平民の味方でないことを示していた。
「わかりましたわ!なんでもやります!貴方の愛人にでもなりますわ!」
そしてそんな私の落ち込みをよそに、興奮したレイナがそう王子に食ってかかる。
その様子は王子がやはり自分を求めていたと思い込んでいるのか、興奮している。
「いや、俺が望むのは平民の差別の撤廃だ」
しかし、次の瞬間王子の言葉に私とレイナ2人ともが言葉を失うことになった。
突然の展開に王子の言葉の後沈黙が降りていた広場に、そんな1人の平民の言葉が響いた。
その声の主は私によくしてくれていた初老の男性で……
彼は怒りのこもった目で突然の出来事に反応できていない貴族を睨みつけていた。
「っ!」
そしてその怒りが自分達に来ていると、そう悟った貴族達はレイナのことをあっさりと見捨てその場から離れ始めた。
いつもならば平民の言葉などなんの効力持たない。
それが貴族の方針で、そしてそのせいで平民の発言には何の力もない。
けれども今回は違う。
王子と、その味方と思える裁判官の存在それが普段ならば何の力をもない平民の言葉に力を与えていた。
「畜生!逃げるな!」
そしてこの場にいたらレイナの二の舞になりかねない、そう判断した貴族達は我先にとこの場から逃げ出した。
恥も外聞も捨ててこの場から逃げ出す貴族達を平民は口汚く罵り追いかけ始めた。
その顔にはどの人間にも隠しきれない怒りが浮かんでいて、貴族達はさらに恐怖を感じたのか急いでこの場を離れ始める。
「はぁ……貴族を追いかけたところで何の意味も無いのですがね……」
そしてその平民達の態度を見て、裁判官はそう重々しいため息を漏らし、それから平民を止めるために走り去った方向へと歩き出し……
最後に私とレイナ、そして王子だけがこの広場になこされることとなった……
◇◆◇
「……どうしてこんなことを」
この場にいるのが3人だけになってもしばらくの間レイナはショックのためか口を聞くことができなかった。
けれども、少し経ってようやく話せる程度には回復したのか、王子を涙に濡れた目で睨みつけながら彼女はそう叫んだ。
「私は貴方を愛していたのに!何で私を見捨てたの!この女を貴方が例え愛していたとしても私を追放させることまでしないでいいじゃない!」
それは酷く身勝手な言葉だった。
何せ私は今までの話から考えるとあまりにも見当違いな嫉妬で追放されそうになったのだ。
そしてレイナが行って来たのはそれだけではない。
彼女の思い込みで殺された人間はどれだけいるだろうか。
それだけのことをしながら彼女はいざ自分の身に不幸が訪れたら被害者側のフリをしてそう叫ぶ。
それは醜悪、それ以外の何者でもなかった。
けれども、確かに彼女のいうことは正論だった。
彼女が被害者ヅラをするのは明らかにおかしいが、だがそれでも王子が彼女を追放する意味などなかった。
何せそんなことをしても彼女の父親である公爵を敵に回すだけでなのだから。
だからこそ、私は王子が何の目的を持っているのか、そう疑問に覚えながら王子へと顔を向ける。
恐らく私を王子が救った目的はこの身に宿る強大な魔力だろう。
しかし、私は王子が平民に酷く近い存在であるのではないかと考えている。
それは貴族を寄生虫と罵ったこと、そして平民達をこの場に迎え入れたことを見ての希望。
「いや、お前がある条件を飲めば俺はお前を追放するつもりなんかない」
「えっ?」
そしてそんな希望を抱いたからこそ、私は王子の言葉に絶句した。
つまり王子が狙っていたのは自由に動かせる駒なのだ。
そのためにレイナを陥れ、私を救った。
それは王子が決して平民の味方でないことを示していた。
「わかりましたわ!なんでもやります!貴方の愛人にでもなりますわ!」
そしてそんな私の落ち込みをよそに、興奮したレイナがそう王子に食ってかかる。
その様子は王子がやはり自分を求めていたと思い込んでいるのか、興奮している。
「いや、俺が望むのは平民の差別の撤廃だ」
しかし、次の瞬間王子の言葉に私とレイナ2人ともが言葉を失うことになった。
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