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第8話

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 「はっ!一体何を……」

 突然何者かに声をかけ始めた王子、その姿にレイナは蔑みに満ちた声を上げた。
 その声には今更何かしようとしたところで、何も出来ないという自信にあふれていて……

 「相変わらず人使いが荒い……」

 「えっ?」

ーーー しかし、その態度は王子の声に反応して、気だるげな様子で現れた男を目にした途端霧散した。

 「な、何で……」

 そしてレイナの顔から血の気が引き、焦燥が浮かんで行く。 
 何故ならば現れた男、彼はこの国で唯一貴族を裁くことのできる裁判官の制服を身にまとっていたのだから。

 しかし、今この国ではその裁判官の殆どは貴族と癒着し、この国に腐敗をもたらす原因の一つとなっている。

 「貴方、何でこんな場所に!私は呼んでませんわよ!」

 一瞬、突然の裁判官の登場にレイナは動揺を漏らしたが、だがすぐに平静を取り戻しそう男へと叫んだ。

 「えぇ、私を呼んだのはそこの王子ですよ」

 「っ!」

 しかし、そのレイナの言葉に対する男の返答は酷く淡白なものだった。
 そう、まるでレイナなど一切きにする必要がないとでも言いたげな。
 そしてその言葉にレイナはあっさりと激昂する。

 「貴女を裁くためにこの場に来てくれと、そう頼まれましたので」

 「えっ?」

 「あ、そこにいる平民の方々の証言で貴女は有罪ですので」

 だが、次の瞬間男の言葉にレイナは言葉を失った。
 その目は今の状況が分からないことを示すかのように大きく見開かれていて……

 「なっ!」

 そして次の瞬間、ようやく状況を悟ってその顔から再度血の気が引いていった。
 何故ここに裁判官がいるのか、それは酷く簡単なことだ。
 つまり王子が全てこの場を仕組んでいたのだ。
 平民は決して貴族にとって何の利用価値も存在しない。
 だからレイナは私を嵌めるために平民を利用した。

 ーーー そして王子は、そうすることをわかっていて、罠を作ったのだ。

 普段ならば平民を虐めたなど何の罪にとらわれることはないだろう。
 それが貴族という人間のやり方で、だが今はちがう。
 本来貴族の味方であるはずの裁判官を味方にした王子がレイナを裁こうとしているのだから。

 「ちがっ」

 そしてそのことに思い至ったレイナは顔を蒼白にして何か叫ぼうとする。
 王子が今、私に味方し、自分を裁こうとしているその状況に気づいたレイナはこのままでは自分が裁かれてしまうことに気づいて何事かを叫ぼうとする。

 「ふざけるな!今更言い逃れできると思ってんのか!」

 「そうだ!全部お前らがやったんだろうが!俺たちを見下し、ものを奪い、暴力を振るう!ルイアはそんなことしてねぇ!」

 「っ!」

 だが、その言葉の先が紡がれることはなかった。
 その前にこの場にいた全員が怒りに満ちた声で叫んだのだ。

 「うん、これは文句なしに有罪だな。今更言い逃れできるなんて思っていないな?」

 そしてその平民達の言葉に圧倒され、動きを止めたレイナにそう王子は笑いかけた……
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