10 / 21
9.スキル
しおりを挟む
「っ!」
「Gyaaa!」
突然真後ろに現れた巨体、そのことに僕の身体は一瞬硬直する。
そして、その停滞を巨人が見逃すことはなかった。
一般的な男子高校生としては少し小柄とはいえ、160センチはある僕の身長の二倍以上の長さを有す丸太のような拳が振るわれ、地面に亀裂が走る。
僕は何とかその拳に反応し、全力で後ろに跳ぶ。
「がっ!」
そして何とか直撃を免れるが、だがその衝撃波は避けることが出来ず、壁に叩きつけられる。
鈍い痛みが背中に走り、肺から空気が絞り出されて息が出来なくなる。
その一連の動きだけで僕は目の前に立つ巨人はサイクロプスであることを悟る。
サイクロプス、それは僕が王宮の図鑑で知った下層の魔物。
1つだけの目は魔力をもとらえ、その巨体から放たれる攻撃は硬い迷宮の壁さえも砕く。
さらに厄介なのはその身体を覆う酷く硬い鋼鉄の皮膚。
「難易度高すぎだろ………」
そしてそんな化け物との遭遇に、僕は乾いた笑いを漏らす。
俺の方へとゆっくりと歩いて来るサイクロプスには絶対に勝てるという確信からか、牙の見える口元には笑みが浮かんでいる。
その笑みに一瞬僕の心から恐怖が弱まり、舐められたという屈辱とその笑みを潰したいという怒りが湧き出る。
「ここは切り札を切るしかないのか……」
だが、その激情は直ぐに消えた。
いや、目の前に立つ巨体の威圧に維持できなくなったとでも言うべきか。
サイクロプスと戦って僕が勝てる確率、それは多めに見積もっても4割を切る。
今までの鍛錬に、そしてスキルで得た補正を考えてもそれ以上は絶対に超えない。
この場を確実に切り抜ける方法、それは切り札を最強のスキルを使うことだけ。
「畜生、何でこんな超難易度に挑まないといけないのか……」
そして、そのことを悟りながら僕は剣を抜いた。
勝てる可能性がどれほど低いのかそのことを僕は知っている。
「だけど、あのスキルを使えば僕をこの下層に落としたという事実さえ無くなってしまう……なら、まだその方法はきらない」
「Gya!」
僕の独白にサイクロプスが意味がわからないとでもいうように、苛立ちの混じった声を上げる。
「僕はクラスメイト全員で生き残るともう決めている。だったら、僕をこの場所に落としたやつの気持ちも知らなければならない」
「Gyaaa!」
「っ!」
サイクロプスは腕を横に薙ぎ払い、そしてその攻撃を完全に避けきれず僕は再度吹き飛ばされる。
だが、直ぐに僕は身体に走る痛みを無視して立ち上がり笑う。
「やり直すのは、僕ならば簡単だ。だから、今は全力で抗わせてもらおう」
「Gyaaa!」
その僕の宣言が終わるか終わらないかの時に再度サイクロプスの拳が僕を襲う。
しかし僕はその拳に向かって雄叫びを足を踏み出す。
「うぉぉぉぉおおお!」
そしてその瞬間、僕の2つある内のスキルの内、身体能力を上げる"暗殺者の才能"が発動した………
「Gyaaa!」
突然真後ろに現れた巨体、そのことに僕の身体は一瞬硬直する。
そして、その停滞を巨人が見逃すことはなかった。
一般的な男子高校生としては少し小柄とはいえ、160センチはある僕の身長の二倍以上の長さを有す丸太のような拳が振るわれ、地面に亀裂が走る。
僕は何とかその拳に反応し、全力で後ろに跳ぶ。
「がっ!」
そして何とか直撃を免れるが、だがその衝撃波は避けることが出来ず、壁に叩きつけられる。
鈍い痛みが背中に走り、肺から空気が絞り出されて息が出来なくなる。
その一連の動きだけで僕は目の前に立つ巨人はサイクロプスであることを悟る。
サイクロプス、それは僕が王宮の図鑑で知った下層の魔物。
1つだけの目は魔力をもとらえ、その巨体から放たれる攻撃は硬い迷宮の壁さえも砕く。
さらに厄介なのはその身体を覆う酷く硬い鋼鉄の皮膚。
「難易度高すぎだろ………」
そしてそんな化け物との遭遇に、僕は乾いた笑いを漏らす。
俺の方へとゆっくりと歩いて来るサイクロプスには絶対に勝てるという確信からか、牙の見える口元には笑みが浮かんでいる。
その笑みに一瞬僕の心から恐怖が弱まり、舐められたという屈辱とその笑みを潰したいという怒りが湧き出る。
「ここは切り札を切るしかないのか……」
だが、その激情は直ぐに消えた。
いや、目の前に立つ巨体の威圧に維持できなくなったとでも言うべきか。
サイクロプスと戦って僕が勝てる確率、それは多めに見積もっても4割を切る。
今までの鍛錬に、そしてスキルで得た補正を考えてもそれ以上は絶対に超えない。
この場を確実に切り抜ける方法、それは切り札を最強のスキルを使うことだけ。
「畜生、何でこんな超難易度に挑まないといけないのか……」
そして、そのことを悟りながら僕は剣を抜いた。
勝てる可能性がどれほど低いのかそのことを僕は知っている。
「だけど、あのスキルを使えば僕をこの下層に落としたという事実さえ無くなってしまう……なら、まだその方法はきらない」
「Gya!」
僕の独白にサイクロプスが意味がわからないとでもいうように、苛立ちの混じった声を上げる。
「僕はクラスメイト全員で生き残るともう決めている。だったら、僕をこの場所に落としたやつの気持ちも知らなければならない」
「Gyaaa!」
「っ!」
サイクロプスは腕を横に薙ぎ払い、そしてその攻撃を完全に避けきれず僕は再度吹き飛ばされる。
だが、直ぐに僕は身体に走る痛みを無視して立ち上がり笑う。
「やり直すのは、僕ならば簡単だ。だから、今は全力で抗わせてもらおう」
「Gyaaa!」
その僕の宣言が終わるか終わらないかの時に再度サイクロプスの拳が僕を襲う。
しかし僕はその拳に向かって雄叫びを足を踏み出す。
「うぉぉぉぉおおお!」
そしてその瞬間、僕の2つある内のスキルの内、身体能力を上げる"暗殺者の才能"が発動した………
0
お気に入りに追加
1,404
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
元ヤンは公爵令嬢の姐さんに一生ついていきます
桜杜あさひ
ファンタジー
「小説家になろう」で大幅改稿を予定しています。
女子高校生である美咲は、日本でヤンキーとして関東制圧を目指していた。ある日、単車を乗り回していたら崖から落ちてしまい、異世界へと転移してしまう。運よく公爵家に拾われた美咲は公爵令嬢のマイア・ヒューズの侍女として公爵家で働くことになる。美咲は公爵であるマイアの父に学園にもついていくように頼まれる。学園でマイアは目の敵にされていた。それを目の当たりにした美咲は「姐さん、この国のテッペンとりましょう!」とマイアに提案する。そして、2人の国盗りの物語が始まる。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!
青空一夏
ファンタジー
婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。
私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。
ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、
「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」
と、言い出した。
さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。
怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?
さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定)
※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です)
※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。
※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる