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確かに僕は魔術師でありながら近接戦闘もこなす。
………けれどもそれは魔術の方をおろそかにしているのと同義ではなかった。
何せ僕は魔術師の本分を果たしながら、その上で戦士としても動いている、いや動かざるを得なかったのだから。
考えなしに大軍に突撃するラードの尻拭いをしつつ、全く役に立たないお荷物と、聖女を庇いながらの激戦。
そんな地獄を乗り切るには僕は人並みはずれた力を得るしかなかったのだ。
なのにそのことに関して助けてきた人間から馬鹿にされたのだ。
その言い分にさすがの僕も、ルーナの時とは違いシルエの言い分に怒りを覚え、怯えるシルエを僕は殺気さえこもった目で睨む。
確かに僕だってこのパーティに入れたことに喜びを感じていた。
………けれどもそれは最初の頃だけだった。
余りにひどい境遇に僕はすぐに音を上げることとなったのだ。
しかし一度戦功をあげた僕はその有用さ故にこのパーティーから逃げ出すことは出来なくなっていた。
どれほど僕がこのパーティーを抜けたいと思っているかラードたちは知らない。
追放すると言えば僕がやめてくれと懇願すると思いこんでいるのだ。
つまりラードたちはいくら口で僕を追放するなどいいながらも、本当にそんなことをするつもりはない。
そのことに最初僕は追放の言葉を真に受けてしまった故の失望を抱いていた。
けれどももう僕はいくらラードが口でなにを言おうと決して行動を起こすことはないことを理解していた。
なぜなら僕はこのパーティーの中でなくてはならない戦力であるのだから。
だから僕は傷つけることが出来ないのを理解しながらも、今後よけいなことを言わないようにとシルエを威圧する。
ーーー そしてその行動が僕に思わぬ幸運をもたらすことになった。
「シュエラ、今までは許してやっていたが残念ながらもう今回は看過できない。仲間を傷つけようとした罰でお前をパーティーから追放する!」
シルエを睨む僕を見てラードの唇がまるでいい口実を見つけたというように弧を描き、そして次の瞬間僕の身体が光り輝き勇者パーティーであることを示す紋章、今まで僕を縛っていた鎖が今霧散する。
「………やっと、自由に」
そのとき、この先伝説の魔術師と呼ばれる怪物が戒めから解き放たれたのだった………
………けれどもそれは魔術の方をおろそかにしているのと同義ではなかった。
何せ僕は魔術師の本分を果たしながら、その上で戦士としても動いている、いや動かざるを得なかったのだから。
考えなしに大軍に突撃するラードの尻拭いをしつつ、全く役に立たないお荷物と、聖女を庇いながらの激戦。
そんな地獄を乗り切るには僕は人並みはずれた力を得るしかなかったのだ。
なのにそのことに関して助けてきた人間から馬鹿にされたのだ。
その言い分にさすがの僕も、ルーナの時とは違いシルエの言い分に怒りを覚え、怯えるシルエを僕は殺気さえこもった目で睨む。
確かに僕だってこのパーティに入れたことに喜びを感じていた。
………けれどもそれは最初の頃だけだった。
余りにひどい境遇に僕はすぐに音を上げることとなったのだ。
しかし一度戦功をあげた僕はその有用さ故にこのパーティーから逃げ出すことは出来なくなっていた。
どれほど僕がこのパーティーを抜けたいと思っているかラードたちは知らない。
追放すると言えば僕がやめてくれと懇願すると思いこんでいるのだ。
つまりラードたちはいくら口で僕を追放するなどいいながらも、本当にそんなことをするつもりはない。
そのことに最初僕は追放の言葉を真に受けてしまった故の失望を抱いていた。
けれどももう僕はいくらラードが口でなにを言おうと決して行動を起こすことはないことを理解していた。
なぜなら僕はこのパーティーの中でなくてはならない戦力であるのだから。
だから僕は傷つけることが出来ないのを理解しながらも、今後よけいなことを言わないようにとシルエを威圧する。
ーーー そしてその行動が僕に思わぬ幸運をもたらすことになった。
「シュエラ、今までは許してやっていたが残念ながらもう今回は看過できない。仲間を傷つけようとした罰でお前をパーティーから追放する!」
シルエを睨む僕を見てラードの唇がまるでいい口実を見つけたというように弧を描き、そして次の瞬間僕の身体が光り輝き勇者パーティーであることを示す紋章、今まで僕を縛っていた鎖が今霧散する。
「………やっと、自由に」
そのとき、この先伝説の魔術師と呼ばれる怪物が戒めから解き放たれたのだった………
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