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第21話 拒絶の理由
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「……すまなかった」
私の言葉を聞いた後、アルフォートは少しの間黙り込み、それから小さくそう呟いて魔力を霧散させた。
「ふぅ……」
その瞬間身体に感じていた、あののしかかるような感覚が消えて、私は安堵の息を漏らしながら立ち上がる。
それから、幾ら何でもこんなことをしなくても良いではないか、とアルフォートに怒ろうとして。
「あ、あの、なんですか」
その時になってようやくアルフォートの私を見る目がおかしいことに気づいた。
アルフォートの目、それは驚愕のためか大きく見開かれていた。
そしてその目には私に対する不信感がありありと浮かんでいて、私は自分が何かまずいことをしたのかと焦る。
……確かにあの空気の中で魔力を抑えてくださいとか言うのはおかしかったかもしれない。
でも、それは全てアルフォートが悪いのであって……
と、私は言い訳しようとして、しかしその前にアルフォートは口を開いた。
「……君は、私を恐れなのか」
「……っ!」
……その時、アルフォートが告げた言葉に浮かんでいたのは拒絶されることに対する恐怖だった。
アルフォートは孤独で、けれども彼がそれを望んだわけではなかった。
だからこそ、他人に拒絶されることで彼は酷く傷つくのだ。
「……いや、隠さなくていい。私のことが怖いんだろう」
「……え?」
ーーー けれども、アルフォートは他人から拒絶されることを思い込んでいた。
……その時になって、ようやく私は気づく。
アルフォートの持つ力、それがどれだけ彼を苦しめてきたのかを。
魔境の氾濫、あの未曾有の危機を切り抜けられたのはアルフォートという規格外な魔道士がいたからだろう。
けれども、その魔境での活躍の後アルフォートを待っていたのは竜神と呼ばれ、恐れられる日々だった。
……その当時、アルフォートは未だ10歳にも満たない年齢であったにもかかわらず、最悪の戦場に連れ出され、そして王国中の恐怖の対象となった。
それは彼にとってどれほどの苦痛だったのか。
……いや、アルフォートの態度を見る限り彼が恐れられていたのはもっと前からかもしれない。
ほんの小さな子供が、戦場に駆り出されて、その上その功績を無視して恐怖の対象となる。
そんなもの、理解することのできる人間なんてこの王国にひとりもいないはずだろう。
けれども、何故か私はアルフォートの気持ちの理解していた。
「……アルフォート様、私は貴方を恐れてなんていません」
アルフォートが今まで自分と他人の間に作っていた壁、それは拒絶される痛みを減らすための防壁だったこと。
「……心配しなくともこの家から王宮には無事に届ける。だから恐怖を我慢する必要なんてない」
そんな風に私を突き放すような言葉を告げながらも、歪んでいる顔。
それは私に対してアルフォートも親愛の情を抱いてくれていた証拠であること。
「もう一度言います。私は貴方なんて怖くない」
「……っ!」
ーーー そして今、アルフォートがどんな言葉を求めているかさえ、私は理解していた。
「……言っただろう。我慢する必要なんて」
だから私は未だ私の言葉が認められず、ぐだぐだと言葉を重ねるアルフォートの態度を無視して笑い、大声で叫んだ。
「アルフォート様、ありがとうございます!」
「ーーーっ!」
その私の言葉に、アルフォートの目は驚愕で見開かれた……
私の言葉を聞いた後、アルフォートは少しの間黙り込み、それから小さくそう呟いて魔力を霧散させた。
「ふぅ……」
その瞬間身体に感じていた、あののしかかるような感覚が消えて、私は安堵の息を漏らしながら立ち上がる。
それから、幾ら何でもこんなことをしなくても良いではないか、とアルフォートに怒ろうとして。
「あ、あの、なんですか」
その時になってようやくアルフォートの私を見る目がおかしいことに気づいた。
アルフォートの目、それは驚愕のためか大きく見開かれていた。
そしてその目には私に対する不信感がありありと浮かんでいて、私は自分が何かまずいことをしたのかと焦る。
……確かにあの空気の中で魔力を抑えてくださいとか言うのはおかしかったかもしれない。
でも、それは全てアルフォートが悪いのであって……
と、私は言い訳しようとして、しかしその前にアルフォートは口を開いた。
「……君は、私を恐れなのか」
「……っ!」
……その時、アルフォートが告げた言葉に浮かんでいたのは拒絶されることに対する恐怖だった。
アルフォートは孤独で、けれども彼がそれを望んだわけではなかった。
だからこそ、他人に拒絶されることで彼は酷く傷つくのだ。
「……いや、隠さなくていい。私のことが怖いんだろう」
「……え?」
ーーー けれども、アルフォートは他人から拒絶されることを思い込んでいた。
……その時になって、ようやく私は気づく。
アルフォートの持つ力、それがどれだけ彼を苦しめてきたのかを。
魔境の氾濫、あの未曾有の危機を切り抜けられたのはアルフォートという規格外な魔道士がいたからだろう。
けれども、その魔境での活躍の後アルフォートを待っていたのは竜神と呼ばれ、恐れられる日々だった。
……その当時、アルフォートは未だ10歳にも満たない年齢であったにもかかわらず、最悪の戦場に連れ出され、そして王国中の恐怖の対象となった。
それは彼にとってどれほどの苦痛だったのか。
……いや、アルフォートの態度を見る限り彼が恐れられていたのはもっと前からかもしれない。
ほんの小さな子供が、戦場に駆り出されて、その上その功績を無視して恐怖の対象となる。
そんなもの、理解することのできる人間なんてこの王国にひとりもいないはずだろう。
けれども、何故か私はアルフォートの気持ちの理解していた。
「……アルフォート様、私は貴方を恐れてなんていません」
アルフォートが今まで自分と他人の間に作っていた壁、それは拒絶される痛みを減らすための防壁だったこと。
「……心配しなくともこの家から王宮には無事に届ける。だから恐怖を我慢する必要なんてない」
そんな風に私を突き放すような言葉を告げながらも、歪んでいる顔。
それは私に対してアルフォートも親愛の情を抱いてくれていた証拠であること。
「もう一度言います。私は貴方なんて怖くない」
「……っ!」
ーーー そして今、アルフォートがどんな言葉を求めているかさえ、私は理解していた。
「……言っただろう。我慢する必要なんて」
だから私は未だ私の言葉が認められず、ぐだぐだと言葉を重ねるアルフォートの態度を無視して笑い、大声で叫んだ。
「アルフォート様、ありがとうございます!」
「ーーーっ!」
その私の言葉に、アルフォートの目は驚愕で見開かれた……
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