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閉まる扉
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そして次に私が目を覚ました時、それは牢屋の中だった。
「っ! なぜ私がここにいる! 誰か、早く来い! 私は第一皇子カイザードだぞ!」
必死に騒ぎ、私は牢を揺らす。
しかし、その声に反応する人間はいない。
それでも必死に叫ぶと扉が開き、ようやく一人の看守がのっそりと現れた。
「うるせえな、こんな夜遅くに……」
「うるさい! いいから私をだせ、私は……」
「あんたはもう王子じゃない。ただの犯罪者だぞ」
「……は?」
信じられない言葉に、呆然とする私に看守はにやりと笑い、そしてべらべらと話し始めた。
それは、私が意識を失ってからの話だった。
私が気絶してから、ライハートはそのことを大々的に発表したらしい。
それも、私がマレシアを襲おうとしたが故に捕縛したと。
そしてまた、私が自白したという体で、こう暴露した。
……マレシアに偽聖女として活動するように強いたのは私だったということを。
マレシアはあくまで、王国への慈愛と私の命令によって偽聖女になってしまっただけで、他の人間を騙す気はなくいつか打ち明けるつもりだった。
けれど、私がそのことを認めることなかった。
その上、本物の聖女が現れた時には、一切の責任をかぶせようとした。
そんな経緯がありながら、マレシアを逆恨みしたのが、今回の一件。
帝国の第二王子として、今回の件について王国に正式に抗議する。
そう、ライハートは多くの来賓、そして王国の貴族の前で告げた。
……それこそが、私が寝ている数時間の間に起きた、私が罪人となった経緯だった。
「ふ、ふざけるな!」
その経緯を聞いた私は、耐えきれずそう叫んでいた。
目の前の看守をにらみながら、私は叫ぶ。
「そんな不名誉きわまりないでたらめを信じるものがいるか!」
「王国の人間は一切の反論なく謝罪したぞ。現王国トップの第二王子……いや、王太子様は自らライハート様に頭を下げたとよ」
「……は?」
その言葉に、私は一瞬言葉を失う。
それも仕方ないだろう。
……その看守の言葉が指すのは、第二王子が完全に私から権力を奪ったことを示していたのだから。
信じることができず、呆然とたたずむ私に、さもおかしそうに看守は笑う。
「わかったか、元王子様よ? お前は誤魔化しようもなくただの罪人なんだよ」
「っ! ふざけるな、私が今までそれだけのことを王国に……!」
「……ふざけるな? それはこっちのせりふだ」
その瞬間、看守の声を聞いた私の背筋は粟立った。
「王国の為になるんなら、潔く身を差し出すんだろう?」
様子を激変させた看守は、自身の顔を隠していた鎧から、顔をのぞかせる。
……そして、その下からのぞいた顔に私は絶句することになった。
「依然、俺にいってくれたみたいによ?」
──なぜなら、その男は私が依然冤罪をかけて爵位を奪った貴族なのだから。
「……お前、は」
「どうもお世話になりましたね、王子様。おかげで俺は今やこんな牢獄の看守だよ」
そういって男は、目に憎悪の炎を浮かべたまま、口元を歪めた。
「まあ、今はそんな野暮な話もいいか。今くらい存分に自分の境遇を悲しむ時間をやるさ」
そういって、看守は笑いながら奥、扉の方へとへと歩いていく。
「時間はたっぷりあるんだからな」
そしてゆっくりと扉はしまる。
「……そんな、嘘だ」
呆然と呟かれた私の言葉に、返答する声はなかった。
「っ! なぜ私がここにいる! 誰か、早く来い! 私は第一皇子カイザードだぞ!」
必死に騒ぎ、私は牢を揺らす。
しかし、その声に反応する人間はいない。
それでも必死に叫ぶと扉が開き、ようやく一人の看守がのっそりと現れた。
「うるせえな、こんな夜遅くに……」
「うるさい! いいから私をだせ、私は……」
「あんたはもう王子じゃない。ただの犯罪者だぞ」
「……は?」
信じられない言葉に、呆然とする私に看守はにやりと笑い、そしてべらべらと話し始めた。
それは、私が意識を失ってからの話だった。
私が気絶してから、ライハートはそのことを大々的に発表したらしい。
それも、私がマレシアを襲おうとしたが故に捕縛したと。
そしてまた、私が自白したという体で、こう暴露した。
……マレシアに偽聖女として活動するように強いたのは私だったということを。
マレシアはあくまで、王国への慈愛と私の命令によって偽聖女になってしまっただけで、他の人間を騙す気はなくいつか打ち明けるつもりだった。
けれど、私がそのことを認めることなかった。
その上、本物の聖女が現れた時には、一切の責任をかぶせようとした。
そんな経緯がありながら、マレシアを逆恨みしたのが、今回の一件。
帝国の第二王子として、今回の件について王国に正式に抗議する。
そう、ライハートは多くの来賓、そして王国の貴族の前で告げた。
……それこそが、私が寝ている数時間の間に起きた、私が罪人となった経緯だった。
「ふ、ふざけるな!」
その経緯を聞いた私は、耐えきれずそう叫んでいた。
目の前の看守をにらみながら、私は叫ぶ。
「そんな不名誉きわまりないでたらめを信じるものがいるか!」
「王国の人間は一切の反論なく謝罪したぞ。現王国トップの第二王子……いや、王太子様は自らライハート様に頭を下げたとよ」
「……は?」
その言葉に、私は一瞬言葉を失う。
それも仕方ないだろう。
……その看守の言葉が指すのは、第二王子が完全に私から権力を奪ったことを示していたのだから。
信じることができず、呆然とたたずむ私に、さもおかしそうに看守は笑う。
「わかったか、元王子様よ? お前は誤魔化しようもなくただの罪人なんだよ」
「っ! ふざけるな、私が今までそれだけのことを王国に……!」
「……ふざけるな? それはこっちのせりふだ」
その瞬間、看守の声を聞いた私の背筋は粟立った。
「王国の為になるんなら、潔く身を差し出すんだろう?」
様子を激変させた看守は、自身の顔を隠していた鎧から、顔をのぞかせる。
……そして、その下からのぞいた顔に私は絶句することになった。
「依然、俺にいってくれたみたいによ?」
──なぜなら、その男は私が依然冤罪をかけて爵位を奪った貴族なのだから。
「……お前、は」
「どうもお世話になりましたね、王子様。おかげで俺は今やこんな牢獄の看守だよ」
そういって男は、目に憎悪の炎を浮かべたまま、口元を歪めた。
「まあ、今はそんな野暮な話もいいか。今くらい存分に自分の境遇を悲しむ時間をやるさ」
そういって、看守は笑いながら奥、扉の方へとへと歩いていく。
「時間はたっぷりあるんだからな」
そしてゆっくりと扉はしまる。
「……そんな、嘘だ」
呆然と呟かれた私の言葉に、返答する声はなかった。
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