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呆然とする私に、ライハートは笑顔で続ける。
「聖獣にまで見捨てられた、いや、敵対された気分はどうだい? そうとう悲惨な様子だったけど」
「……っ!」
その言葉に、私は理解する。
何らの方法でライハートは私の行動をのぞいていたことを。
そう、あのざまを見られていたことを。
「お前、さえ!」
その瞬間、私の頭は怒りに支配されることとなった。
胸を支配するその苛立ちのまま、私はライハートを睨みつける。
先ほど聖獣を前にして感じていた恐怖はもうなかった。
いや、ないとは違うのだろう。
あの恐怖は今、私の体を燃えつくさんばかりの怒りに転じていた。
「お前さえいなければ……!」
それは、この男さえいなければ私があんな思いをすることはなかったという思いからのものだった。
実際、目の前の男がいなければ、私がここまで追いつめられることはなかっただろう。
マレシアを成り立て、あらゆる邪魔をしてきた目の前の男が、私は憎くて仕方がなかった。
「生きて帰れると思うなよ!」
その思いとともに、私はあるものを懐から取り出す。
それは本来マレシアに使おうと考えていたとっておきの品。
魔術師の魔力を封じる薬が入った瓶だった。
それの中身を私は、ライハートへと投げつけた。
その薬は本来、接種することによって最大の効果を発揮する。
いくら凄腕の魔術師といえ、数ヶ月間もの間魔力を扱えなくすることができるのだ。
それだけの薬は、相手に投げつけただけでも、もちろん効果があった。
「……っ」
そして、その薬をライハートはもろにかぶる。
なんの疑いもせず、頭から。
それを確認し、私は腰から剣を抜き、走り出した。
一歩、一歩とライハートに近づくの感じながら、私は笑いそうになるのを堪えるのに必死だった。
いくら龍殺しとはいえ、この薬を受けて魔力は使えないだろう。
そうなれば、私にも殺すことなど容易いに決まっている。
そして、殺してしまってもここではその口実さえ作れる。
何せ、ここは王族の秘密の部屋だ。
そんな部屋に許可なく入ってきた人間を暗殺者と思って殺してしまったとしても、誰が責められる?
むしろ、龍殺しにかった私の実力に畏怖する人間も出てくるだろう。
ライハートを剣の間合いに捕らえ、とうとう私は耐えきれず口を笑みの形に歪める。
剣をライハートの頭上に振り下ろしながら、私の頭にはまっぷたつになったその姿が浮かんでいた。
そして、そんな私の妄想は。
「がっ!」
──ライハートが軽く腕を振るっただけで、あっさりと崩れ去った。
剣が折れ、私は無様に地面を転がる。
視界は真っ赤に染まっていて、額から出血していることを悟る。
……そんな状況になっても、私は何が起きたのか理解できなかった。
どうして? あの薬は確かに? そもそも、どうしてあんな軽く腕を振っただけで剣が折れた?
そんな思考が、私の脳を支配する。
場違いな程変わらないライハートの声が響いたのは、その時だった。
「確かにこれはなかなかの薬だね。この僕が一瞬魔術を構成できなかった」
真っ赤な世界の中、ライハートは手のひらに炎の魔術を展開する。
そのゆらゆらと揺れる炎を、私は呆然と見上げることしかできない。
そんな私ににっこりと笑い、ライハートは告げた。
「で? この程度で龍を喰らった人間を抑えることができる、やんてどうして思えたの?」
そのときになって、ようやく私は理解した。
……目の前の男は、聖獣ともひけをとらない存在だったことを。
「聖獣にまで見捨てられた、いや、敵対された気分はどうだい? そうとう悲惨な様子だったけど」
「……っ!」
その言葉に、私は理解する。
何らの方法でライハートは私の行動をのぞいていたことを。
そう、あのざまを見られていたことを。
「お前、さえ!」
その瞬間、私の頭は怒りに支配されることとなった。
胸を支配するその苛立ちのまま、私はライハートを睨みつける。
先ほど聖獣を前にして感じていた恐怖はもうなかった。
いや、ないとは違うのだろう。
あの恐怖は今、私の体を燃えつくさんばかりの怒りに転じていた。
「お前さえいなければ……!」
それは、この男さえいなければ私があんな思いをすることはなかったという思いからのものだった。
実際、目の前の男がいなければ、私がここまで追いつめられることはなかっただろう。
マレシアを成り立て、あらゆる邪魔をしてきた目の前の男が、私は憎くて仕方がなかった。
「生きて帰れると思うなよ!」
その思いとともに、私はあるものを懐から取り出す。
それは本来マレシアに使おうと考えていたとっておきの品。
魔術師の魔力を封じる薬が入った瓶だった。
それの中身を私は、ライハートへと投げつけた。
その薬は本来、接種することによって最大の効果を発揮する。
いくら凄腕の魔術師といえ、数ヶ月間もの間魔力を扱えなくすることができるのだ。
それだけの薬は、相手に投げつけただけでも、もちろん効果があった。
「……っ」
そして、その薬をライハートはもろにかぶる。
なんの疑いもせず、頭から。
それを確認し、私は腰から剣を抜き、走り出した。
一歩、一歩とライハートに近づくの感じながら、私は笑いそうになるのを堪えるのに必死だった。
いくら龍殺しとはいえ、この薬を受けて魔力は使えないだろう。
そうなれば、私にも殺すことなど容易いに決まっている。
そして、殺してしまってもここではその口実さえ作れる。
何せ、ここは王族の秘密の部屋だ。
そんな部屋に許可なく入ってきた人間を暗殺者と思って殺してしまったとしても、誰が責められる?
むしろ、龍殺しにかった私の実力に畏怖する人間も出てくるだろう。
ライハートを剣の間合いに捕らえ、とうとう私は耐えきれず口を笑みの形に歪める。
剣をライハートの頭上に振り下ろしながら、私の頭にはまっぷたつになったその姿が浮かんでいた。
そして、そんな私の妄想は。
「がっ!」
──ライハートが軽く腕を振るっただけで、あっさりと崩れ去った。
剣が折れ、私は無様に地面を転がる。
視界は真っ赤に染まっていて、額から出血していることを悟る。
……そんな状況になっても、私は何が起きたのか理解できなかった。
どうして? あの薬は確かに? そもそも、どうしてあんな軽く腕を振っただけで剣が折れた?
そんな思考が、私の脳を支配する。
場違いな程変わらないライハートの声が響いたのは、その時だった。
「確かにこれはなかなかの薬だね。この僕が一瞬魔術を構成できなかった」
真っ赤な世界の中、ライハートは手のひらに炎の魔術を展開する。
そのゆらゆらと揺れる炎を、私は呆然と見上げることしかできない。
そんな私ににっこりと笑い、ライハートは告げた。
「で? この程度で龍を喰らった人間を抑えることができる、やんてどうして思えたの?」
そのときになって、ようやく私は理解した。
……目の前の男は、聖獣ともひけをとらない存在だったことを。
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