偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸

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 その記事に書かれていたのは、王国で偽物と断じられてからのマレシアの活躍がかかれていた。

 英雄たる第二王子とともに様々な問題を解決したこと。
 魔妖精という恐るべき存在と人間の橋渡しを行ったこと。

 さらに、暗にマレシアを無能と断じた王国が無能だと言いたげな噂も広がっていると書かれていた。
 それを見て、再度私は唇をかみしめる。

「……ふざけるな、こんなこと想像できる訳がないだろうが!」

 力を込めて、私は記事を破り捨てる。
 けれど、そんなことをしても一切私の苛立ちがはれることはなかった。
 その苛立ちの矛先は、マレシアを迎え入れた帝国にも向かう。

「くそ、くそ! 忌々しい帝国が! 忌み子と言っていた第二王子に良いようにされよって!」

 そういいながらも、私は理解していた。
 かつてならともかく、今は第二王子ライハートは安易に手を出せる存在ではないと。
 何せ、龍殺しというかつてない偉業を果たした彼は、帝国において王国の聖女のような扱いを受けているのだから。
 ……いや、数々の事情がありそれ以上の権限を持っているとさえ言われている。

 この状況では、精霊を魔妖精と言い続けることは、ライハートとマレシアを敵に回すことを意味していた。

 当たり前だが、そんな行い続ける訳にいかないことぐらい私も理解していた
 できる限り早く方針を転換することを求められていて……しかしそれが第二王子陣営につきこむ隙を与えると私は理解していた。
 とはいえ、このまま帝国と敵対する態度だといずれ第二王子達の陣営は私に追いてくるだろう。
 急激な方向転換も、現状維持さえ許されない。
 その現状に私は頭を抱える。

「一体どうすればこの状況を……いや」

 ふと、私の脳裏にある考えが浮かんだのはその時だった。

「……理由を作ればいいだけじゃないか」

 その瞬間、私の顔には笑みが浮かんでいた。
 今までとは打って変わり、機嫌の良さを隠せない様子で私は笑う。

「はは! そうだ、どうして気づかなかったのか! 同じことをやればいいだけの至極簡単な話ではないか!」

 そう言って、私はすぐに帝国へと手紙を送った。
 マレシアへと、帝国の聖女として祝いたい、そして魔妖精について謝罪したいというもの。
 そしてそのお手紙を送った時には、私は決めていた。

 ──カシュアを偽聖女に仕立て上げ、全ての罪を着せることを。
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