4 / 24
許されざる言葉
しおりを挟む
「……え?」
まるで想像しなかったマレシアの返答に、カシュアの言葉が止まる。
そして、それは私も同じだった。
マレシアが何故ここまで怒りをあらわにしているのか、私にも理解出来ていなかった。
おそらく、それは私達ではなく、この場にいる多くの人間もそうだろう。
そんな私達に対し、マレシアはゆっくりと口を開く。
「あの子達がおぞましい? そんなことあり得る訳がないでしょう! あの子達はここまでこの国に尽くしてくれているんですよ!」
「……あの子達? それは、魔妖精のことを言っているのか?」
その瞬間、私は思わずそう問いかけていた。
どれだけその存在が脅威なのかについては、王国ではしらないものはいない。
それ故に思わずそう問いかけてしまった私に対し、マレシアははっきりと怒りを顔に浮かべた。
「その魔妖精という言葉に関してもよろしいですか?」
「……は?」
「あの子達は自分のことを精霊と名乗っています。そのような呼び方はやめてください」
「まって、貴女は何をいってるの!?」
今まで黙り込んでいたのが嘘のように話し始めたマレシアに、耐えきれずカシュアがそう口を挟む。
「まよう……精霊が今まで起こした事件の悲惨さをしらないの?」
「違います。それを引き起こそうとしたのは全て人間です」
きっぱりとマレシアはそう断言し、広場を見渡す。
「今までの事件はあの子達を利用しようとした人間が破滅しただけの話しです。きちんと根気よく話せば、あの子達はわかってくれます。──聖女の代わりにこの国を守ってくれたように」
それは、暗に自身が偽物であったと認める言葉だった。
けれど、それにも関わらずマレシアの顔に一切の後ろめたさも存在しなかった。
それどころか、胸をはってマレシアは告げる。
「だから、あの子達を無意味におそれるのはやめてあげてください。あの子達を扱う魔術は難易度も高く、禁忌であっても仕方ないかもしれない。でも、あの子達は決して邪悪ではない」
その言葉に、広場が静まりかえる。
私の隣にいるカシュアさえ口を閉じていて……そのことに私は焦燥を覚えることになった。
マレシアはただ、魔妖精のイメージをあげたかっただけなのだろう。
それでも、この演説は人々の心に響いてしまった。
しかし、ここでマレシアのイメージがあがると私の計画に支障がでる。
冤罪を着せてしまった以上、もう私とマレシアの和解はあり得ない。
そうである以上、マレシアが王国に残ってもらう訳にはいかないのだ。
そう判断し、私は叫ぶ。
「……マレシア、いくら必死に手を尽くそうと禁忌を行った罪は軽くならないぞ」
「なっ! ちが……!」
「お願いだから認めてくれ、マレシア。……これ以上、私が重い罪を着せなくていけなくなることはやめてくれ」
「……っ!」
私はさも悲痛そうに、懇願する。
顔を隠し、見ていられないといった様子で。
そんな私の様子に、広場にいる民衆の空気が変わってくる。
やはり言い訳だったのかもしれない、そういった空気が。
それに内心ほくそ笑みつつ、私はとどめとばかりに告げる。
「マレシア、どう言おうと禁忌が禁忌であることは変わらないんだ。魔妖精は魔妖精でしかないことも」
瞬間、はっきりと広場の空気が変わり、私は完全に隠した顔の下で笑みを浮かべる。
これで、追放しても問題はないと判断して。
けれど、その私の笑みはすぐに固まることになった。
「そうですか、そのつもりなんですね」
……ぼそりと呟いたマレシアのつぶやきを耳にして。
まるで想像しなかったマレシアの返答に、カシュアの言葉が止まる。
そして、それは私も同じだった。
マレシアが何故ここまで怒りをあらわにしているのか、私にも理解出来ていなかった。
おそらく、それは私達ではなく、この場にいる多くの人間もそうだろう。
そんな私達に対し、マレシアはゆっくりと口を開く。
「あの子達がおぞましい? そんなことあり得る訳がないでしょう! あの子達はここまでこの国に尽くしてくれているんですよ!」
「……あの子達? それは、魔妖精のことを言っているのか?」
その瞬間、私は思わずそう問いかけていた。
どれだけその存在が脅威なのかについては、王国ではしらないものはいない。
それ故に思わずそう問いかけてしまった私に対し、マレシアははっきりと怒りを顔に浮かべた。
「その魔妖精という言葉に関してもよろしいですか?」
「……は?」
「あの子達は自分のことを精霊と名乗っています。そのような呼び方はやめてください」
「まって、貴女は何をいってるの!?」
今まで黙り込んでいたのが嘘のように話し始めたマレシアに、耐えきれずカシュアがそう口を挟む。
「まよう……精霊が今まで起こした事件の悲惨さをしらないの?」
「違います。それを引き起こそうとしたのは全て人間です」
きっぱりとマレシアはそう断言し、広場を見渡す。
「今までの事件はあの子達を利用しようとした人間が破滅しただけの話しです。きちんと根気よく話せば、あの子達はわかってくれます。──聖女の代わりにこの国を守ってくれたように」
それは、暗に自身が偽物であったと認める言葉だった。
けれど、それにも関わらずマレシアの顔に一切の後ろめたさも存在しなかった。
それどころか、胸をはってマレシアは告げる。
「だから、あの子達を無意味におそれるのはやめてあげてください。あの子達を扱う魔術は難易度も高く、禁忌であっても仕方ないかもしれない。でも、あの子達は決して邪悪ではない」
その言葉に、広場が静まりかえる。
私の隣にいるカシュアさえ口を閉じていて……そのことに私は焦燥を覚えることになった。
マレシアはただ、魔妖精のイメージをあげたかっただけなのだろう。
それでも、この演説は人々の心に響いてしまった。
しかし、ここでマレシアのイメージがあがると私の計画に支障がでる。
冤罪を着せてしまった以上、もう私とマレシアの和解はあり得ない。
そうである以上、マレシアが王国に残ってもらう訳にはいかないのだ。
そう判断し、私は叫ぶ。
「……マレシア、いくら必死に手を尽くそうと禁忌を行った罪は軽くならないぞ」
「なっ! ちが……!」
「お願いだから認めてくれ、マレシア。……これ以上、私が重い罪を着せなくていけなくなることはやめてくれ」
「……っ!」
私はさも悲痛そうに、懇願する。
顔を隠し、見ていられないといった様子で。
そんな私の様子に、広場にいる民衆の空気が変わってくる。
やはり言い訳だったのかもしれない、そういった空気が。
それに内心ほくそ笑みつつ、私はとどめとばかりに告げる。
「マレシア、どう言おうと禁忌が禁忌であることは変わらないんだ。魔妖精は魔妖精でしかないことも」
瞬間、はっきりと広場の空気が変わり、私は完全に隠した顔の下で笑みを浮かべる。
これで、追放しても問題はないと判断して。
けれど、その私の笑みはすぐに固まることになった。
「そうですか、そのつもりなんですね」
……ぼそりと呟いたマレシアのつぶやきを耳にして。
100
お気に入りに追加
3,942
あなたにおすすめの小説
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。


【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。


召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。


聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる