偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸

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許されざる言葉

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「……え?」

 まるで想像しなかったマレシアの返答に、カシュアの言葉が止まる。
 そして、それは私も同じだった。
 マレシアが何故ここまで怒りをあらわにしているのか、私にも理解出来ていなかった。
 おそらく、それは私達ではなく、この場にいる多くの人間もそうだろう。
 そんな私達に対し、マレシアはゆっくりと口を開く。

「あの子達がおぞましい? そんなことあり得る訳がないでしょう! あの子達はここまでこの国に尽くしてくれているんですよ!」

「……あの子達? それは、魔妖精のことを言っているのか?」

 その瞬間、私は思わずそう問いかけていた。
 どれだけその存在が脅威なのかについては、王国ではしらないものはいない。
 それ故に思わずそう問いかけてしまった私に対し、マレシアははっきりと怒りを顔に浮かべた。

「その魔妖精という言葉に関してもよろしいですか?」

「……は?」

「あの子達は自分のことを精霊と名乗っています。そのような呼び方はやめてください」

「まって、貴女は何をいってるの!?」

 今まで黙り込んでいたのが嘘のように話し始めたマレシアに、耐えきれずカシュアがそう口を挟む。

「まよう……精霊が今まで起こした事件の悲惨さをしらないの?」

「違います。それを引き起こそうとしたのは全て人間です」

 きっぱりとマレシアはそう断言し、広場を見渡す。

「今までの事件はあの子達を利用しようとした人間が破滅しただけの話しです。きちんと根気よく話せば、あの子達はわかってくれます。──聖女の代わりにこの国を守ってくれたように」

 それは、暗に自身が偽物であったと認める言葉だった。
 けれど、それにも関わらずマレシアの顔に一切の後ろめたさも存在しなかった。
 それどころか、胸をはってマレシアは告げる。

「だから、あの子達を無意味におそれるのはやめてあげてください。あの子達を扱う魔術は難易度も高く、禁忌であっても仕方ないかもしれない。でも、あの子達は決して邪悪ではない」

 その言葉に、広場が静まりかえる。
 私の隣にいるカシュアさえ口を閉じていて……そのことに私は焦燥を覚えることになった。

 マレシアはただ、魔妖精のイメージをあげたかっただけなのだろう。
 それでも、この演説は人々の心に響いてしまった。
 しかし、ここでマレシアのイメージがあがると私の計画に支障がでる。
 冤罪を着せてしまった以上、もう私とマレシアの和解はあり得ない。
 そうである以上、マレシアが王国に残ってもらう訳にはいかないのだ。
 そう判断し、私は叫ぶ。

「……マレシア、いくら必死に手を尽くそうと禁忌を行った罪は軽くならないぞ」

「なっ! ちが……!」

「お願いだから認めてくれ、マレシア。……これ以上、私が重い罪を着せなくていけなくなることはやめてくれ」

「……っ!」

 私はさも悲痛そうに、懇願する。
 顔を隠し、見ていられないといった様子で。
 そんな私の様子に、広場にいる民衆の空気が変わってくる。

 やはり言い訳だったのかもしれない、そういった空気が。

 それに内心ほくそ笑みつつ、私はとどめとばかりに告げる。

「マレシア、どう言おうと禁忌が禁忌であることは変わらないんだ。魔妖精は魔妖精でしかないことも」

 瞬間、はっきりと広場の空気が変わり、私は完全に隠した顔の下で笑みを浮かべる。
 これで、追放しても問題はないと判断して。

 けれど、その私の笑みはすぐに固まることになった。

「そうですか、そのつもりなんですね」

 ……ぼそりと呟いたマレシアのつぶやきを耳にして。
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