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偽りの主犯
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「本当に残念だよ、マレシア」
大勢の人間が見守る広場の中心、私は心のそこから残念そうに口を開く。
心から、悲しんでいるように見えるように。
「……君は私にとって、よき伴侶だった。いや、そうなると思っていた。けれど、いくら君でもこんな重罪を働いたならば、僕はかばうことはできない」
そういって、私は堪えきれなくなった様に顔を手で隠し告げた。
「ここに第一王子、カイザードが宣言する、──公爵令嬢マレシアから、聖女の座を剥奪する」
その言葉を継げた瞬間、少なくないざわめきが広場を覆い、私は耐えきれなくなった様に顔をうつむかせる。
……そして、私は堪えきれなかった笑みを浮かべた。
「本当に惨めだなぁ、マレシア」
だれにも聞こえないよう小さくつぶやいた言葉。
それがさらに私の顔に浮かぶ笑みを深くする。
だれにも見られてはいけない。
そう思うほどに、私は声をあげて笑いたくなる衝動におそわれることになる。
それも仕方のないことだろう。
何せ、私はこれが茶番でしかないことを、彼女が偽物であったことを最初から知っていたのだから。
いや、それも正確ではないかもしれない。
──なぜなら、私こそがマレシアに聖女と偽らせた主犯の一人なのだから。
つまり、マレシアとは本当に被害者でしかなかった。
いや、聖女として選ばれていないにも関わらず聖女の仕事をやりきっていたことを考えれば、救世主といってもいい人間だ。
そんな彼女にまんまと罪を着せられたことに、私は笑いを隠せない。
とはいえ、マレシアに罪を着せるのは、私の忍びなさがないわけではなかった。
実際のところ、私はこのままでいいかもしれないとさえ思っていたのだから。
そう、致命的な事態が起こる前までは。
そこで顔をあげた私は、先ほどとは違って喜色を顔に浮かべ宣言する。
「マレシアを断罪する上で、ここに一つ祝うべき出来事がおきたこともいっておかねばならない。ここに、彼女を」
私がそう宣言すると、一人の着飾った女性が現れる。
緊張にその顔をがちがちに強ばらせ、それでも輝かんばかりの美しさを放つ女性を。
彼女の手をとり、私は甘くほほえんでみせる。
そして宣言してみせる。
「彼女こそ私の婚約者にして──真の聖女、カシュアだ」
二人目の聖女などと呼ばれていたカシュアの存在は、前から話題に成っていた。
この場にて私が宣言したことで、カシュアが本物だと全ての人間が理解する。
瞬間、広場を歓声が覆い、一気に熱狂的な空気があふれ出す。
その歓声に答えるよう笑みを浮かべながらも……内心、私は苦々しく顔をゆがめていた。
そう、想像していない事態こそ、この真の聖女が現れたことだった。
聖獣と契約し、この国を豊かに保つの聖女に対して、この国の人間は心酔していると言っていい。
それ故に、絶対に私が偽聖女の元凶だとばれる訳にはいかないのだ。
だから、私は全てをマレシアの罪とするために口を開く。
「そして、真の聖女であるカシュアがいる以上、マレシアが聖女であることはあり得ない。……なあ、マレシア。どうして自身を聖女と偽った?」
大勢の人間が見守る広場の中心、私は心のそこから残念そうに口を開く。
心から、悲しんでいるように見えるように。
「……君は私にとって、よき伴侶だった。いや、そうなると思っていた。けれど、いくら君でもこんな重罪を働いたならば、僕はかばうことはできない」
そういって、私は堪えきれなくなった様に顔を手で隠し告げた。
「ここに第一王子、カイザードが宣言する、──公爵令嬢マレシアから、聖女の座を剥奪する」
その言葉を継げた瞬間、少なくないざわめきが広場を覆い、私は耐えきれなくなった様に顔をうつむかせる。
……そして、私は堪えきれなかった笑みを浮かべた。
「本当に惨めだなぁ、マレシア」
だれにも聞こえないよう小さくつぶやいた言葉。
それがさらに私の顔に浮かぶ笑みを深くする。
だれにも見られてはいけない。
そう思うほどに、私は声をあげて笑いたくなる衝動におそわれることになる。
それも仕方のないことだろう。
何せ、私はこれが茶番でしかないことを、彼女が偽物であったことを最初から知っていたのだから。
いや、それも正確ではないかもしれない。
──なぜなら、私こそがマレシアに聖女と偽らせた主犯の一人なのだから。
つまり、マレシアとは本当に被害者でしかなかった。
いや、聖女として選ばれていないにも関わらず聖女の仕事をやりきっていたことを考えれば、救世主といってもいい人間だ。
そんな彼女にまんまと罪を着せられたことに、私は笑いを隠せない。
とはいえ、マレシアに罪を着せるのは、私の忍びなさがないわけではなかった。
実際のところ、私はこのままでいいかもしれないとさえ思っていたのだから。
そう、致命的な事態が起こる前までは。
そこで顔をあげた私は、先ほどとは違って喜色を顔に浮かべ宣言する。
「マレシアを断罪する上で、ここに一つ祝うべき出来事がおきたこともいっておかねばならない。ここに、彼女を」
私がそう宣言すると、一人の着飾った女性が現れる。
緊張にその顔をがちがちに強ばらせ、それでも輝かんばかりの美しさを放つ女性を。
彼女の手をとり、私は甘くほほえんでみせる。
そして宣言してみせる。
「彼女こそ私の婚約者にして──真の聖女、カシュアだ」
二人目の聖女などと呼ばれていたカシュアの存在は、前から話題に成っていた。
この場にて私が宣言したことで、カシュアが本物だと全ての人間が理解する。
瞬間、広場を歓声が覆い、一気に熱狂的な空気があふれ出す。
その歓声に答えるよう笑みを浮かべながらも……内心、私は苦々しく顔をゆがめていた。
そう、想像していない事態こそ、この真の聖女が現れたことだった。
聖獣と契約し、この国を豊かに保つの聖女に対して、この国の人間は心酔していると言っていい。
それ故に、絶対に私が偽聖女の元凶だとばれる訳にはいかないのだ。
だから、私は全てをマレシアの罪とするために口を開く。
「そして、真の聖女であるカシュアがいる以上、マレシアが聖女であることはあり得ない。……なあ、マレシア。どうして自身を聖女と偽った?」
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