7 / 55
第一章
第6話 本当に言いたかったこと
しおりを挟む
「本当におにいは、私がいないと駄目ね」
……そうアズリアが口を開いたのは、そんなことを僕が考えていた時だった。
その言葉に、僕は自分の胸が痛むのを感じる。
しかし、何とかその気持ちを抑えて僕は笑って口を開く。
「うん。本当にいつも治癒してもらって助かってる」
「ふ、ふん。本当はすごく面倒何だけどね! 時間も消えるし、夜も遅いし? まあでも、私は優しいから。こ、これからも特別に見てあげるわよ!」
そういいながらも、なぜかどこか嬉しそうなアズリアの姿に僕は少し首を傾げる。
……とはいえ、今の状態では僕がアズリアに頼りきりであるのは事実立った。
ここまで付き合わせたことに申し訳なさを覚えながら、僕は口を開く。
「本当にいつもごめん。で、でも、最近ようやく僕も自分である程度の傷なら処置できるよう……。え、アズリア?」
僕がアズリアの冷ややかな目に気づいたのは、そう話している途中のことだった。
いつになく冷ややかに僕をみるアズリアは、さっと顔を逸らして吐き捨てる。
「……そんなんだから、身長伸びないのよ」
「アズリア!?」
ぶすりと僕の一番の弱点をついてきたアズリアに、僕は悲鳴を上げる。
そんな僕にアズリアは悪戯ぽく笑い、次の瞬間立ち上がって僕を見下ろす。
そして、自分の身長と座った僕の高さを比べながら笑った。
「後一年かしら?」
「……言っておくけど、僕も身長伸びてるからね?」
「はっ」
盛大に鼻で笑った後、アズリアは椅子に座り直す。
僕は内心衝撃を受ける。
……いや、さすがに妹に背を抜かれるなんてことあり得るわけない。
「とにかく、申し訳なさそうにするのはやめなさい。私は別にあんたに謝ってほしくて治療してあげてる訳じゃないんだから」
「……え?」
「私は自分がやりたいと思ってるからあんたに協力しているだけなんだから。役に立ってるなら、ごめんじゃなくてありがとうって言ってくれないかしら」
俺からわずかに顔を逸らしてアズリアが告げた言葉、それに俺は呆然と目をみほる。
暗くてその顔色は分からない。
ただ、それでも俺にはアズリアが照れているのを理解することができた。
思わず言葉を失った俺に対し、アズリアは焦ったように自分の前で両手をふる。
「あー、もう! こんなことどうだっていいの!」
「え、アズリア?」
「そもそも私は怒りにきたんじゃなくて他に用があって来たの!」
「……用?」
そう聞き返した俺に、姿勢を直し正面に向き直ってからアズリアは口を開いた。
「あんた、オーガ討伐したんでしょ? ……私くらい、それをほめてあげないとと思って」
……それは僕のまるで想像もしていなかった言葉だった。
「どうして、それを?」
「……二日くらい連絡もなしに姿を消しておいて、よくそんなこと言えるわね」
そうじと目で告げるアズリア。
しかし、その言葉を聞いても僕の中の衝撃がきえることはなかった。
……なぜなら僕は、あの両親なら数日僕がいなくても気づかないことを知っているから。
しかし、呆然とする僕にきづくことなくアズリアは続ける。
「ほんと、私に連絡くらいは入れなさいよね。何の為の治癒スキルだと思ってるんだか。まあでも、Cランクのオーが討伐なんてすごいじゃない!」
にっこりと笑いながら、アズリアは立ち上がる。
「確かに貴族としての能力としては穀潰しかもしれない。でも、私あんたのこと結構……その、まあ悪くないんじゃないかと思ってるわよ?」
アズリアらしい、遠回しなほめ言葉。
しかし、僕はその言葉が染み渡ってくるような感覚を感じずにはいられなかった。
「……まあ、それだけだから。とりあえず私は寝るわね」
そう告げ僕に背中を向けたアズリアに僕は何か言おうとして、けれど言葉が思いつかず黙る。
そんな中、ふと思い出したのは先ほどのアズリアの言葉だった。
「あ、ありがとう。アズリア!」
必死にその言葉を告げると、アズリアの方がぴくりと反応し、動きが止まる。
それからアズリアはゆっくりと振り返った。
「どういたしまして。その……頼りにしてるからね、お兄様」
その言葉を継げると、アズリアはいつもからは考えられない早足で去っていった。
……そうアズリアが口を開いたのは、そんなことを僕が考えていた時だった。
その言葉に、僕は自分の胸が痛むのを感じる。
しかし、何とかその気持ちを抑えて僕は笑って口を開く。
「うん。本当にいつも治癒してもらって助かってる」
「ふ、ふん。本当はすごく面倒何だけどね! 時間も消えるし、夜も遅いし? まあでも、私は優しいから。こ、これからも特別に見てあげるわよ!」
そういいながらも、なぜかどこか嬉しそうなアズリアの姿に僕は少し首を傾げる。
……とはいえ、今の状態では僕がアズリアに頼りきりであるのは事実立った。
ここまで付き合わせたことに申し訳なさを覚えながら、僕は口を開く。
「本当にいつもごめん。で、でも、最近ようやく僕も自分である程度の傷なら処置できるよう……。え、アズリア?」
僕がアズリアの冷ややかな目に気づいたのは、そう話している途中のことだった。
いつになく冷ややかに僕をみるアズリアは、さっと顔を逸らして吐き捨てる。
「……そんなんだから、身長伸びないのよ」
「アズリア!?」
ぶすりと僕の一番の弱点をついてきたアズリアに、僕は悲鳴を上げる。
そんな僕にアズリアは悪戯ぽく笑い、次の瞬間立ち上がって僕を見下ろす。
そして、自分の身長と座った僕の高さを比べながら笑った。
「後一年かしら?」
「……言っておくけど、僕も身長伸びてるからね?」
「はっ」
盛大に鼻で笑った後、アズリアは椅子に座り直す。
僕は内心衝撃を受ける。
……いや、さすがに妹に背を抜かれるなんてことあり得るわけない。
「とにかく、申し訳なさそうにするのはやめなさい。私は別にあんたに謝ってほしくて治療してあげてる訳じゃないんだから」
「……え?」
「私は自分がやりたいと思ってるからあんたに協力しているだけなんだから。役に立ってるなら、ごめんじゃなくてありがとうって言ってくれないかしら」
俺からわずかに顔を逸らしてアズリアが告げた言葉、それに俺は呆然と目をみほる。
暗くてその顔色は分からない。
ただ、それでも俺にはアズリアが照れているのを理解することができた。
思わず言葉を失った俺に対し、アズリアは焦ったように自分の前で両手をふる。
「あー、もう! こんなことどうだっていいの!」
「え、アズリア?」
「そもそも私は怒りにきたんじゃなくて他に用があって来たの!」
「……用?」
そう聞き返した俺に、姿勢を直し正面に向き直ってからアズリアは口を開いた。
「あんた、オーガ討伐したんでしょ? ……私くらい、それをほめてあげないとと思って」
……それは僕のまるで想像もしていなかった言葉だった。
「どうして、それを?」
「……二日くらい連絡もなしに姿を消しておいて、よくそんなこと言えるわね」
そうじと目で告げるアズリア。
しかし、その言葉を聞いても僕の中の衝撃がきえることはなかった。
……なぜなら僕は、あの両親なら数日僕がいなくても気づかないことを知っているから。
しかし、呆然とする僕にきづくことなくアズリアは続ける。
「ほんと、私に連絡くらいは入れなさいよね。何の為の治癒スキルだと思ってるんだか。まあでも、Cランクのオーが討伐なんてすごいじゃない!」
にっこりと笑いながら、アズリアは立ち上がる。
「確かに貴族としての能力としては穀潰しかもしれない。でも、私あんたのこと結構……その、まあ悪くないんじゃないかと思ってるわよ?」
アズリアらしい、遠回しなほめ言葉。
しかし、僕はその言葉が染み渡ってくるような感覚を感じずにはいられなかった。
「……まあ、それだけだから。とりあえず私は寝るわね」
そう告げ僕に背中を向けたアズリアに僕は何か言おうとして、けれど言葉が思いつかず黙る。
そんな中、ふと思い出したのは先ほどのアズリアの言葉だった。
「あ、ありがとう。アズリア!」
必死にその言葉を告げると、アズリアの方がぴくりと反応し、動きが止まる。
それからアズリアはゆっくりと振り返った。
「どういたしまして。その……頼りにしてるからね、お兄様」
その言葉を継げると、アズリアはいつもからは考えられない早足で去っていった。
456
お気に入りに追加
1,075
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる